第71話 Lv100同士
「おらああああああ!!」
死を運ぶ暴風が、俺目掛けて一直線にやってくる。
技術も何もない、単純な暴力の塊。
───見えてる、見えてるけど!!
反応が、間に合わねぇ!!
「うおおおおお!!」
心眼、気配感知、危険感知、反射速度、バランス感覚強化。
今まで手に入れたスキルを総動員して、迫りくる脅威へと対応する。
ただの振り下ろし。
肩に担いだ大剣を、上から下に振り下ろしただけ。
たったそれだけの攻撃を、命懸けで捌く。
必死で剣を抜き、振り下ろされた剣の腹を左から右へと叩く。
ほんの僅かだけ、剣の軌道がズレる。
それのおかげで、俺は今立っている。
───ここまで、力の差があるのかよ。
相手との力の差を痛感していると、張り詰めた殺気が緩む。
「ほぉ、口だけじゃねぇ。動きは鈍いが、反応が異常にいい、のか?低ステータスをスキルで補ってるタイプか。お前みたいな奴は油断ならねぇからなぁ。ただ強いだけの奴よりよっぽどおもしれぇ。」
……なんだ?いずれにしてもチャンスか?
「へぇ〜。そういうお前は、相当な高Lvだよなぁ?俺全然上がらねぇから羨ましいわ。」
「ははは!!そりゃお前、才能の差だな!!俺は経験値1000倍を女神からもらった!!しかも剣術に身体強化はLvマックス!100だ!!リスクゼロで爆速Lvアップ!!正にテンプレチートだ。羨ましいか?お前も、いや、……お前は転移者か?」
「あら、わかる?そうそう、この間この世界に来たばかりだよ、先輩。俺も初めは経験値1000倍って言ったんだけどね。貰えなかったよ。」
「ははは!!それで俺と戦うか!!お前も相当なチートをもらったんだろうが、俺の積み重ねた時間は俺を裏切らねぇ!さぁ、中ボスらしく、そこそこ抗ってから死ねよ。」
自分の言葉が通じるのが心底嬉しいのか。
楽しそうに笑うカイン。
やりにくいったらねぇよ。
「まぁまぁ先輩。もっと、楽しもうよ。」
「俺はLv上げきってから物理で殴るのが好きなんだよ。こっちはダメージ受けずに完封してフルボッコ。俺はRPGは得意なんだ。」
「そりゃ見解の相違だな。俺は低Lvクリアの方が好きなんだよね。」
「はは、そりゃコンテニュー前提の采配だろ?ここはやり直し無しの現実だぜ?」
「あ〜、それなら確かにそうするなぁ。先輩さすがっすね。」
「そうだろぉ!?お前もそう思うよな!!………はぁ、お前が邪神側じゃなければ、友達になれたのによぉ。ダメだなこれ以上は情が湧いちまう。じゃあ、殺り合おうや。」
カインの雰囲気が変わる。
さっきまでの、半ば緩んだ空気はどこかへ消し飛んだ。
先程よりも濃くなった殺気と威圧。
まだ、底じゃねえのかよ。
「ほれ、行くぞ。」
───くる!!
初手は、さっきと同じ振り下ろし。
今度は躱す!!
上から下へと振り下ろされる剣と距離を取りつつ、抜き胴の要領で脇腹を斬りつける──
「しゃらくせえ!!」
そのはずだったが、直前に大剣はその軌道を縦から横へと変えて、俺の体を打ち据えようと迫る。
「クソがよ!!」
脇腹への斬撃を中止して、体を回転させながら大剣をいなす。
一撃でも食らえば、Lv差からして戦闘不能だろう。
全部躱し切る!!
「へへ、面白え奴だ。じゃあこれはどうだぁ!?」
両手をムチのようにしならせながら斬りつけてくるカイン。
不規則な剣の動きに惑わされそうになるが、
─────ここだ!!
心眼で捉えた一瞬の隙を逃さず、相手の小手へ一撃を見舞う。
体重の乗っていない軽い一撃だったが、それなりに痛いだろ。
「いってぇ……。てめぇ、その動きはなんだ?俺の知らねえスキルを持ってるな?そういうチートか?」
「バカ言うなよ、これは俺が実力で取った、俺のスキルだよ。お前と一緒にすんな。」
「………ま、バカ正直に言う奴はいねえわな。だけどな……、ヒール。今の一撃なんて、無いのと同じだぜ?」
当たり前のように、自身のケガを回復させてしまう。
「回復魔法も使えんのかよ。ズルいだろ。」
「それがチートだろ?お前も持ってるカードを駆使して戦えよ。………まだ隠してんだろ?」
「あいにくと、まともなチートがもらえなかったんでね。もう出尽くしてるよ!」
「じゃあ革命でも起こすんだな!!」
「もうやってるよ!!」
今度はこっちからだ。
剣のリーチは相手の方が上なら、奴の懐に潜り込む!!
奴に向かって一直線に突っ込み、雑な一撃を誘発させる。
俺がバカみたいに突撃するのを見て、嬉しそうに剣を横薙ぎにしてくるカイン。
その動きにフェイントは無く、故にわかりやすい。
やっぱり、戦う事に慣れてない。
いや、これで十分だったんだろう。
圧倒的なステータスで、殴る。
敵は死ぬ、以上。
カインにとってはそれだけの話だったのだろう。
だけど、それじゃあ、俺には届かねえよ!!
雑に振られた横振りの剣をリーチギリギリで止まり、躱す。
自分の腹の数cm前を剣が横切り、嫌な汗が背中を伝う。
俺の回避に慌てて剣を切り返し、もう一度横薙ぎを放つカイン。
だが、急いで撃たれたその攻撃には先程の鋭さはない。
今度は一気に奴の懐まで入り込み、剣の柄を奴の両手ごと斬る。
「あがっ!?」
柄ごと真っ二つだ。
もう剣は握れねぇだろ!!




