第70話 中ボス戦スタート
「それで、これってどれくらいで帝都に着くの?」
「アキーラ、もう少し緊張感を保てないんですの?………ざっと1週間ほどと思いますわ。この馬車、割と早いですのよ。」
コンコン、と自分の座る座席をセンスで叩くエリー。
まぁ、皇族の命令だ。
話を聞く限り不敬を買えば命は無さそうだし、提供できる最大限を用意したんだろうな。
かわいそーに。
………しかし、1週間か。
帝都に入ったら、いよいよ皇帝との対決だよな?
何かスキルとか上げといた方がいいのでは?
ここで出来ることってたかが知れてるけど、なんかないか?
「なぁなぁエリー。」
「なぁに?お腹でも空いたんですの?お昼食べたばかりですし、我慢してほしいですわ。」
「お前俺のことバカにしてない?してるよな?」
「おほほ、そんなことありませんわよ。」
「おお?」
なにわろてんねん。
いや、違う違う。
俺には珍しく大事な話なのだ。
「いや、そーじゃなくて。ちょっとここでスキル上げれるのあれば上げときたいんだけど、いい?」
「………別に構いませんけど、今更低Lvのスキルを増やしたところで、どうしようもないのではありませんの?」
それもそう。
今更感はあるよなぁ。
うーん。
とりあえず剣術Lv100の確認をしとくか。
上げきってからゾフィーと戦っただけで、細かいところまで見れてないしな。
あ、そーれ、残心残心っと。
………
………………
………………………
何も考えずに残心していたら、あっという間に1週間経った。
やはり残心さんは偉大だったな。
「アキーラ、あなたずっと素振りしてて良く飽きませんわね………。話しかけても無視するのはちょっと傷付きますわ。」
「あ、マジで?ごめんごめん。残心さんとの語らいに集中しちゃった。」
「残心、さん?気になりますけど、聞いてはいけない気がしますわね……。」
エリーが呆れた声で言うが、俺は気にしない。
剣術Lv100となると、中々に振り心地が違うぜ。
残心さんも心なしか嬉しそうだった。
今後もちょっとずつ振ってやろう。
「アキーラ?降りますわよ?アキーラ?ちょっと、ねぇ!アキーラ!!」
ごめんごめん。
「さて、ついに帝都に着きましたわよ。」
「お、おおおおおお…………。」
今まで見てきた中でも随一の発達具合。
街を囲む城壁は、10mはあるだろうか?
その果ては見えず、どこまでも続いているように見える。
街の中の活気も、異様に熱気がある。
欲深いが故に傲慢なのか、傲慢であるからこそ欲深いのか。
ありとあらゆる物が揃っていると言われても不思議ではない。
そう錯覚してしまうくらいに、激しく出入りしている馬車と荷物。
帝都はまさに、欲望のるつぼといった様相を醸していた。
「すっげー………。」
「帝都は素晴らしいでしょう?ここまで規模の大きい街は、大陸中探してもありませんわ。」
いや、そりゃ東京とかに比べればショボいけど。
人がここまでいるのを見たのは初めてだ。
道路の幅は10mほどか?
その道の真ん中を馬車が通り、左右を行き交う人たちは道路沿いに建てられたお店を覗いている。
この光景はいろんな街で見てきた。
ある意味ありふれた光景。
ただ、その規模が桁違いだった。
エリーの言うとおり、大陸随一の街なのだろう。
俺はこの街の景色を、忘れないだろう。
同じ転生者、皇帝カインの作り上げた、この帝都の景色を。
………
………………
………………………
「アキーラ、準備はいいかしら?」
「おう、下手に引っ張っても、いい事なんか何も無いだろ。」
「どうなのでしょうね。私たちが帝都に入った時点で父は気付いてると思いますわよ?」
「………そうなん?」
「私は身分を隠していませんし、あなたの事も正体まではバレていなくても警戒はされていると思いますわ。」
「ほほぉ?警戒されてるならダメじゃない?」
「警戒してると言っても、あなたと私の2人なら、何かあっても父が止めると思いますわ。父本人も、周りの家来もね。」
「なるほど、舐めてるわけね。自分以外の全部を。」
「正当な評価ですわよ、Lv100ですもの。人類未踏のね。」
「まぁ、ここにもいるけどね。Lv100。」
「期待してますわ。あなたがダメなら、多分誰も止められませんし。」
「責任は十分に理解しておりますよ、お姫様。」
「なら、よろしく頼みますわ。………行きましょうか。」
「おう。」
第七皇女殿下の帰城後、エリーの謁見希望はすぐに認められた。
本当に、帰城から30分もしない間の出来事だった。
………どう考えても、予め準備されてたよな。
すっげー嫌な予感。
そう思ったところで、今更俺の意思で止められるはずもない。
あれよあれよと言う間に、俺たちは謁見室の前に連れてこられた。
「第七皇女殿下、入られます!!」
門番の大声に合わせて、扉が開かれる。
扉の向こうには、大剣を肩に担ぎ、こちらを笑いながら睨みつける、金髪碧眼の男が立っていた。
「………お久しぶりでございます、皇帝陛下。」
「エリザベート。家出をしたと思ったら、突然謁見とは、相変わらず騒がしい奴だ。」
「……お戯れを。私の事など、把握されていたでしょう?」
「ははは、それは誤解だな。俺はお前には蚊ほどの興味もない。」
「左様でございますか。………陛下、私から陛下へプレゼントがございますの。きっと陛下の退屈を紛らわせる事が出来ると思いますわ。」
エリーの、挑発とも取れる言葉を受けて、嬉しそうに俺を見る皇帝カイン。
「ほぉ、その男か?面白い。」
カインの手に、力が入る。
俺の左手が、腰に差した剣の鞘を押さえる。
一触即発、誰が見てもハッキリとわかる。
空気が変わった。
「く、くはは!!久しぶりの挑戦者だ!!簡単に終わってくれるなよ!!」
カインの全身を圧倒的なオーラが包む。
はは、周りの従者が逃げてやがる。
こっちも下がらせないと危ないな。
「エリー、下がってろ。」
「アキーラ、……お願い。」
エリーがこちらを気にしながらも、謁見室から出ていく。
「………もういいか?」
「待ってくれてたんだな。意外と紳士的だ。」
「んん?お前………。まぁいいか。じゃあ、行くぞ?これくらいは捌けよ?」
「はっ、こっちのセリフだわ。俺の剣捌きに恐れおののけ。」
「いいねぇ、楽しみだ。中ボス戦の、始まりだな!!」




