第69話 不服な服従、重々承知。
「アキーラ、今の父、皇帝カインは狂ってしまっていますわ。この国は、傲慢と言われてはいますけど、父も初めから他国へと侵略行為をしていた訳ではありませんの。」
姫さん改めエリーが、言葉を続ける。
「ホッホムート帝国は、代々の皇帝が傲慢である事で知られていました。子どもの頃の父は、その事を強く憂い、帝国を真っ当な国にしてみせると、周囲に息巻いていたらしいですわ。」
そんなやつがこんなことする?
なんか理由がないとやらないだろ。
「そんな父に、周囲は大いに期待しましたの。……ですが、戴冠してしばらく、そこには帝国の皇帝としてふさわしい父がいたそうですわ。アキーラ、この意味わかりますか?」
「ホッホムート帝国は、呪われてんの?」
皇帝になった時点で詰んでない?
「そう言う学者もいましたわね。今はもうみんないませんけど。」
「ええ、それって……。」
「これですわね。」
そう言いながら、自分の手で首を掻き切る仕草をするエリー。
処刑かよ。
帝国してるなぁ。
「でもさぁ、その理屈ならカインを倒しても一緒じゃね?次の皇帝がまた狂っちまうんだろ?」
「その可能性は高いですわね。一応方法は考えてありますけど……。」
方法ねぇ。
ほうほう、どんな方法だい?
と聞きたいところだけど、あんま余計な事は言わんとこ。
「………その方法ですけど。」
「言うなよ。聞きたくない!」
「なんでですの!?聞きなさいな!!」
「やだぁ!!他人でいたいのぉ!!」
「ちょっと相談させてくださいまし!聞くだけ!聞くだけだから!!」
「絶対感想求めるじゃん!俺はそういうのわかんないの!!ゾフィーに聞け!!」
「今いないんだからアキーラが聞きなさいな!!私が考えているのは、皇帝1人に統治させるのではなくて───」
「あああああああ!!あああああああ!!」
何も聞こえねぇ!聞かねぇ!
………
………………
………………………
「はぁ、はぁ、はぁ、あ、あなた、頭おかしいんじゃありませんこと!?」
「ああああああ!!!……あ?終わった?」
肩で息しながらこっちをジト目で見るエリー。
もう終わったな?いいな?
「もう、いいですわよ。とりあえず、皇帝のことはお願いしますわ。なんとか止めてくださいな。」
「ん?おう、任せとけ。できるか知らんけど。」
とりあえず相手のチート、剣術と身体強化だよなぁ。
両方高レベルだよな。
あ、知ってるか聞いてみよ。
「エリーさんエリーさん。」
「………なんですのその言い方。」
「カインのスキルって剣術と身体強化だよな?何レベ?」
「両方100。」
「へ?」
「両方100ですわ。」
「両方?」
「ええ。両方100です。」
「剣術と身体強化?」
「そうですわね。」
「無理じゃない?」
「…………普通は、無理ですわ。」
ふ、つ、う、は?
「普通は、じゃないじゃん!!化物やんけ!!勝てるかあ!!」
「ワンチャンあると思いません!?アキーラならできますわよ!!」
「根拠のない自信は自惚れだぞお!!」
「それでもアキーラなら!アキーラならなんとかしてくれますわ!!」
「おれのはなしをきけええええ!!」
「そっくりそのままお返ししますわああああ!!」
両方100って、俺と同Lvだぞ!?
それで本体も高レベルだろ!?死ぬやんけ!!
………
………………
………………………
「もう!いい加減にしてくださいまし!!ほら、街が見えてきましたわよ!!」
「あ、ほんとだ。」
そういえば、街に向かって歩いてたんだった。
白熱した議論のせいですっかり忘れてたや。
「さ、ここからは馬車ですわよ。一気に帝都まで向かいますわ。準備はよろしくて?」
「おう、もう四の五の言ってもしょーがねぇしな。やるだけやってダメならしゃーねぇだろ。」
俺も剣術は100だし。
身体強化もそろそろ100になるはず。
この2つが100になれば、何もできずにやられるなんてことにはならんだろう。
フレイヤもそうだけど、ゾフィーやフレイが協力してる反乱軍だって、いつまでも持ち堪えられる訳がない。
この作戦は俺が皇帝に勝つことを前提にしたもんだもんな。
「それでは街に入りますわよ。貴方は私の従者として振る舞ってくださいまし。」
「お、りょーかい。」
「かしこまりました、ね。」
「………かしこまりました。」
不服ぅ!!
下克上を検討しますぅ!!
………
………………
………………………
「よーし、止まれ。……お前たち、旅人か?男女2人で、歩きとは珍しい。」
「控えおろぉ!!この方をどなたと心得るぅ!!」
「やめなさい!!……私よ。道を開けなさい。」
「………っ!エ、エリザベート皇女殿下!!た、大変失礼いたしましたぁ!!」
「騒がなくていいから、早く通してくれるかしら?」
「は、ははぁ!!どうぞ、お通りください!!」
ほぇ〜。
すっごい。
これが皇女殿下……。
「何してるんですの?早く行きますわよ。馬車の手配を急がないといけませんわ。」
「ははぁ!!馬車の手配を急がないといけません!!」
「………アキーラ、敬語が苦手なのはわかりましたわ。誰もいなければ気にしなくてもいいですのよ?」
「お?マジ?助かるわー。んじゃ馬車探しにいこーぜー。」
「本当に遠慮しませんのね。色々と複雑ですわ。」
「へいへい、帝都までいくんだろー。置いてくぞー!」
「あなた……、置いてくんじゃありませんわよぉー!!」




