第66話 普通に嫌だよ。
「エリー!!無事だったか!!……よかった。会えて嬉しいよ。」
「アンジー、心配かけてごめんね?私もあなたに会えて嬉しい。」
今俺たちは、辺境伯の謁見場でこれ以上ないくらいにモブになっている。
多分感動のシーンなんだよなあ。
えーっと。アンジェリカ・グレンツ辺境伯?と皇女殿下の感動の再会だもんなぁ。
知らん人同士の再会とか、感慨深くもなんともないわぁ……。
とりあえず壁に寄っとこう。
俺はモブ、俺は背景……。
あ、気配遮断も使うか。さよーならー。
「それでね、アンジー。道中で、頼りになる仲間も見つけたのよ!紹介するわ!」
「ああ、Sランク冒険者の氷の女王、ゾフィーリアと、…そちらは神国の聖女様かな?あとの一人は……どこに行った?」
そう言って頭にハテナを浮かべながらキョロキョロする辺境伯。
あ、やべ。遊び過ぎたな…、気配遮断切らなきゃ。
「ん?……アキーラ!そんなところで何やってるんですの!早くこっちにいらっしゃいな!」
あー、姫さんにも呼ばれちまったよ。
今行きまぁす!
「ほいほい、ご紹介にさずかり、あずかり?ました。アキーラです。よろしく。」
「ああ、私はアンジェリカ・グレンツだ。好きなように呼んでくれ。帝国からは辺境伯という地位を賜っているよ。」
長いからアンジーでいっか、覚えやすいしな。
「エリーとは子どもの頃からの腐れ縁でね、今では運命共同体だ。……君も手伝ってくれるのかな?」
「皇帝の件なら、そのつもりだ。」
「ふふ、それは心強い。」
……なんか、食えねーやつだな。
警戒してること、隠すつもりもねぇ。
「まぁ、アンジーさんの気持ちはわかってるつもりだよ。ここで暴れるつもりもないし、意味もないから。俺はね。」
そっちがその気なら、引く気もないけど。
「っ!!……面白いね。冗談じゃなさそうだ。相当な自信家と見える。」
「グレンツ辺境伯、彼は私と並ぶ実力者です。見誤りませんよう。」
「ゾフィーリア殿並みだと?この男が…。」
「そうですね。それにここに来ることを決めたのはアキ様です。私達は従っているだけですので。」
「聖女殿まで……、この男にそこまで?」
あ、俺に興味が出たのか、目の色が変わったな。
さっきの警戒マックスよりはマシだけど…居心地は悪いなぁ。
「君の実力については是非確かめたいところだが…、おい!騎士団長はいるか!!」
アンジーが大声で側付きの秘書さん?に尋ねる。
「は、はい。この時間であれば、訓練場で指導をしているかと。」
「それは好都合だな。よし、それではアキーラとやら、訓練場で、騎士団長と模擬戦をしよう。君の力を見せてくれたまえ。」
「え?嫌だけど。」
「は?」
「え?嫌です。」
「はぁ?」
何呆けてんの。受けるの当然と思ってない?
普通に嫌だよ。
「アキーラ君、アキーラ君。やっちゃいなよ。この人たち、君のことかなり見くびってるし。私もちょっとイラついてるんだ。」
「そうですよぉ。アキ様舐められっぱなしですよ!このままじゃ女神様に顔向けできません!」
そうやって煽ってくるゾフィーとフレイ。
いやぁ、フレイヤは爆笑してると思うよ?
でもまぁ、2人がそこまで言うなら。
「うむむ、まさか、断られるとは…。アキーラはプライドとか無いのかな?」
「おうおう!やってやろうじゃねーか!」
「……君は中々に不安定だね。まぁいい。それじゃあ訓練場へ行こうか。」
「そ、それではこちらへ。訓練場までご案内します。」
秘書さんの声に従い、俺たちは移動を開始した。
皇女殿下と辺境伯を残して。
「ちょっとアンジー、本気なの?」
「ああ、私はそこまで楽観視していないよ。少なくとも騎士団長を簡単にのしてくれるくらいじゃないと。」
「だけど、ゾフィーリア殿が…。」
「悪いが彼女の言葉は信ずるに値しないよ。どう見てもあの男に惚れている。」
「…そうなの?」
「見てて気付かなかったかい?あの男を見る時だけ、目が違う。それに…。」
「それに?」
「私があの男をバカにしたとき、一番殺気立っていた。」
「……ホントなの?」
「そうさ。ほら。まだ震えてる。」
「これはもしかしたら、とんでもない拾い物かもね。」
そう呟いた辺境伯の言葉に、
皇女はただ、頷くのみだった。




