第64話 不敬、契約、厄難
「あいたたた……、ひどい目に遭いましたわぁ。」
縦ロールを捕獲していた衛兵を倒したあと、ようやく自由になった縦ロール。
「ほんで、なーんであんなことになってんの?つーか褒美ちょうだい。」
「ぐぬっ……、そ、そうですわねぇ……、あっ!私の家来にしてあげますわ!あなたのような庶民には大変光栄なことでしてよぉ!!」
「は?いやいや、そんなんいらないよ?お金がいい。」
「ほほほ!ご安心なさい!お金なんてどうでも良くなるほどに名誉なことですわ!あなたもすぐに理解できますわよぉ!!」
「聞けよ!お金!おーかーね!!」
なんなんだこの縦ロール!悪ロールめ!
「お金!お金!」
「名誉!名誉!」
「アキーラ君、なにやってるの?」
「ゾフィー!!こいつ!金払わない悪ロールなんだ!!」
「ですから!家来に取り立ててあげると言っているでしょう!!」
「………っ!!アキーラ君、頭下げて。」
「はぁ?悪ロールにぃ!?」
「いいから!……ご機嫌麗しゅう、エリザベート第七皇女殿下。」
「……あら、私のことを知っている者がいましたの。よしなに。」
またちがうげーむはじまったん?
「アキ様ぁ!やっと追いついた…、っ!第七皇女殿下…、お久しぶりですね。」
「あらあら、神国の聖女。お久しぶりね。……Sランクの氷の女王に、神国の聖女……。あなた何者ですの?」
「ゾフィー、悪ロール……。」
「アキーラ君!」
「フレイ…、あいつ悪ロールなんだよ?」
「アキ様、いけません。」
「あなた、本当に私のこと知らないんですのね。これでも結構有名人なんですけど、自信なくなってきましたわ…。」
悪ロールはいつの間にか取り出した扇子を広げ、ヨヨヨと嘆いていた。
泣きたいのはこっちだよ!バーカ!!
「ふむ……。殿下、何やら訳ありのようですが、ひとまず我々の泊まっている宿に行きますか?必要であれば人払いも致しますが。」
「あら、気が利くわね。よろしく頼むわ。」
「はっ。……行こうか、アキーラ君。」
「ゾフィーが遠くに行っちゃった。」
「ふふ、大丈夫だよ、アキーラ君。さっ、行こう。」
こうして俺達は、悪ロール……エリザベート第七皇女殿下を連れ部屋へと戻っていった。
………
……………
…………………
宿屋の部屋に戻り、フレイが結界を張る。
これで防音は完璧だ。
「さて、これなら話は漏れないわね。ゾフィーリア、あなたに指名依頼をいたします。受けなさい。」
エリザベートは間髪入れず本題に入る。
が、情報が足りないな。
「………詳細を聞いても?」
「なりません。まず、受けることを約束なさい。でなければ何も伝えられませんわ。」
心眼が彼女の焦燥を伝えてくる。
なんだ?何を焦ってる?
「殿下、我々冒険者は、依頼の内容を知らずに受けることは致しません。せめて、概要だけでも。」
「………ふぅ、しょうがないですわね。この国の皇帝の暗殺。それが私の依頼ですわ。」
「…………、それは。」
扇子を持つ手に力が入る。
無意識か?
「なぁ、ゾフィー。あいつと俺ら、目的同じだ、協力しないか?」
「アキーラ君、ちょっと黙ろう?」
「あなたも同じ?この国の皇帝を?なぜ?」
「俺らにも色々あってね。」
「あなた…、私を理解してそれは、興味が湧いてきましてよ?」
「ぷるぷるビビってんのに?」
「ふふ、面白いわね。それじゃあ、依頼は受けてくれるかしら?」
「ま、報酬しだいだな!」
「アキーラ君!!取り消して!」
「もう遅いわ。報酬ね。いいわ。達成の暁には、私の権限で許す範囲のすべてを叶えましょう。」
「お、おう?」
「アキ様…、皇族の依頼です。もう、断れませんよ。」
「ふふふ、仲間が出来て嬉しいですわ。これからもよろしくね?」
あれぇ?やっちゃった?
「………ふぅ。殿下、腹を割りましょうか。具体的にはどうやって成されるつもりか?」
「ゾフィーリア、その言葉遣いはやめなさい。これから私は市井に紛れる。その時が来るまでね。それに馴染まない扱いは不利益だわ。」
「……かしこまりました、それでは。この先どうするのかな?」
「それでいいわ。……まずはグレンツ辺境伯に会いに行きましょう。私の依頼と言えば伝わるわ。」
「ほう、グレンツ辺境伯…かの女傑もそちら側でしたか。」
「そういうこと。それじゃあ、私はこれから聖女のお付き。よろしくね?」




