第62話 罠の上で踊るのさ
「あああああ!!アキ様!何やってるんですか!!ゾフィー様と抱き合ってないで!早く治療しないと!!」
そう言いながら、ぽてぽてとフレイがこちらに走ってくる。
……確かに、全身ヤケドでチョー痛い。
もうちょい続けてたら、俺が負けてたな。
「…大丈夫だよ、アキーラ君。あれが、私の全力。だから、引き分けだね!」
「そうなん?」
「そうだよー!私もあれするの、すっごく疲れるからね。今日はもう何もしたくなーい。」
そう言いながらダラーンとこちらにもたれかかってくる。
いや、支えるけども。
いつも以上に甘えん坊だな。
割と俺も限界なんだけど。
あ、足プルプルしてきた。
「はいはい!ゾフィー様!怪我をしてないなら一旦離れてくださーい!……はい。アキ様治療しましょーねー。ぬぎぬぎ。」
「待て待て待て待て!なんでスムーズに脱がしてくるんだよ!」
「ダーメーでーすー!全身ヤケドしてるのに何言ってるんですか!服と皮膚が引っ付いちゃうと後が大変なんです!脱いでください!」
え、そうなん?こわ。
早く脱ごう。
ぬぎぬぎ。
「はい!確認しまーす!ふむふむ、ほうほう、うわぁ、えっぐう…。」
「早く治してくんない!?」
「はいはい。わかりましたよー。……ほいっ!」
フレイの手が輝き、体から痛みが抜けていく。
ふぅ、痛かったぁ。
「さっ!治りましたよ!それじゃあ帝国に行きましょう!!」
「へ?」
「帝国に行きましょう!」
「いやいや、今日はさすがに──」
「帝国に、行きましょう?」
「ハイ。」
「ではしゅっぱーつ!!」
「じゅんびはできてるのかい?アキーラ君も私もなにもしてないよー?」
まだトロンとしてるゾフィーが、最後の抵抗とばかりにフレイに問いかける。
「大丈夫です!教会騎士様たちが準備に奔走しています!もうすぐ終わるはずなので!!」
おう、八方塞がりやーん。
「とりあえず国内については馬車で移動できますので、その間にしっかり休んじゃってくださいね!」
あ、意外とマトモだったわ。
疑ってごめんねフレイ。
「じゃー、出発するかぁ。って、おーい、ゾフィー?」
もたれかかっているゾフィーに話しかけるが返事がない。
「ぐーぐー」
「あらま、寝ちゃってら。もー、しょーがないな。」
ゾフィーを支えながら立ち上がり、そのまま抱っこする。
身体強化って便利だなあ。
「ほい、じゃーどこ行けばいい?案内してくれー。」
「あ、はい!こっちです!どうぞ!………?なんか今ゾフィー様と、目があったような…?」
何ぶつぶつ言ってんの?
「ぐーぐー!ぐーぐー!」
おお?ゾフィーの寝息が激しく…、激しく?
「おい、フレイ。何肩震わしてんだ。」
「っ!!い、いえ?私は何も知りませんよ?」
「それは知ってる人間しか言わないセリフなんだよなぁ。さぁ吐け。何を隠してる!」
「いえいえ!私は、何も隠してないですよ?あ、そういえば、眠りに付いたお姫様は、王子様のキスで目を覚ますんだったかなー?ピューピュー♪」
「ぐー!?ぐーぐー!!」
へ?ああ、そういうことか?
なんかゾフィーが、もぞもぞし始めたし。
2人で俺をハメてるな?
はっはっはっ!
良いだろう。
男は女の罠に気付いた上で踊るのさ。
はい、じゃーゾフィー。
ちゅ──
パァァン!
ものすごいスピードで、ゾフィーの左手が俺の頬を打ち抜いた。
今精霊憑依使ってないよね?
「………ぐ、ぐーぐー」
なんで寝てるゾフィーが、俺にビンタすんの?
「まだ早かったのかもしれませんねぇ。さっ、馬車に向かいましょー!」
ほぇぇ?
りふじんすぎない?




