第61話 試しあい、殺し愛?
「ゾ、ゾフィー?今、なんて?」
聞き間違いの可能性を信じて、俺はゾフィーにそう問いかける。
「今から、私と、戦ってくれないかな。いいよね?この修練場、かなり広いし。周りに被害は出ないよ?」
期待した返事は返ってこない。
ゾフィーの目、マジだな……。
「本気なんだな?遊びじゃなく。」
「うん。アキーラ君も自分の力、試したいでしょ?私は強いよ?」
そりゃそうだろうよ。
パーティー組まずにSランクまで行くやつが、弱いわけがない。
……でも、
「へへ、ちょっとだけ、楽しみかも?」
「っ!いいね!いい!始めよう!今から!」
眩しい笑顔だ。
我慢しきれないといった様子で、ゾフィーが足を踏み出す。
あ、フレイが猛ダッシュで逃げ出した。
正解だな。
……来る!
興奮したゾフィーに呼応するかのように、周囲の温度があがる。
これは知ってる。
一緒に旅してるときにもやってた、爆発魔法だな。
俺は落ち着いて剣を抜く。
昔は一瞬に感じていた爆発も、今なら余裕をもって対処できる。
自分の目の前に集まる魔力、その中心を、斬る。
抜刀からそのまま剣を振り上げ、下ろす。
スパァ!
サァァァ……
意思を失った魔力が、辺りに散っていく。
うん、やっぱり出来るな。魔力斬り。
「避けるでもなく、耐えるでもなく、かき消すか……。すごいね!アキーラ君!!」
「ご期待に応えられましたかね?お嬢様。」
「ふふふふふ!うん!次はこれね!」
うれしそうなゾフィーから繰り出されるのは、殺意マシマシな魔術の数々。
俺が対処できない筈がないと言わんばかりだな。
じゃあその信頼に応えないとね!!
まずは水の塊だな、
スピードはそこそこだが、質量がえげつない。
考えなしに触れれば体がふっ飛ばされるだろう。
ま、そんなときはこうだ。
向かってくる水球に剣の腹を添えて、そっと受け流す。
無理に斬らなくても、これで十分。
コントロールを失った水球は、俺の後方で地面を砕いた後に力を失う。
お次は、槍のように尖った石の塊。
斬るのは簡単だが、意趣返しだ。
石の槍の尖端を左手で掴み、そのまま180°ターンして手を離す。
「返品しまーす!」
「うふふ!お断りだよ!」
ゾフィーは当然のようにもう一つ石の槍を出し、相殺させた。
さて、次だ…ん?
今度は何も感じない。
不可視の攻撃か、多分風かな?
そう思った瞬間、四方八方から襲いくる風の刃を心眼が捉える。
不可視の多段って、俺対策ばっちりだな。
ま、斬り落とすけど。
反射と心眼を全開にして、剣を振る。
近い方から順番に、体を動かしながら、
風の刃の間を縫うように動きながら丁寧に切り落としていく。
何回振ったか見えたかな?
…ん?どうしたゾフィー?
ポケーっとした顔したゾフィーを見る。
「………ほんとに、強くなったんだね。じゃあ次だよ、ホントの本気。受け止めてね?」
そう言ったゾフィーの横に……、あれは、サラマンダー?
以前一度だけ見せてくれた炎の精霊、のはず…。
「それをどうするって……っ!!」
その瞬間だった。
ゾフィーとサラマンダーが一つに重なったかと思うと、俺の視界から消えた。
そして、心眼に突如現れる、圧倒的な存在感!!
──ガキィィィィン!!
「なんだあ!!?……ゾフィー、なのか?」
「そうだよ、アキーラ君。これが私の本気。精霊憑依だ。」
薄青色の髪色が面影もないほどに真っ赤に燃え盛っている。
透き通るような白い肌も炎の熱か興奮か、紅く染まる。
両手両足に炎を纏った、正に炎の化身だ。
その体から、圧倒的な存在感と熱を発しながら、平然と笑っている。
さっきまでのゾフィーとは比べ物にならない圧。
これがゾフィーの本気か。
肌が焼けるように熱い。
息を吸うことすらおっかない。
全身がチリチリ痛いな…。
こりゃー長くは保たない。
「この姿を見て、生きてる人っていないんだ。アキーラ君、私の初めてになってくれる?」
「へっ、男冥利に尽きるね。来いよゾフィー、抱きしめてやる。」
「えへへ、照れるね。それじゃあ、受け止めてください!」
その言葉と同時に、ゾフィーの足元が砕け散る。
こちらに右手を振りかぶりながら飛び込んでくるゾフィー。
右手に合わせて、剣を振りぬく!
見える、が!
ガギィィィィ!
速すぎる!!
とてもじゃないが、素手では受けきれそうにない威力。
剣1本でゾフィーの攻撃に必死で対処する。
見えるのに!わかるのに!
追いつかない!!
ゾフィーは嬉しそうに両手両足を俺に繰り出してくる。
右手、左手、右脚、また左手!?ぐっ、左脚!
目が回りそうだ!
「ぬおおおおおお!!」
「あはははは!楽しいねぇ!」
「そりゃ、嬉しいよ!オラァ!!」
ゾフィーの拳に合わせて、思いっきり剣を押し返す。
仕切り直しだ!暑すぎ!
「ふぅ、ふぅ、ふぅ、すごいよ、アキーラ君。まだ、当たらないなんて。」
「へへ、あまりに情熱的すぎて、ビックリしちゃった。次で最後にしようぜぇ?」
「えー?……でもまぁ、しつこい女は嫌われるって言うし、そうしよっか?」
そう言って、お互いに構え直す。
左足を前に出し、左手を俺に向けて真っ直ぐ伸ばし、右腕を引く、これからこの手で殴ります、と言わんばかりのゾフィー。
剣を納刀し、腰を落とす。左手は鞘に、右手は軽く、剣に添える。
右足を前に出し、準備完了。
もう会話は必要なかった。
……ドンッ!!!!
「オラァァァァァァ!!」
「でりゃぁぁぁぁぁ!!」
ゾフィーの右手と、剣が衝突する。
拮抗する、剣と手。
炎が、俺の身を包み、焦がし始めるが、気にしない。
そして、元の姿に戻ったゾフィーが目の前に立っていた。
「………最高だね、アキーラ君。」
「………ゾフィーもね。」
お互いに肩で息をしながら見つめ合う。
「……私のこと、守ってくれる?」
「あったりまえだろ。何の確認だそれ。」
「っ!うん!アキーラ君、だーいすき!!」
飛び込んできたゾフィー、避ける必要は無さそうだ。




