第6話 VS!!ASMR!!
「ゼェ、ゼェ、ゼェ…。」
「アキーラ、大丈夫か。まだ門を閉める時間じゃ無いのに随分と急いでるんだな。」
「ギ、ギルドで換金しないと、今日の宿が取れないので…。」
「そ、そうか。まぁ確かに人気の宿埋まるのも早い。早めに行かないと…。ん?でも確か、初心者用に格安で泊まれる宿をギルドが手配してなかったか?そっちには行かないのか?」
「いえ、そのつもりなんですが…。ギルドも宿も受付が閉まっちゃうと終わりなので。」
「どっちも24時間やってるぞ?さすがに受付の人数は減るが、何時に行っても対応してくれたはずだ。ちなみに宿は人気ないから、だいたい空いてるぞ。」
「………マジですか?」
「…マジ、だな。」
(事前に確認しとけばよかったね!)
…ピキピキ
いや、落ち着け、ここで怒るとガルドさんに怒ってるみたいになる。
あの人は俺の恩人なんだ…。Be cool、Be coolだ!!
(ヘイヘーイ!リンリンピキってるぅー!)
「うるせぇテメェおいコラァ!!」
「うぉ!き、気持ちはわかるが落ち着けアキーラ!大丈夫だ、わかるぞー、ヨシヨシ。街に来たばかりで不安なんだなー。大丈夫だぞー、この街は君の味方だー。」
ガルドさんの優しさが俺に突き刺さる!
こうかはばつぐんだ!!
「ああ、すみません、ガルドさん。取り乱した上に気まで使わせちゃって…。ちょっとまだ、動揺してるかもです。」
(ばつぐんだー!)
ほんとやめろよ!今はダメだろ!!
「…と、とりあえず、ギルドに行って報告してきます!お仕事、お疲れ様です!!」
「ああ、俺は気にして無いから、いつでも来いよ。愚痴くらいはいくらでも聞いてやるぞ。」
「はは、ありがとうございます。それでは。」
「ああ、気をつけてな。」
ガルドさんと別れて冒険者ギルドへと歩く。とりあえず街の中に入れたし、24時間なら急がなくても大丈夫だろう。
(気をつけてー、だって!フラグかな?フラグかな?)
うっさい!フラグちゃうわ!仮にフラグでもへし折ったる!舐めんなよ!!
(さらにフラグを積んでいくスタイル。嫌いじゃないよお!)
そうして無事冒険者ギルドの門を潜り、受付業務中のリサさんを見つけた俺は納品確認をお願いする。
「あ、リサさん!受注していた薬草の納品に来たんですが。」
「あ、アキーラ・リンリンさんですね!今確認しますのでこちらに薬草を置いていただけますか?」
そう言われて、握りしめていた8本の薬草と、アイテムボックスに収納していた5本の薬草を取り出し、指定された箱へ入れていく。
「1、2、3…全部で13本ですね。確かに確認しました。この5本は状態も良いですね!まるで取れたてです。これならプラス査定できそう。…逆にこっちの8本はなんだかしなびちゃってますね…。もしかして、握りしめちゃいましたか?こっちは申し訳ないですが、マイナス査定になっちゃいます…。」
バトン代わりに振り回してましたぁー!
でもマイナス査定ってことは、買取はしてくれるんですよね!?
(こんなしなびた薬草で作ったポーション飲みたいやついるぅ!?いねえよなぁ!!)
なんかこいつ煽りスキル上がってない?
「えーと、それではプラス査定の薬草5本と、マイナス査定の薬草8本で合計76イェンになります!こちらお確かめください!」
そう言ってリサさんは、銀貨7枚と銅貨6枚を渡してくれた。
銀貨10イェンはわかってたけど銅貨は1イェンか。これでご飯どれくらい食べれるんだろ?
(知力6でもそういうの考えられるのね。見直したわ)
ナチュラルに下に見過ぎじゃない!?神だからって!!神だからって!!
(………なんかゴメンね?)
そこで謝んなやああああ!俺が惨めになるだろうがあああ!!!
「あ、あの、アキーラさん。大丈夫ですか?何か気になる点でもありましたか?」
「あ!えーと、その、そうですね。これから紹介してもらった宿に行こうと思うんですが、そちらの宿で夕食を出してもらうことは可能でしょうか。」
「ああ!そういうことですね!もちろん可能ですよ。別途で費用はかかりますが、宿の受付で言ってもらえれば対応してくれると思います!」
「ありがとうございます。それでは、そろそろ行きますね、さすがにお腹が空いてきたので…。」
「あ!あと、こちらをお渡ししておきます!アキーラさんのギルド証です。宿に泊まる際もこちらをご提示くださいね!」
そういってリサさんが渡してくれたカードには、デカデカとFの文字と俺の名前、アキーラ・リンリンと書かれている。
改めて見ると、俺、ほんとにリンリンになっちゃったんだな。
(大丈夫大丈夫。鈴木よりリンリンの方が似合ってるよ。頭空っぽなところとかそっくり)
ツッコミ返す気力も無くなってきた俺はギルドを出て宿を目指すのだった。
「そんな気はしてたけど、やっぱりボロかぁ…。」
(雰囲気あるぅー♪)
無事、リサさんに教えてもらった住所へ到着した俺を迎えたのは、何故まだ建ってるのか不思議なくらいのボロボロの宿だった。
屋根の重さに耐えきれず曲がってしまった柱。
その柱に押し出されるようにして木の板が飛び出したのか、隙間だらけの壁。
恐らく建て付けが悪くて閉まらなくなったのだろう、開きっぱなしのドア。
誰がどう見ても人が住むなんて場所じゃなさそうだ。
(でも何度見ても、紹介された住所はここだよねー♪オバケとか出るかな!楽しみー!)
人の住まいをアトラクション扱いするのやめてくれませんかねぇ!!
(早く入ろーよー!!気になるう!)
わかったから!急かすな!
「す、すみませーん!!ギルドに紹介されてきましたー!泊めてもらえますかー!」
(ますかー!)
そういった俺に反応するように宿から1人男が出てきた。…ええ、人なのこれ?ムキムキのボーボーだぞ?クマじゃない?
「おお、お前さんがリサちゃんが言ってた奴か。確か…アキーラだったか。文無しなんだろ?とりあえず一泊でいいか?」
「は、はい。そうです。とりあえず一泊とあと朝夕の食事もお願いしたいんですが。」
「おう、いいぞ。といっても大したもんでもないがな。じゃあ朝夕の飯と合わせて一泊60イェンだ。ほれ、払え。」
「はい、それじゃあ銀貨6枚で…60イェンです。どうぞ!」
「ほい、確かに。じゃあ案内するぞこっち来い。…いいか?入ってすぐが受付兼食堂だ、今から夕食を出す。まずは、そこに座れ。そんで、お前の部屋は食堂を抜けた、奥の廊下の突き当たりだ。他にも泊まってる奴がいるから、突き当たりの部屋以外勝手に開けんじゃねぇぞ。殺されてもシラねぇからな。」
「わ、わかりました!他の部屋は開けません!」
「それでいい。若いもんは血の気が多い上に自信過剰だからな。まぁ座れ、そして食え。」
そういって出してくれたのは、残り物だろうか、パンの切れ端と具の少ないスープ。
だが腹の減った俺にはとんでもないご馳走だ。
「ゴクリ…い、いただきます!!」
モグモグ…ゴクゴク…、ぷはぁー!!
あっという間に食べ終わった俺に宿のオッサンが話しかけてくる。
「もう食べたのか、おかわりいるか?まだ余ってるから出してやるぞ。どうせ俺が食ったら後は捨てちまうからな。好きなだけ食うといい。ああ、それと俺の名前はヴィルトってんだ。まぁ好きに呼べ。」
「あ、ありがとうございます!ヴィルトさん!おかわりほしいです!」
「おお、そうか。食え食え。たくさん食え。」
そうやってヴィルトさんのご好意に甘えた俺は腹一杯食べて宿のベッドに横になるのだった。
ベッドはちょっと硬いけど、ヴィルトさんは優しそうだ。この宿、見た目で損してるけど結構当たりかも…。
そう思いながら俺は深い眠りに落ちていく…
(ボリボリ…、ガサガサ、バリィ!パク、ボリボリボリ…)
「お前の咀嚼音うるさくて寝れねぇよお!なんで俺の耳元でせんべい食べてんの!?」
(うぇふひ、ひひはんへはいわお)
別に意味なんてないって!?今そう言ったよな!
絶対言った!!
せめて夜くらいはまともに寝かせてくれよおおおお!!なんでこのASMR安眠効果ないんだよおお!
(うるふぁいはー!ほっひもははんひへふほほー!)
何言ってるか全然わかんねぇぇぇ!つーか口に物入れて喋っちゃダメって教わらなかったのか!
俺の異世界2日目になっても、安眠できないのか。




