第57話 俺の領域
「痛い痛い痛い痛い痛い!!」
俺は今!
教会騎士様の!
ご協力の下!
石を投げられている!
「ぬぁ!うぉ!ぐ!あだ!ちょ、まっ、待ってぇ!」
「一旦ストップ!一旦ストップでーす!……はい、回復しますよー!」
横で見ていたフレイの制止の声で、ピタッと止まる騎士達。
とてとて走ってくる聖女に念の為確認する。
「……なぁ、この訓練、ほんとに意味あんの?」
「何を仰いますか!これは、ありとあらゆる体勢で石を避け、避けられないものは剣で弾く!最高に効率的な訓練ですよ!!」
あ、はい。
リョーカイです。
『スキルは覚えただけじゃ、使いこなしたとは言えないからねー。頑張ってLv上げしなさいな。』
女神フレイヤが俺の周りでぷかぷか浮きながら言ってくる。
でもちょっとこれは、スパルタ過ぎん?
頭とか血が出てるよ?
「アキーラ君はこれくらい詰め込んだ方が、伸びるよ。とりあえずLv上げよう?」
いつもは甘やかしてくれるゾフィーもスキルが絡むとこれだ。
「はぁ、しゃーないか。じゃあもっかい!お願いしまっす!」
そう言った瞬間、休んでいた騎士達から殺気があがる。
「一応聞くけど、怨みとか込めてないよね?」
………。
騎士達は無言で大きく振りかぶり、石を投げつけてくる!
やっぱ込めてるよね!?
ねぇ!!
「よっ!」
1個目は余裕だ。
反射速度を意識しながら、顔に飛んでくる石を首を動かして避ける。
……急所狙い?
2個目、これもまだいける。
剣を持つ右手首を狙った石を腕を上げることで躱す。
3個目、まだ、大丈夫。
左太もも直撃コースを腰を回すことで回転しながらいなす。
4個目、ちょっとずつ、余裕が削られてくる。
右肩付近の石を、さっき上げた剣で、切り落とす。
5個目──
痛ぇ!
重心の乗った右足が動かせず、膝に石が当たる。
こうなるともう、ジリ貧だ。
3個に1個くらいは当たったり掠ったり。
それがそのうち2個になり3個になり、終いには。
「痛い痛い痛い痛い痛い痛い!!」
「ストップでーす!一旦仕切り直しましょー!」
……………こうして止められる。
さっきからこの繰り返しだ。
「ほい!回復オッケーです!!……アキ様?大丈夫ですか?」
俺の表情を見たフレイが、珍しく心配してくる。
「ああ、大丈夫、だけど。こんなんで俺、邪神に勝てんのかな?」
「それは…。」
『今のアンタじゃ無理よー。アンタの持ち味は後半の爆発的成長にあるんだから、悩んでないで頑張りなさい。』
あいつ段々煽り戻ってきてない?
今からでもクーリングオフしたいんですけど。
でもまぁ、俺のスキルを考えれば、妥当な指摘か……、ムカつくことに。
「あー!!難しいこと考えるの嫌い!やったるわぁ!!」
「お!その調子ですよ!アキ様!さすが、女神様に、愛されたお方です!」
『だだだだ誰がそんなこと言ったのよ!!』
「ひぃ!!で、でも、非常に仲睦まじくお見えに……。」
「え?なんなん。お前俺のこと好きなんか?ん?」
『〜〜っ!!知るか!アホー!』
あ、消えた。
あいつ煽ってくるくせに煽られるの苦手だよなぁ。
そういうところ邪神にも突かれてんじゃね?
知らんけど。
「アキーラ君、アキーラ君、今使ってるのって、バランス感覚と反射速度?」
「え?うん。そうだよ。今はそれの訓練じゃん?」
「え?アキ様、その2つしか使ってないんですか?なんで!?身体強化は!?気配感知は!?」
なんだ、なんだ。
周りで話を聞いていた騎士達も急にざわつき始めた。
「マジで?それであれ?」
「え?やばくない?なんであんな動けんの?」
「俺2個目くらいで当たるわ。」
「わかる。」
「なんだ!?俺なんかしたの?」
「アキーラ君、皆は君が普通に身体強化や気配感知、なんなら心眼も使ってると思ってたんだよ。って言うか教会騎士も身体強化使ってるでしょ?」
「いや、それはそういうもんなのかと。」
「……アキーラ君が常識ないって、わかってたつもりだったけど。まだまだ甘かったよ。」
「そうですよ、アキ様。下手したら死にますからね!死んだら治せません!」
フレイはちょっとズレてない?
死ぬこと以外はセーフなん?
「私は身も心も女神様に捧げていますので!!」
「きいてないよ?」
「ふふふ、とりあえず今使えるやつは全部使ってみてよ。……楽しみにしてるよ。」
そこまで言って、離れていく2人。
騎士達も気を取り直して、スタンバイしている。
「うーん、とりあえずやってみるか。」
身体強化、オン
気配感知、オン
危険感知、オン
心眼、オン
「いきますよぉー!!はじめぇぇぇ!!」
フレイの合図を切っ掛けに、騎士達が石を投げ始める。
ん?これって……。
1人目が投げた石はお腹の辺りに飛んでくる。
右肩を引いて、体を半身にする。
2個目、左足首か。
これも、足をずらして躱す。
3個目、左肩。
上半身を反らす。
4個目、うーん。
そこで、躱すのをやめた。
もうこれ、そんなんじゃなかったわ。
「アキ様!?危な──」
気配感知で、だいたいの石の位置は把握している。
自分に当たりそうな石は危険感知が教えてくれる。
俺はそれだけを、ただ体の反射に任せてバランスを気にせず切り落とせばいい。
それだけの時間は心眼が与えてくれる。
カカカカカカカカッ!
石は剣に阻まれて、俺に届くことはない。
「この3mの範囲は、俺の領域だ。ってな?」
ふっ、決まった…。
「あ!アキーラ君!それこの前宿屋で練習してたやつ!?1人でお風呂でやってたやつだよね!?ねぇ!」
「なんでそういうこというの?」




