第56話 アルティメットリンリン!爆誕!
「むーん、これで、大丈夫です!」
俺の右手を見ながら、フレイがそう言う。
回復魔法ってスゴイな、痛みが完全に引いたわ。
「サンキュー……って、何か素直に言いにくいなぁ。」
「む!何でですか!こんなに効率的なのに!」
「やっぱ忘れてない?人の心。」
「御神託ですから♪」
そう言って、輝くような眩しい笑顔を向けるフレイ。
……ハイライトさえあればなぁ。
「さてさて、アキ様。次ですよ!バランス感覚の番です!」
「やっぱ続くよなぁ。」
「御神託ですから♪」
ハイライトなくすのやめーや。
「おい!押すなって!バカ!フリじゃない!おい!」
「ダメでーす!それ!それ!」
俺は今、5mはある棒の上に立っている。
足を揃えてギリギリ立てるくらいの太さだ。
それをフレイは下から押している。
「あ!おい!落ちる!バカ!!」
「ほい!ほい!ほい!1回くらいなら落ちても死にません!死ななければ大丈夫です!」
「大丈夫じゃねぇよ!!落ちたらただの事故じゃねーか!!あ、うああああああ!!」
ズドーン!
そう騒ぎながら落ちる。
「ぐえっ!」
何とか空中で体を回して背中から地面に落ちる。
肺の中の空気が一気に出ていってしまったような感覚に、呼吸が詰まる。
頭だけは何とか守ってるけど、マジで辛い……。
「はっ、はっ、はっ、お、おぇぇぇ。」
「回復回復ぅ!!」
そう言いながらフレイが俺に回復魔法をかける。
すると、背中の激痛や吐き気が収まっていく。
が、疲労感はなくならない…。
「ああ…、これ、まだやんの?」
「スキルは取れましたか!?」
「それは…、まだ、だけど。」
「じゃあもっかい行きましょう!!」
だ、だよねぇ。
目のハイライトないもん。
神託だもんね?
わかってたよぅ…。
「ふぅ、ふぅ、ふぅ…。」
両手を横に広げて、棒の上に立つ。
フレイが動かさなければ、立つこと自体は出来るようになってきた、かな?
「じゃあ、行きますよー!そぅれぃ!」
ドゴォ!
そう言いながらフレイは棒を思いっきり殴ってくる。
あいつの手も痛いだろうに、ニッコニコだ。
「う、ぐ、おぉ…っとぉ!」
ユラユラ揺れている棒の上で、必死にバランスを取る。
初めよりは確実に良くなっているが、まだスキルは取れない。
「それ!それ!そーれぃ!!」
ドゴォ!
ドゴォ!
ドゴォーン!!
フレイの腰の入ったドツキが、容赦なく棒に叩き込まれる。
「う、う、うわ、あああああああ!!」
急に崩れたバランスを立て直せず、そのまま体が空中に投げ出される。
「おああああああ!ち、ちくしょー!!」
凄い勢いで近付く地面。
頭だけは守ろうと、体を必死にひねる。
ズドン!!
「ぐっ、がぁ…。ち、くしょう。」
【頑丈Lv1を取得しました】
そ、そっちじゃ、ねぇよ……。
ススッ
パァァァァァ
もうフレイも何も言わずに回復してくる。
………。
……………。
……………………。
「ああああああああ!!やるよ!!やってやるよ!!やりゃいーんだろうが!!」
「お!アキ様!その調子ですよー!!がんばれがんばれ♪」
「黙らっしゃい!!俺を上に連れて行けええええ!!」
そのままの勢いで棒の上に立った俺!
もう絶対に落ちん!!
来いや!フレイこいオラ!!
「行きますよー!!……オラァ!!!!」
ドゴォォォォ!!
「うおおおおおおおお!!」
さっきまで以上の勢いで棒を殴るフレイ。
倒れる直前まで棒が傾いていく。
必死に棒とは反対側へと体を動かしていた、その時。
【バランス感覚強化Lv1を取得しました】
あ、ここだわ。
スキルを手に入れた瞬間、自分がいるべき場所が、点で見えた。
この点の上に体を乗せて…ここだ。
ここなら、落ちない。
不安定の中の安定。
俺はそれを手に入れた。
棒の上は、俺にとって、地面と何ら変わらない。
そのまま、腰の剣に手を伸ばす。
そんな余裕が無かったのが、嘘みたいだ。
スゥゥゥゥ──
スパァァァァン!
斜めに倒れる直前の棒の上で、いつものように剣を振るう。
──いつもの、ように。
一瞬の静寂の後、フレイが興奮して叫ぶ。
「お、おおおおお!!アキ様!やりました!?やりましたね!?やったー!!」
ドゴォ!!
興奮したフレイがトドメとばかりに棒を殴る。
おいおい!
ま、問題ないか。
反射速度とバランス感覚が強化された今、崩れる事はない。
倒れていく棒の上でバランスを取り、地面と接触する瞬間を見極めて、跳ぶ。
──トッ
俺は静かに、着地した。
「ははははは!!無敵!アルティメットリンリン、爆誕じゃー!!」
もう俺を傷つけることは誰にも敵わんぞ!!




