第55話 テヘペロ♪
邪神の襲来から1週間。
まだ頭にはあの声が残っている。
邪神のせいで、何もやる気がしない。
そう、邪神のせいなのだ。
俺は悪くないのだ。
……あー、あれさえなければなぁ!
『アンタねぇ、いつまでも教会に甘えてんじゃないわよ!いい加減働きなさーい!』
我らが女神様の御神託により、俺は労働に駆り出されることになったのだ。
「アキ様が、ついにやる気に…!!」
「いやぁ、あれはイヤイヤだねぇ。」
うるせーや!
「で、何やればいいの?」
『私じゃなくて、フレイに聞きなさい。アンタのお世話係命じてるから。』
「はい!女神様からの御神託!全力で当たらせていただきますよー!!」
聖女であるフレイは本当に嬉しそうだ。
女神からの依頼ってだけでやたらと鼻息が荒い。
聖女なのにふんすふんす言ってる。
聖女なのに。
まぁかわいいんだけど。
「そういえばさ、なんでフレイとフレイヤってそっくりな訳?偶然にしては出来過ぎじゃね?」
『聖女は元々私を受け入れる為の器だからね。才能もすごいし、可愛いのよ。ワタシに似て。』
………器?
「今なんて?」
『ワタシに似て可愛いのよ。』
「いや、そっちじゃなくて!器ってどういうこと!?」
「ああ、アキ様は知らないんですね。我々は先代聖女から指名される形で代々襲名していくんですが、先代から聖女の因子を受け継ぐ際に、そのお力も授かるのですよ。」
???
何言ってるか全然わからん!
『………わからん!って顔してるわね。とりあえず聖女は、ワタシと似るってことだけ覚えときなさい。』
ええ?それでいいのか?
え?多分ダメだよな?
そう思いさっきから黙っているゾフィーを見ると、
……顎に手をやってブツブツ言ってる。
「器、つまり聖女は女神が現世に降臨するための依代?何のために?今も降臨してるのでは…。制限?聖女はリミッターを解除する装置?もしくは、強すぎる力の調整弁か?うーむ…。」
ダメだなぁ。
この状態のゾフィーは、もう何言ってもダメだ。
落ち着くまでほっとこう。
ホットコーヒーでも飲みながらね。
なんつって。
「まぁいいや。で、何すんの?」
「あ、はい!えーっとですねぇ。…あった、これこれ!ジャジャーン!アキ様育成計画ぅ!」
あきさまいくせいけいかく?
何作ってんの?
ヒマなの?
ヒマなのか?
ヒマなんだな!
「こちらですね、女神様の御神託を基に、夜なべして作りました!はぁ、幸せな時間でしたぁ…。」
「ええ…、フレイヤなにやってんの?」
『何かしたそうにしてたからね。とりあえずフレイに続き聞きなさいな。』
なんだ、お前もそういうところあるんだな。
『何見てんのよ。』
「別にぃ?」
「……?よろしいでしょうか。それではですね。まずは、常時発動スキルを取ろうの巻です!取りましょう!」
圧倒的説明不足!
俺も取りたいから!取り方教えてくれよ!
共有!ちゃんと共有して!
何書いてんのその本!
アキ様は何も知らないって足しとけ!
「……はぁ、具体的には何をすれば?」
「まずは、バランス感覚と反射速度、ですね。この2つを取って、どんな体勢からでも、素早く、剣を振れるようになりましょー!」
言うてる事まともやなぁ!
ぐぅの音も出ねぇ!
「…わかった。それ覚えるのに、何すればいいの?」
「ふふふ、それでは始めましょうか………。」
なんか今、目が光った気がする…。
キラーンって。
気のせいだよね?
ん?その木刀、どこから……。
フレイはゆっくりと、木刀を振りかぶり……。
ブン!!
「っあぶねぇ!!」
何も言わず振り下ろしてきた!!
「さぁさぁ!アキ様!心眼も気配感知も、使っちゃダメですよぉ!!」
ブン!
ブン!
そう言いながら、フレイは手に持った木刀で殴りかかってくる。
目、血走ってない?
本気で殺そうとはしてないよね?
信じてるよ?
「さぁ!さぁ!避けてくださいよー!何も考えず、反射だけで!ほらほらほらほら!!」
「ぬ、おおおおおお!!あぶ、あぶねぇ!おい!せめて!合図くらい!しろよ!!」
俺の懸命な呼びかけにも、フレイは意に介さず木刀で殴りかかってくる。
あ、これダメだわ。
止まらんやつだ。
「アキ様、大丈夫ですよ。大怪我しても、私が治してあげますからね。」
そんな血走った目で言われても!
「ぬお!うお!いで!あだ!ぐぬぅ!ぬああ!おいい!待って待って待って!」
当たってる!何発か頭に良いのもらってるよ!
【反射速度アップLv1を取得しました】
「っ!来たぁ!」
心眼とはまた違う。
フレイの木刀のスピードは変わらない。
でも、自分の思考速度が上がってる?
いや、違うな。
考えずに体が動くようになってる?
……それも違う。
考えてから動くのが早い。
ラグが無くなったように感じる。
…スゲぇな。
「ハハ、見えてる情報は変わらねぇ。俺のスピードも変わらねぇ。でも、わかるぜ。」
フレイの振り下ろす木刀。
さっきまでは、必死に避けていた。
でも、今は違う。
──遅い。いや、俺が早いのか。
見て、躱す。
見て、躱す。
もう、フレイの木刀が当たる気配は全くしなかった。
「はぁはぁ、ア、アキ様、急に、動きが…。」
フレイも気付いたようだ。
「と、とれたんですね?」
「おう、取れたぜ。あんがとな。………痛かったけど。」
「あ、あはは…。か、回復しますぅ!」
何回も殴られてたからなぁ。
いてて、腕とか折れてない?これ。
「あ、やば。強く殴りすぎたかも……早く治さなきゃ!」
今何つった?
「えへへ。」
テヘペロで許されると思うなよぉ!




