第52話 困ってる?ならいいよ。
『アンタねぇ!もっと空気読みなさいよ!!どう考えても跪いてハハァ〜ってする場面でしょーが!!』
「知りませぇーん!何で俺がクソ女神に跪かないといけないんですかぁぁぁ!?」
『あのねぇ!ワタシこれでも一応神なんですけど!女神フレイヤ!わかるぅ!?』
「…知ってるよ。邪神と戦って、残り少ないリソースを俺なんかに使って、ボロボロになりながら守ってくれた。だろ?」
『ア、アンタ、そういうの急に言うの、やめなさいよね…。』
……………、
ん?
何か、静かすぎるような。
そう思って周りを見渡す。
……皆、何でそんな目で俺を見る?
『アンタの態度がデカすぎるからでしょ。』
「は?いやいや、そんな訳──」
「アキ様!めめめめ、女神様に何て口を!!」
「あ、アキーラ君んんん!君は自分が何をしてるのか、わかってるのかね!?」
「……さすがに私もちょっと驚いたよ。アキーラ君、誰が相手でも変わらないね。」
「いやいや、だってこいつ、クソ女神だよ?」
『この世界でそんな事言ってんの、アンタだけよ。』
「マジ?」
『マジよ。』
マジかぁ……。
『はぁ…もういいわ。アンタが変わってなくて安心したわよ…。』
「おーん?ほんで、なんでここに、呼んだわけ?はよ話せ。」
『前言撤回、アンタ態度デカくなってない?』
「色々あったからな!あれから!」
『……ま、それもそうか。まぁいいわ。で、本題だけど』
俺を含む、周りの皆が息をのむ。
『……この世界、ちょーっとヤバいかも。助けて?』
「は?」
ヤバい?世界が?助ける?誰が?
『アンタよ、アンタ。アキーラに言ってんの。……アンタも会った、あいつ。邪神からね。』
「邪神?邪神リサ?あいつ、なにしてんの?」
『色々とちょっかい掛けまくってるわよ。シュタットにいた頃は大人しかったけど、最近はまた活発になってるわ。ここだって、もう安全じゃない。何があってもおかしくないわ。』
「もう起きてるぞ?」
『へ?』
「いや、もう起きてる。教皇、死んだし。」
「殺したのはアキーラ君だったんじゃ?」
あ、ゾフィー!ダメだよ!
『死んだ?メティアが?なんで?』
「え?何か女神に見捨てられたーとかで、邪神の石?みたいなの食べて化物になったよ。大変だったんだぞ!」
その言葉にフレイヤが黙り込む。
『………ああ、ホントだわ。ワタシが眠りについてる間に、好き勝手暴れたみたいね…。』
お?なんか怒ってる?
『とにかくこうしちゃいられないわ、ワタシ今、アンタに取り憑いてるからさ、ちょっとメティアの部屋まで行ってくんない?直接見たい。』
ええ?取り憑いてんの?お寺とか行ったほうが良いかなぁ。
『なんで祓おうとしてんのよ!神だって言ってんでしょ!いいから早く行け!』
はいはい、行けばいいんでしょ、行けば。
「アキ様とお話する女神様…、かわいい…。」
「う、うーむ。これが女神フレイヤ様?…ぐっ、頭が…。」
「ふふふ!アキーラ君はホント面白いなぁ。」
そうして、教皇メティアの自室に舞い戻った俺達。
フレイヤはずっと黙って、壁をジーッと見てる。
なんなん?姑か?
メティアさん、ここに埃があるわねぇ。って?
『……ちょっとアキーラ、茶化してないで、ここ。心眼でよく見て。』
「ん?どれどれ……。んー、んん?何も無いけど?」
『バカ、アンタ浅いのよ。もっともっと、深く見なさい。表層だけでなく、深部も、全てを見るの。』
「深部ぅ?ぬぬ、ぐぬぬぬ……。」
フレイヤに言われて、いつも以上に心眼を意識する。
戦うときよりもずっと、深く、全てを見通す。
そんなつもりで──
「っ!!こ、れは……。」
『見えた?アンタ、かなーり気に入られてるわねぇ。』
血にまみれた壁には見えない文字でこう書かれていた。
たのしかった?また、あそびましょ?
これは、宣戦布告なんかじゃなかった。
あいつ、邪神にとっては、ただの遊びだったのか。
俺はその認識の違いに気付き、背筋が寒くなる。
教皇を操り、化物とさせ俺に殺させる。
自分の仕業という事を伝える為だけに、罪のないシスターを殺して、わざわざ教皇の部屋に飾った。
全部、あいつにとっては俺との遊びな訳だ。
『アンタ、このままだと、何も守れないまま死ぬわよ。』
「俺もそんな気がしてきたよ。クソ女神。」
『はぁ、巻き込んじゃって申し訳ないけど、全部話した方が良いわね。アンタも納得しないでしょうし。』
『ま、こんな場所でする話でも無いし、場所、変えましょ?』
女神のその一言で、周りの人間は一斉に動き出す。
それは神からの啓示なのだと言わんばかりの勢いだ。
物凄いスピードで、女神様にふさわしい場所
(教会比)へと連れて行かれた。
何でも、塔の上の聖堂ができる前まで使っていた大聖堂らしい。
「ほぇ〜、でっけー聖堂!」
『爆発しそうな事言うんじゃないわよ…。』
え?しないでしょ。……しないよね?
『ふふ、ここも久しぶりね。あっちに出来てから、来る機会無かったしねー♪』
そう言いながら、大聖堂の中を飛び回るフレイヤ。
あ、聖女が祈ってら。
『っと、こんな事してる場合じゃなかったわね。それじゃ、本題に入りましょうか。』
今明かされる、衝撃の真実!ってか?
……
…………
………………
「千年?千年も前から戦い続けてんの?」
『そうよ。ある時は王国と帝国に分かれて殺し合い、ある時は勇者と魔王に分かれて大陸の覇権を賭けて戦って。……そうやって争い続けてきたわ。経済戦争なんてのもあったわね。』
「経済戦争って、何でもありだな…。そんな昔から、嫌がらせされてんのか。」
『アイツが、本格的にこの世界にちょっかいを掛けてきたのはその辺りね。そっからは対策と対応に追われる日々だったわ。』
「じゃあこの世界の住人の才能をマクロで決めてるって言うのも…。」
『…邪神の対応でそれどころじゃなくなったから、よ。』
なんだよ、ちゃんと理由あんじゃん。
「まぁ、いいや。それで、その戦争の状況は?」
『連戦連敗ね、負ける度に少しずつ力を奪われて、今やワタシも虫の息、次負けたら消滅かしら?』
「そんな、女神様が…。」
涙目になるフレイ。まぁそりゃ、こんなんでも拠り所だからな。
「で?俺はどうすりゃいいわけ?このまま道連れなんてゴメンだぞ。」
『それはワタシもゴメンだわ。……アキーラには悪いけど、神の遣いとして、邪神と戦ってもらいたい。』
ほーん、まぁ正直、予想通りだなあ。
「……困ってんのか?フレイヤ。」
『………うん。』
「そっか、じゃ、いいよ。助けたる。」
『…………ぐすっ、アリガト、アキーラ。』
そうして俺は神々の争いに本格参戦することになった。
………絶対に何とかしてやるからな。




