第51話 やっぱりクソ女神
「認識の阻害?リサが?」
「ああ、前にも言ったけど、俺、リサさんのこと金髪ポニテに見えてたんだよね。」
「ああ、言ってたね。私達の知っているリサとは別人だった。」
「そう。でもそれに誰も違和感を覚えてなかったんだよ。……なんかさ、似てない?」
「──!そういう事かい。確かに…似てるね。」
そう。シュタットのギルドでの事。
本当のリサさんは茶髪で前髪を隠した、大人しい女性だった。
でも俺の知っているリサさんは、金髪で、ポニーテール。ハキハキしたよく気がつく人だった。
…実際は邪神だった訳だが。
もし、今回のシスターがリサさんもしくはリサさんと同様のことができたなら、どうだ?
「だけど、アキーラ君、そうなると。」
「ああ、シスターは、もっと前に…。」
「「入れ替わっていた。」」
「……でも、それなら何で今、こんなことしたんだ?」
「アキーラ君も言ってたじゃないか、宣戦布告。それに、君がいたからだろうね。」
は?俺が?なんでよ!
「…納得してないみたいだけど、君は周りから見れば女神のお気に入りだからね?頑なに認めないけど。」
「いやいや、それはないよ。ゾフィーさん。それはない。」
「邪神に目をつけられて、女神の神託に出て、聖女に導かれて、教皇に刺される人が?」
ぐっ!痛いところを!!
「自覚した?完全に神国は君が来てから慌ただしくなってるよ。」
「でもそこに俺の意思はないじゃん!!」
「もちろん、わかってる。アキーラ君は争いなんて望んでない。だけどね、君は間違いなく動乱のど真ん中にいるよ。間違いなくね。…だからスキル上げよう?」
ちょっと最後に色気出すんじゃねーよ。
「それが本音じゃん!!」
「えー!!いいじゃん!剣術!剣術だけ!最近全然素振りしてないでしょ!やろうよ!今日!今すぐ!!」
「嫌ですぅ!!しんどいからぁ!!」
「あああああ!!言った!言った!嫌って言ったあああ!ひどい!契約したのに!不履行だ!!」
「どんだけ前の話なんだよ!もう無効だ無効!!」
「旅のお金だって全部出してるのに!私のこと利用したんだ!アキーラ君のおに!!けっこんさぎし!」
「してないから!結婚はしてない!でも、お金はありがとう!感謝してる!」
「あのー、アキ様?さっきから、何を…。」
振り向くと、冷めた顔でこちらを見つめるフレイがいた。
「あの、一応ここ、殺害現場なので…。夫婦喧嘩は外でやってもらえると…。」
「あ、はい、スミマセンデシタ…。」
「ふふ、夫婦だって!聞いた?夫婦だって!」
「ちょっと黙ろうね?」
「ぶー!」
「はいはい、そんで、フレイ。ちょっとマズイかも。多分、早く祭壇行ったほうがいい。」
「あ、え?アキ様がお望みなら大丈夫だと思いますが、まだ工事中ですよ?」
「多分だけど、待ってるとヤバい。手遅れになる前に行こう。」
「……わかりました。枢機卿に掛け合ってきます。」
そう言ってすごい速さで走っていくフレイ。
神託絡むと見境ないな。
「さて、上手くいくかね?」
「できないと、この国詰むんじゃないかな?」
できたらそれは避けたいなぁ…。
しばらくして、フレイが枢機卿を連れて戻ってきた。
「ふむ、認識の阻害に、邪神ですか。」
「ああ、あっちの狙いはハッキリしないけど、今は完全に後手後手だ。これ以上神託を後回しにすべきじゃないと思う。」
「私も賛成だ。これは教皇の下手人に、つながる可能性もある。一刻も早くやるべきだよ。」
「むぅ…。良いでしょう。ただし、我々も立ち会わせていただきますぞ。」
「構わないよ。アキーラ君の勇姿を見届けるといい。」
俺は何をすんの?かくし芸?
お腹に顔とか書いといた方がいいかな…。
護衛も含めた全員で、聖堂へと向かう。
何とも言えない緊張感がある。
こういう場面だと、ふざけたくなるよね。
「アキーラ君、今はダメだよ。」
ダメか。
ガチャ、ギイイイィィィ…
あちらこちらに戦いの後がある。
だが、神聖な雰囲気は損なわれてはいなかった。
やっぱり、スゲぇな。
俺がそうやって圧倒されていると、フレイが服を引っ張ってくる。
「さっ、アキ様!祭壇に行っちゃいましょう!さぁさぁ!」
こいつも死にかけたのに変わんねーな。
元気になったみたいでよかったけど。
神託の内容は、祭壇に連れてこい、だったよな。
とりあえず、登ればいいのかね。
「よっこいしょっ…と。ふぅ、どうだ?」
祭壇の縁に手をかけて登る。
とりあえず立ち尽くしてみるが…。
……
…………
………………
何も起きないな?
何かこれ、おかしくないか?
そう思って皆の方を振り向いたときに、皆が上を見上げているのに気付いた。
「一体何が───!!」
光だ。
光の柱が、こちらに向かって真っ直ぐ降りてきている。
意志を持つかのように、まっすぐこちらへと向かってくる。
異常な光景だが、恐怖は感じなかった。
むしろ何か、懐かしいような気が…?
──ババッ!
瞬間、そこにいた全員が跪いた。
自らの主を出迎える騎士のごとく。
その姿は喜びに震えているようにさえ見えた。
そして、俺は自分が死んで以来初めて見た、懐かしい顔と、この世界に来てからずっと一緒だった、あの声を、ようやく感じることができた。
『よくここまで、たどり着きましたね。勇者アキーラ…。』
「え、なにそれ。キモッ。」
『アンタ雰囲気壊すんじゃないわよ!!』
やっぱりクソ女神は、クソ女神だ!!




