第45話 ノンストップ聖女
壁にへばりついて動かないクソ聖女。
気配遮断全力でしてるのはわかるが、俺には見えとるぞ。
あ、俺が見てるの気付いたな。焦ってる焦ってる。
「おい、わかってるから早よ出てこい。…怒らないから。」
民家の壁にへばりついたままこちらを見つめてくるクソ聖女。
はよせい。
「ほ、ほんとですか?…っていうか、ほんとに見つかってる。」
諦めたのか、スッと気配遮断を切り、返事をするクソ聖女。
「自分で言ってただろ、気配感知あると見つかるって。」
「あー、なるほど。アキ様も気配感知持ちなんですね。しかも高Lvの。」
「それ以上言うつもりはないぞ。個人情報だからな。」
「個人情報はわかりませんが、秘匿するのは当然ですね!」
うむうむ。常識があってよかったよ。
「それじゃあ気を取り直して、教会に向かいましょう!祭壇は最上階です、遠いですよ〜。ガンバロー!!」
「おー。」
これで何もなかったらキレるぞクソ女神。
そんなこんなで、フレイと作戦会議だ。
目的地は街の中心にある塔、教会本部の最上階にある女神の祭壇。
今俺達はそこから離れた街の外れにほど近い路地裏で息を潜めている。
教会本部へ続く大通りには教会騎士が巡回している。
…いやこれ、詰んでない?どーすんの?
「おやおやおや!?アキ様、ご不安ですか!?」
ええ?なんなんもう。誰のせいやねん。
お前だよお前!
「…なんか策があんの?」
「ふっふっふっ!私がどれだけここで騎士さん達と追いかけっこしてると思ってるんですか!!ラクショーですよ、ラクショー!!」
自信満々だ。根拠が残念だけど。
ここの騎士さん、こいつのせいで苦労してるんだな…。
俺はあんたらの味方だぜ。
「…ほんで?具体的にはどーすんの?」
「簡単です!大通りを通れなければ、別の道を行きましょう!!」
「ええー、まさか地下水路とか言わないよね?臭いのイヤだよ。」
「ノンノン!一度試しましたが、臭いが服に付いてモロバレです!あれは最終手段ですね。」
もう試してんのね、ほんとに騎士さんが可哀想になってきたぞ。
「つまり、どこを行くんだ?」
「上です!」
「うえぇ?」
上…って、家の?
「簡単です!こうやって、こう、こう!」
そんなことを言いながら、民家の壁のちょっとした窪みや窓枠を器用に
掴みながらひょいひょい登っていく聖女。
忍者かな?
「さぁ!アキ様も、来てください!!」
えぇ…、うーん、でもそれしかないか。臭いのはイヤだしな…、しゃーない!
「よっ!」
この1ヶ月鍛えた身体強化で、屋根の上に飛び乗る。
別にこれくらいなら、よじ登る必要すらないのだ。
まだちょっと怖いけど。
「す、すっご〜い!!さすがアキ様!やはり、かなり、お強いんですね!」
「え?ああまぁ、うん?俺ならね?これくらいはね?」
あははははは!気持ちええ!!
ゾフィーも褒めてくれるけど、また違った良さがあるね!!
「それじゃ、行きましょうか。気配遮断は切らさないでくださいねー!」
そういいながら消えていくフレイ。
おっと、俺も見逃さないように付いていこう。
家を飛び移りながらしばらく進むと、ようやく教会本部前までたどり着いた。
…たどり着いたけどさぁ。
「こっからどーすんの?」
教会本部は、街の中心。
もちろん周りは大通りが合流する地点として、ちょっとした広場になっている。
つまり、飛び移る屋根は、もうない。
「まぁまぁ、ここまで安全にこれたんだし、いいじゃないですか。」
うおん?すんごく不穏な言い方だぞぉ?
「あのさぁ、それってさぁ、つまりさぁ。」
「ここからは実力行使です!!とっつげーき!!」
「嘘だろおぉぉぉぉ!!?」
俺の腕を掴み、ちょっとの躊躇もなく屋根から飛び降りるフレイ。
慌てて受け身を取り、周りを見渡す。
騎士騎士騎士騎士騎士…、見渡す限りの騎士だらけ。
その中の一人と、目が合う。
………、えへへ。
「いたぞぉ〜!!聖女様だぁーー!!」
「ですよねぇ!」
大声で仲間を呼ぶ騎士さん。
フレイを見ると、すっごい笑顔だ。
しばくぞ。
「さ!逃げますよ!アキ様!!」
「騎士が探してるのお前だろぉ!!?お前が一人で逃げろよ!!」
「……、きゃー!!私を攫った男があああ!!もがっ」
「お前いい加減にしろよぉ!!」
慌ててクソ聖女の口を抑えるが、もう遅い。
さっきまでヤレヤレ顔だった騎士さん、顔がマジだ。
「……おい、貴様。その汚らわしい手を離せ。さもないと…。」
「ほら!はやく!逃げないと!!ほら!ほら!!」
あああああ!!もー!!!
「こ、の、クソ聖女ーーー!!」
「あ、逃げた!逃げたぞ!追えーー!!決して逃がすなーー!!聖女誘拐犯だ!見つけてボコせ!!」
クソ聖女を肩に担いで一目散に逃げ出す。
「なんで俺が指名手配されないといけないんだよぉ!!」
「あ、アキ様!?お尻!お尻触ってますよ!めっ!」
「うるせぇ!それどころじゃねぇだろ!!どこ行けばいいか教えろ!!」
「ええ…、もう、ほしがりさん☆」
「しばくぞ!いいから早く言え!」
「え〜、冗談なのにぃ!ぶー!…じゃあ軽ーく、教会一周しちゃってください。裏の方に、コソッて入れる秘密の入り口があるので。」
秘密の入り口ぃ?なんでそんなん知ってんだ?
「よく使ってるので。」
「やっぱり常習犯…、大丈夫?バレてない?」
「今まで一度もあそこで止められたことないので大丈夫です!!ゴーゴー!!」
お前楽しんでるだろ!
ごめんよゾフィー、これしばらく戻れねぇわ。
場所は変わり──
宿屋、酒場のテーブル
「……へくちっ!ずず、風邪かなぁ?アキーラ君遅いなぁ。また一人でなんか楽しいことしてんのかなぁー。……ん?」
バタン!!
「失礼!!ここに聖女様を攫った誘拐犯は来なかったか!?黒髪黒目のへらへらしている怪しい男だ!!見てない!?わかった!失礼する!!」
バターン!!
かなり慌てた様子で、教会騎士だろう男が出ていく。
「今の特徴、どう考えても…アキーラ君だよねぇ。はぁ、やっぱ一人にするべきじゃなかったか…。」
そう言った後、イスにかけたコートを羽織り、宿屋を出るゾフィー。
「保護者として、回収に行かないとね。」




