第43話 聖女フレイ、いっきまーす!
「はわぁ、勇者様はアキーラ様と仰るんですねぇ。」
「その様っての、やめてくれない?」
「…では、アキ君と呼べば?」
「距離感ピーキーすぎない?間ないの?」
「では、アキ様で!!」
「ええ…、うーん。まぁ、それでええや。」
あの後、お互いに改めて自己紹介しなおした。
彼女は当代の聖女、その名もフレイだ。
ヤを取っただけやんけ。
手抜きか?ヤ抜きか。
どうも聖女に任命された者は、皆その名を名乗るらしい。
罰ゲームかな?
「そ、それで、ゆ、アキ様は、何用で神都へ?」
「あー、うー、えー、おー、んー…。」
言って良いのかなぁ?絶対騒ぐよなぁ。
「まぁええか。女神様に行けって言われたんだよん。」
「まぁ!!そ、それではやはり!神託は本当なんですね…!!ああ、女神様…。」
それ毎回やるん?テンポ悪ない?
あいつもテンポ悪いの嫌いだぞ?
「そんで、その女神様はなんて言ってたの?」
「あ、そうですね。私が受け取った神託を、お伝えしますね。」
今こいつ、『私が』って──
その時、周囲の空気が一変した。
薄暗い路地裏だってのに、まるで神聖な儀式を行う聖地かのような、そんな神々しい雰囲気を纏っている。
『黒髪黒目の男が、神都を訪れる。その者を丁重に迎え、女神の祭壇へと連れてきなさい。──色々文句言うなら、引っ張ってもいいわよ。』
なんだそれ、やっぱクソ女神だな。
「ふぅ、神託は以上です。」
「……ありがとな。」
「?…どういたしまして!私は女神様の声をお伝えしただけで、大したことは出来ませんが!」
……本気っぽいなぁ。
うーん、これが宗教なの?
フレイヤ、やりすぎじゃない?
「それでは、早速行きましょうか!」
そう言いながら、フレイは俺の腕を掴む。
「は?早速?行くって…。おおおお!!」
グイグイグイグイ!!
そう言って彼女はすごい勢いで引っ張ってくる。
「ぐぬぬぬ…。ほ、ら!!早く!!祭、壇にぃ!!行きますよぉ!!」
「ちぎれるちぎれる!!服破れる!!」
文句言うたらちゃうんかい!!
丁重どこいった!
「待て待て待て待て!!行くから!自分の足で歩かせて!」
パッ
あ、話は聞いてくれるのね?
あ、でも話聞いてねーや。めっちゃこっち見てる。
目が一切笑ってない…。
「…?どうしたんですか?行きましょう。」
「いや、仲間が宿で…。」
「行きましょう?」
「いや、連れが待ってて…。」
「行かないんですか?」
「いや、だから…。」
ガシッ
ええ…。
グイグイグイグイグイグイ!!
「い〜き〜ま〜す〜よ〜!!神託なんです!」
「わかった!わかったから!行くから!行くから待って!」
ピタッ
…止まった。
あ、でも離してはくれないのね。
「さぁ、行きましょう!!」
すんごい笑顔。
守りたい?この笑顔。
今んとこビミョーだな。
あ〜、ゾフィー心配してるよなぁ。
「なぁ、宿に寄ったりは…。」
「もちろんダメです!」
だよねぇ。
腕を組んだまま、二人で歩く。
ゾフィーの時とはエライ違いだ。
何がって?腕の感触とか、…色々ね?
ゾフィーのはご褒美なんだよ。
リンリンテンションアゲアゲ。
…もういいや、早く行こ。
ん…?なんかあの人たち、こっち見て指差してない?
「…なぁ、あの御方って…、聖女様じゃ?」
「あぁ…、多分間違いない…。」
んー?なんだぁ?
「…っ!まずい!アキ様!ちょっと走りますよー!」
「は?へ?なんでぇぇぇぇ!?」
俺の腕に自分の腕を絡めたまま走り出すフレイ。
ぬおおおお!
いいけど、いいんだけどさぁ!
せめて手を握るとかにしない!?
ダメ?




