第37話 ぐりぐり、やわらか枕
「ギュルルウァァァァァァァ!!!!!」
「うるさいうるさいうるさい!!」
もー!やる気満々じゃん。
ウソだろ?
出会って5秒も経ってないよ?
…って、マズい!!
何も見えないが、何かが飛んでくる。
気配感知は…反応なしか!心眼!!
心眼を強く意識し、見えない何かを切り裂く。
激しい衝撃に体が吹っ飛び、木に体をしたたかにぶつける。
「うぐ、マ、マジかぁ。」
グリフォンさん、ちょー強くねぇ?
俺、勝てるかなぁ?
「キュルルルルル…」
こちらを威嚇しながら、距離を取るグリフォン。
うーん、正解。
俺、遠距離攻撃無いからね。
アウトレンジからさっきのやつ連発されちゃうと、なーんにもできない。
「…なのにしないってことは、負担大きいのかな?どう?あってる?」
「キュラアアア…」
意思疎通できてんのかな?
でも、なんか、こいつの立ち方、違和感あるなぁ。
うーん、なんか庇ってる?
…泉、か?
行かせなくない?
なんで?
確信を得るためにグリフォンにではなく、泉に近づくように遠回りに走る。
「キュラアアアアア!!」
やっぱりか!
あそこに何がある?
よく見ろ!
泉を凝視するが、距離もあってよく見えない。
もうちょい近付かないとダメか?
【遠視Lv1を取得しました】
「っ!ありがとよ、クソ女神!愛してるぜ!!」
見ろ見ろ見ろ!!何がある!?
あそこに何が──
「ああ、そういうこと。お前結構わかりやすいな。」
こいつの拘りを理解した俺は剣を収める。
もう、戦う意味はない。
「おい!グリフォン、このやろー!俺はお前と戦うつもりはない!あんだすたん!?」
「キュルア?」
何?って言ってる?
知らんけど。
「いいか!俺はお前の獲物を取るつもりはない!ただ!たーだ!ツノだけ!ツノだけちょうだい!それだけ貰ったら帰る!」
そうなのだ。
こいつ、羊を泉に沈めてた。
冷やすためかな?頭いーね。
…じゃあ、俺の言ってることも、わかるよな?
「キュルル…キュルア!」
グリフォンは警戒を解いてはいない、解いてはないが、さっきよりは落ち着いた様子で羊のもとへ向かう。
前足で羊を抑え、クチバシでツノをへし折り、こちらを向く。
「キュルア!」
「うおっと、サンキュー。」
「キュル」
「わかったわかった。帰るよ。じゃーな。」
さっさと出ていけ、と言うかのように鳴くグリフォンに別れを告げ、泉を後にする。
しばらく歩き、ようやく肩の力を抜く。
「死ぬかと思ったぁ〜。なにあれ、やっばぁ。」
つーか、言葉通じてたよな?鳥頭なのに!
明日行ったら忘れてたりして。
「まぁ、しばらくはこういうのはごめんだなぁ…。」
そうやって、独りごちるのだった。
「う、ううう、アレックス…!ううう…。」
こういうシーンは慣れねぇな。
ま、慣れたくもないけど。
「あ、ありがとう、ありがとう。アレックスを連れてきてくれて…、これ、達成票だ。持ってってくれ。」
「ああ、トーマスさん。…元気でな。」
そういって、返事を待たずに振り返る。
「…はい、それでは確かに。トーマスさんの達成票を、確認しました。それではこちらが報酬の1000イェンです。お確かめください。」
「ありがとうございます…。」
今日はもう店仕舞いだ。
流石にグリフォンと切った張ったはキツイ。
早く帰って風呂入ろ。
ゾフィー入れてくれてるかなぁ。
ガチャ
ドアを開けて、部屋に入ると、ゾフィーはソファに座って本を読んでいた。
珍しい、メガネしてる。
「おや、アキーラ君。お疲れ様。依頼、どうだった?」
何故だろう、声を聞いたことで安心したのか、ようやく生きて帰ったことを実感したのか、体に上手く力が入らない。
俺はそのまま、ゾフィーの座ってるソファになだれ込む。
「おお!?ど、どうした、アキーラ君!どうした!?」
動揺するゾフィーを尻目に、そのまま太もも目掛けて体を倒す。
甘やかしてくれ!俺を!
「ひざ枕して!死にかけた!一級建築士め!」
「ええ?…もう、どうしたのさ。仕方ないな。ヨシヨシ。」
こうやって、俺はようやく、生きて帰ってこれた事を実感したのだった。
ゾフィーのふとももやわらかぁ〜い。




