第28話 何も起きないはずもなく
この街一番の宿、と言われて案内された俺たちを、待っていたのは、摩天楼もかくやと言わんばかりの豪華な宿だった。
魔法だろうか、ギラギラと光る色とりどりの灯りに照らされたこの宿は、周りのどんな建物にも引けを取らず堂々としている。
「こ、ここが俺たちの格に合う宿…。」
「確実に一泊5000イェンはするけど、お金持ってる?」
逆に聞きたい。持ってると思う?
こちとら宿代に困ってお前の依頼受けてんぞ。
「もちろん無い!!」
「ふふ、だよねぇ。じゃあどうする?」
「貸して!いつか返す!」
「はは、いいよ。ちなみに結婚すれば、帳消しだよ?」
「かんがえとく!!」
未来の俺!がんばれ!!
「だ、か、ら!!何でダブルが空いてないんだ!!」
「で、ですので、本日はもう埋まっておりまして…。」
受付のおじさん、困ってる。リンリンわかるよ。
あとゾフィーちょっとこわい。リンリンびくびく。
「なぁゾフィー、別にツインで良くない?何なら他の宿でもさ…。」
「何言ってるんだいアキーラ君!今日は2人の距離を縮めるチャンスなんだよ!?君はみすみす逃すというのかい!?この美人を!!正気か!?」
うん、その自信は、リンリンすごくいいと思う。
でもちょっと、前面に出過ぎかなぁ。
「まぁまぁ、この後も旅は続くんだし。とりあえずはツインでいいじゃん。早く部屋いこーぜー。」
「…まぁそれもそうか。じゃあ君、一番いいツイン一部屋。とりあえず10泊で押さえてくれ。」
「か、かしこまりました!」
あれぇ?10泊って言った?一泊5000イェンだから、借金5万イェン?嘘でしょ?この一瞬で?
「そ、それでは、お二人10泊、最高級のデラックスゴールデンエクスペンシブツインで、1泊15000イェンですので、お二人合計30万イェンとなります。」
15万イェンやんけ!!返せるかぁ!!
「ニヤリ。」
あー!!あああああ!!今笑った!こっち見て笑った!!わざとだ!!
「ずっと一緒だよ。」
「ひぇぇぇ。」
そして部屋に移動する2人。
大人の2人、もはや邪魔するものもない。
何も起きないはずもなく。
「ほら!遅くなってきてる!!さっきの勢いはどうした!!」
「ざ、ざん、しん、ざん、しん…。」
「ちゃんと素振りしないと、カウントされないよ!!Lv上げたくないの!?ほらほら!!こいこい!!」
「ざ、ざ、ざん、しん、し、死、死ぬわ!アホ!」
「何言ってんの!まだまだ夜はこれからだよ!」
「夜だからだよ!夜は寝るの!寝るの!ふつーは!!」
「ええ…、じゃあ夜に取りやすいスキルはどうするのさ。」
「別日にすんだよ!リスケしろリスケ!せめて水飲ませろ!!」
「極限状態の方がスキル発現しやすいって論文が…。」
「誰が!最高級の!宿の部屋で!極限状態になるんだよ!!人の心!人の心忘れないで!!」
「うーん、いまいち納得できないけど、そこまで言うなら…。」
「ほら!じゃあもうこれで終わり!残!心!残!心!」
【剣術Lvが4に上がりました】
ええ…、このタイミングであがるのぉ?
「待って待って待って!!今上がったよね?剣術Lv!!4!?4になった!?」
「えーと、うん。はい、てへ。」
あれ、急に黙り込んだぞ。なんだ、俺の才能(1)が怖いのか?
「ど、どしたん?お腹痛い?」
「アキーラ君、念の為に聞くけど、ウソはついてないよね?」
「え?ついてないよ?なんで?」
「うーん、ほんとっぽい。アキーラ君知らないみたいだけど。スキルLvってある程度法則性が見つかっててね。素振りで上げる場合、前のスキルを上げるのに必要な回数の1.5倍やらないといけないんだ。わかる?」
え?えーと、つまり?
「要するに、スキルLvを1から2に上げるのに必要な回数は500回、アキーラ君の場合はね。その場合2から3に上げるのに必要な回数は750回になる。その次は1125回だね。」
「?」
「ふふふ、何その顔。でもアキーラ君、剣術Lv3になってから、今までで、そんなに素振りした?」
「してない…かも?」
「うん、私もそう思う。でもこれ、ちょーっとヤバいかも?」
「マジで?モルモット?」
「マジだねぇ。発表はしない方が良さそう。少なくともアキーラ君が私程度払いのけるくらいにならないと無理かなぁ。」
ええ?それ一生無理じゃない?
「多分、私の考えが合ってれば、割とすぐ、かも?」
マジで?リンリン改造計画、始動しちゃう?
「……これはちょっと予想外だなぁ。絶対逃がしちゃいけないかも。」
リンリン本格的にロックオンされた?
詰んでない?大丈夫?




