第21話 曲線美で機能美な装備
グッモーニン!
初めて女性の家に泊まったのに、俺そっちのけでずっと喋ってたよ。怖いよ。
「…つまり、私の存在が影響した可能性?であればこの部屋の魔術的な強化が影響している可能性も考慮すべきか?…そうだ!昔心眼を取った達人の環境を再現してみればいいのか!!確か彼はドラゴンと戦ってる時に取得したんだったな…。ぐぬぬ、このへんで出るドラゴンはワイバーンぐらいだ…、あれじゃあ弱すぎる。完璧な再現は難しいか…。」
ワイバーンって弱いんだ。
(強いわよ。Aランクよ)
スライムは?
(あれはF以下ね)
今ならさすがにラクショーだな!
(そうね。今のアンタなら普通に勝てるわよ)
やったぜ!やっぱり成長期だな!俺はこれからの男だ!
(そうね。頑張ってるわよ。その調子でね)
なーんか気持ち悪くねえ?何?悪いことしたの?
正直に言って?
(なんでよ!普通に褒めるくらいするでしょーが!!)
それが怪しいんだよなあ。日頃の行いだ!
「うーん、残念だけど今はこれ以上は詰めきれないか。とりあえず思いついた仮説メモしとこう。メモメモっと…。」
お、終わったか。
「おーい、ゾフィー。今日はどうする?俺はどっちでも良いけど。
「ああ、アキーラ君。すまないね、相手もせずそっちのけで。自由行動でも良いかい?さすがにちょっと疲れたから、今日は休むとするよ。宿のことは気にしなくて良いよ。ここを自分の家だと思ってくつろいでくれ。ふふ、いつでも帰ってきていいからね?」
そう言って、館の鍵を渡してくれるゾフィー。
おお、なんかめっちゃ気に入られてる。ラッキー。これで宿代問題解決だ!!
「それじゃあお言葉に甘えて、今日はちょっと出てこようかな。」
「ああ、そうしてくれ。それじゃ、私は寝るとするよ。おやすみ。」
「ああ、おやすみ。じゃあな。」
ゾフィーに別れを告げ、館を出る。
さーて、どうしよっかねぇ。とりあえず宿の心配をしなくて良くなったので、急いで依頼をする必要はない。
うーん、一回エルザに顔出しに行くか。まだ剣で何も切ってないけど。
(アンタそれ逆に怒られない?大丈夫?)
正直わからん。刀の錆にされたらどうしよう。
(なんの心配してるのよ…)
そんなこんなでエルザの店に着いたぜ。
耳を澄ますと、槌の音が聞こえる。
カーン、カーン、と一定のリズムだ。
新たな武器を生み出す喜びに震えるような、そんな音だ。
何となくだが、機嫌が良さそうな気がした。
「邪魔するのも悪いし、ちょっと入って店の様子でも見てよっと。」
(入らないという選択肢はない訳ね)
そりゃもう、今日はエルザにちょっかいかけに行くと決めてるからな。
エルザー!アキ君だよー!
(悪気はないのよねぇ。ないんだけどなぁ…)
おっすおっす!
ガチャ、カランカラーン…
おお、鈴ついてたんだ、気付かんかった。
(そりゃアンタ、前はあんだけ大声出しながら入ったからでしょ。だからエルザ怒ったんじゃない)
そういえばそうか。黙っとこ。
ここは美術館、ミュージアムなのだ。ん?ミュウジィアムか?まぁいっか。
ほら、この剣とかそれっぽい。
おお、美しい曲線美、まさに機能美。装備したい。武器だけに。ぶいぶい。
「お客さん?それにしては静か…ってアキーラ!来てくれたんだね!宿に行ってもいないから街中探したんだよ!来てくれたってことは武器のメンテナンス?」
なんか今怖い発言なかった?
(気のせいでしょ)
ええ…、ほんとにぃ?
まぁいっか。
「うーすっ、エルザー。あなたのアキ君がきたよー。」
「もう、適当なこと言って。とりあえず剣見せて!」
そう言いながら、腰に差した剣を奪い取るエルザ。期待に満ちた目をしてる…。
(あらー)
「どれどれ…、って使ってなくない!?いや、何も切ってないだけ…か。…持ち手に、血が滲んでる。もしかして素振りしてた?これで?」
「あはは…、剣術スキル持ってなくてさ。なんとかLv3までは上げたんだけど。」
「アキーラ…、普通は木剣でするもんだよ。真剣でやるなんて、キツかったろう?」
そうなん?
(そうみたいね)
「知らんかったわ。スマンね。でも俺は、初めてがエルザので良かったよ。」
「知らなかったって、あんた…。それに、初めてがエルザで良かったって…それってもう。いやいや落ち着けあたし。今のは剣の話!剣の話!」
ドゴォ!
なんか急に壁殴り始めた。なに?怒ってる?
(怒ってはないわね。怒っては)
ええ…、ちょっと揺れてない?大丈夫?
(あの子も身体強化高Lvみたいだし、自分でもわかってるでしょ。この工房も魔術で強化されてるわよ)
そんなら安心なのか?
(まあ矛先がアンタに向いたらヤバイわね)
うっそぉ!天罰は!?
(これは自業自得だからやらない)
「ふぅ、ふぅ、落ち着け落ち着け…。よしっ!アキーラ!この剣せっかくだし、一度砥ぎ直しておくよ。今日の予定は?まだ午前中だけど、外行くの?」
「ああ、いや…うーん。今日は出ないかなあ。とりあえずギルド行って、リサさんに依頼の報告してくる。」
「またリサなの?アンタあんまりしつこいと嫌われるわよ。」
「なんでだよ。何かリサさんのカウンターいっつも空いてるから、行きやすいんだよね。他に理由はないよ?」
ほんとだよ?
「…いっつも空いてる?リサって結構人気あったと思うけどな。まぁ、あたしも最近ギルドに行けてないけど。」
「いやほんとほんと、やっぱリサさんの歴戦の強者オーラが、他を寄せ付けぬバリアーとなってるんだよ。でもそこを貫くのが俺な訳だ。」
「うーん…?リサはかなりの引っ込み思案だよ?前髪でいっつも目元隠してるし。」
「へ?リサさんはポニーテールだぞ?金髪の。」
「…あれ?リサって茶髪じゃなかった?髪色変えたのかな?」
………なんかすげー嫌な予感がする。
「…ごめん、エルザ。俺そろそろ行くわ。」
「あ、ちょっと、お茶くらい飲んできなよ!もー!」
俺はあいさつもそこそこに、エルザの工房を後にした。
急ごう。冒険者ギルドへ。




