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嵌められた。気づいた時にはすべてが遅かった。
「うちの領で栽培禁止の植物が見つかるなどあり得ない!」
「しかし、山奥で見つかった。登山家が見つけてわざわざ通報してくれた」
「自然に生えたものでは?」
「あれほど大量に? 明らかに整備されていた。これからもこっそり栽培して国内ではなく他国に売ろうとしていたんじゃないのか」
「絶対に違います! そもそもあんな山奥、土砂崩れがあってしばらく通れなかったはずです!」
栽培禁止の植物がうちのメイズ男爵領の山奥で見つかったのは本当に突然だった。
最近分かったことだが、その植物には鎮痛作用があるものの依存性もあり、乱用すれば幻覚症状などが出て廃人になるのだ。以前はウワサレベルだったが、そのようにしっかりと研究結果が出た植物だ。
そのため以前までは栽培がバレると罰金刑だったのだが、今から約一か月後にはより重い刑が課されるよう法改正されたのだ。
父である男爵の弁明は何の意味もなかった。うちはそんな悪いことしていないのに。そんなことしていたのなら、もっとうちは裕福だろう。
「うちではありません! きっと誰かがあそこで秘密裏に栽培していたんだ!」
ちょうど隣の伯爵領との境界ギリギリにある山。その山の奥深くに一面、栽培禁止の植物は生えていた。国によって決められた場所でしか栽培してはいけない植物なのに。
真っ先に思い浮かんだのは隣を治めるソーン伯爵に嵌められた、ということ。あそこは王太子の新しい婚約者に娘が選ばれそうな家だから。
後ろ暗いことはいまのうちに隠しておきたかったのだろう。それか、うちの山奥に隠して気付かれなければ他国に売ろうと計画していたのか。うちからはしばらく土砂崩れで通れなかったが、ソーン伯爵領側からなら通れたはず。
結局父が栽培に関与していた証拠はないものの、男爵領で起きたことなのでかなりの額の罰金を科せられた。新しい重い罰則が適応されなかったのが唯一の救いだが、見せしめのような高い罰金額だった。
調度品を売って親戚や知り合いから借金をしても、罰金の額には届かなかった。アメリアと金持ちの老人との結婚も選択肢にあったが、タイミングが悪かった。
問題のあった王太子の元婚約者様がとある有名な老人のところに嫁いだばかり。足りない金額を出してくれそうな、若いだけの妻を求めている家は他になかった。そもそも当時アメリアはまだ十歳で、若いというより子供だった。
母を娼館に向かわせるわけにもいかず、跡継ぎでもなんでもないアメリアが娼館に売られることになった。
礼儀作法と勉強はかじっていたおかげか、比較的いいお値段でアメリアは売られたようだ。迎えの馬車が来て、さめざめ泣く父母と事態を分かっていない幼い弟に見送られて金の入った袋と引き換えに正真正銘ドナドナされる乗り物に乗りこんだ。
覚悟は決めていたはずだ。何度も両親とも話し合った。これしかお金を手に入れる手段はもうない。お金が払えなければせっかく受け継いできた家は没落決定なのだ。
分かっている。これはしょうがないことだと。でも、馬車の中で涙が止まらなかった。別に娼婦が嫌なわけじゃない。彼女たちだって必要な仕事だから存在している。
でも、うちの男爵家は何も悪くないのに。何も悪いことなどしていないのにどうしてこんな思いをしないといけないんだろう。アメリアにはこれから輝かしいまでいかなくても、こんな風じゃない平和な未来が待っているはずだったのに。




