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ナデサセテ・コントラクト  作者: なでり
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第三十一話 長期戦、そして倒れる

前回までのあらすじ!

ダンジョンの街に行こうとしたレオラさん、道を間違えて反対側へ! そこは強敵たちの巣窟。

何とか突破したレオラさん達の前には人の言葉を操るオーク達。

彼らを倒すと試練なるものの存在を知る事になる。折角ならと先に進み怪しい洞窟に入るレオラさん。洞窟の最奥には、まだ人が来ないだろうと油断していた闘神と技神が酒盛りをしていた!

その後、ちゃんと試練を受けられることになったレオラんの運命や如何に。


「そうじゃのぉ、折角ワシが居るのだし、試練レベルは調整してやろうかの、なにせ第一号じゃからの……その代わりあれじゃ、此処で酒盛りをしとったのは他の輩には内緒じゃぞ? これでも名前と威厳で売ってるからのぉ、イメージが変わるのは嫌なのでな」

「私としては、面白そうなのでそれでお願いしたいです」

「よろしい! では約束じゃ……はっ」


 闘神が此方に手を向けると、温かい風が吹いて来て、そして私を突き抜けて去っていった。


「これで神以外には話せなくなったからの、ぽろっと出てしまう事も無いのじゃ」


 へぇ、そんなことまでプログラム出来るんだ、VRMMOは着々と進化してるんだね……凄い。


「俺は傍観させてもらうぜ、帰るのもつまんねーしよ」

「好きにせい」

「分かりました」

「うむ、では詳しい説明じゃな……お主は片手剣と刺突剣を使うのじゃな」

「そうです」


 試練を受ける前までに使っていた武器での試練という事かぁ、投げナイフもっと早くに買っとくんだったなぁ……。


「試練レベルは、入門、初級、中級、上級、超上級がある。超上級を超えたものにしか教えられない試練もあるが、今のお主では超上級を受けさせることは出来ん。これは超上級の試練の場でなければ出来ないからの」

「本来は、此処で入門のみ行えるのですか?」

「そうじゃ、各地にそれぞれの級に適した場所があってな、それを達成していくことでボーナスや、ワシが気に入った者には加護を与えておるのじゃ」


 成る程、じゃあ此処はルドナの物理攻撃バージョンって事だね。となると、貰える称号は技能成長系かな? それはそれで嬉しいけどね。【剣術】のレベルが上がると、それだけで剣の扱いが楽になるし、捌くのもやりやすくなる。


「上級までなら受けることが出来るようにするからの。因みに出てくる敵は全てゴーレム系じゃ。魔法やスキルを使うことが出来なくなるでな、良く考えるのじゃ」

「一度受けて失敗したらやり直し出来ますか?」

「それは無理じゃ、やり直すのは入門からじゃの」


 じゃあ上級は止めておこうかな……。うーん、でも初級くらいの保身の気持ちなら入門でいいしなぁ。じゃあ間を取ろうかな。


「中級で」

「中級でいいのかの? 今のお主のレベルでは突破できるとは思えんのじゃがの」

「そしたらまた入門をクリアするまでです」

「そうか……武器や防具は試練が始まったらこちらの指定した武具が装備状態になる。癖の無い武器じゃから安心するといい」

「分かりました」

「失敗しても此処からやり直しになるでな、異界人の言う死に戻りという奴にはならぬぞ」

「それは有難いです」

「フィールドは此処じゃ」


 闘神が一つ手を叩くと、謁見の間の王座より下が薄い青で囲まれる。範囲を見てから闘神を見ようと振り返ると姿はそこになく、いつの間にか技神と共に王座の近くに立っていた。


「そのフィールドに入ったら開始となるのじゃ、気を引き締めると良い」

「分かりました」


 モフモフ達は帰還させようか悩んだけれども、このまま待機してもらうことにした。そっちの方が私のモチベーションも上がるしね。よしよしと撫でてからいざフィールドの中へ。

 入る手前でディスプレイが浮かび上がる。内容は、武器と防具を選択してくださいとの事だったので、片手剣と皮鎧選択。


 フィールドに入ると、薄い青が濃く変わる。

 防具は結構しっかりとしたものだ。でもヘルムは邪魔のなので外す。

 再度ディプレイが現れて、準備が出来たか問うてくるので、完了を選択。


 目の前に現れた敵は、全身鈍色の金属で出来た騎士風のモンスターだった。ゴーレムと言っていたことから、パワーがあるのは当たり前だとしても、速さも有りそうだ。

 敵の得物はロングソード、両手で持つタイプ。攻撃力が更にましましって感じかな。私は一撃喰らったらアウトだね。

 ……最近そんな敵としか戦ってない気がするのは、運が悪いから、なのかな? 日頃の行いはそこまで悪くないと思うんだけどなぁ。


 相手が構えたので私も構える。といっても自然体だけどね、結び合って勝てる相手じゃないのは百も承知の上。いつものように一点集中の避け重視で行くしかない!


 気合を入れてから、左に飛び跳ねて避ける。背筋にぞわりと悪寒が走った時は逃げの一手。これは道場で培った事。

 相手は私の居た場所に剣を振り下ろしている。思ったよりもスピードが速い!

 もっと集中しなきゃ。相手は無機物、筋肉の動きはない。でもこれはゲーム、ごり押しでしか行けないなら兎も角、そうじゃないなら何かしら突破口があるはず。魔法は使えない、剣一本で何とかしないといけない。でも私には不可能じゃない、だってもっと酷い敵とだって戦って来た経験があるから。


 剣を中段に構えて、左足を少し下げて、悪寒に従い回避。それを五回ほど繰り返す。

 今度は回避の距離を少し小さくして、ステップを入れて相手の後ろへと回る。しかし敵は剣を回して斬りかかって来る。体制を低くすると蹴りが来たので思いっきり後ろに飛んで回避。上に飛ぶのも悪手だろう。

 

 再度斬りかかってきたところを今度は逆に懐に入るようにして回避。そして首元に一閃食らわせて即退避。私の居たところには拳があった。

 同じ流れで他の場所も斬ってみたけれども、首と膝や肘もダメージが大きかった。ただ他の部分はダメージが小さいので、狙いはそこだ。

 何度か繰り返すと、懐に飛び込もうとしたところで相手がステップして下がったので直ぐに回避。学習機能もあるようだ。

 それならそれでいい、ただ固いだけの少し早い普通の相手だと思えばいい。いきなり後ろから気配もなく斬りかかって来る敵よりはましだしさ。




 視線は感じ無いけれども、相手の気配を感じる。

 もう何時間経ったか分からないけれども、しっかりと回避しながら相手の事を見続けた私は、何処とは明確に言えないけれども、何かしらの細かいアクションか、動かすためのプログラムの残滓か、そういう物を捉えて相手がどう来るのか分かってきた。

 途中で見せた突きは正直危なかったけれども、今迄とは違う気配がして大きく回避できたのが良かった。

 

 騎士風とは言ったけれども、実際は実戦優位の敵だ。殴るけるはもちろんの事、剣を一度投げてから襲ってくることもある。こういう敵に慣れていなかったら、直ぐにやられていただろう。

 HPバーはまだまだ残っている。でも、周囲の音は何も聞こえない、凄く集中できている。他の事を考えていても相手の動きを分析して動けている。それが証拠だ。

 これなら一日は軽く動ける。





 最後の一振りも無理せず抜くことが出来た。

 相手は粒子になって消え、私は剣を手放して膝をついた。

 相手のHPバーがあと少しまで減らした時、外装をパージして早くなるのは割とある事だけど、スピードが上がって防御力そのままは酷いと思う。


 息が切れているとか、疲れて脚が立たないとかそういう問題では無くて、全身から力が抜ける。なんとか保とうとした意識が切れてしまった。





 

 モフモフ。

 あぁ温い、暖かい、モフモフしてる、気持ちい。

 私天国に居るのね、分かる、分かるよー。


 あれ? でもその前まで何してたんだっけ?

 

 ……あぁ、試練を受けて、それで精根尽きてばたんきゅーしちゃったんだっけ。って事は上とか横とか顔とかに乗ってるモフモフは皆が私を守ろうとしてくれてるのか? 愛いモフモフ達め!


「むふー」

「起きたか」

「む?」


 モフモフから悲しくも抜け出してみると、闘神のお爺さんが此方を見ていた。


「覚えているかの?」

「覚えていますよ、ゴーレムと戦って勝ったこと」

「流石のワシも驚いたわい、それにしてもよく二日も戦っておれたな」

「二日も戦ってたんですか! 全然自覚無かったですけど」

「そうじゃったか、お主はあのゴーレムと二日ほど戦い、一撃も貰わぬまま倒し切ってしまったのじゃ。お主のSTRとVITを見て直ぐに終わると思っておったのじゃが、予測が大外れじゃ」

「大変でしたが、もっと大変な敵と何回も戦ったことがあったので」

「成る程の……」

「いやいや、それにしてもだろうがよ」


 その隣で呆れているのは技神だ。髭を整えるように触りながら、此方を呆れたと言わんばかりに目を細めて見てくる。


「よくまぁやれるもんだよな、俺は戦う事にはそこまで深くねぇがよ、お前はすげぇよ」

「ありがとうございます」

「では達成の褒美をやらねばならんの、先ずはこれじゃ」


<称号[闘神マジャルツアの加護Ⅰ]を取得しました>


「その加護は武術に関わる技能の成長が少し早くなる有難いワシの加護じゃ。技能成長促進中が付いとる……そして本来此処でクリアすると得る事の出来る物も渡そう」


<闘神の試練入門をクリアしましたので、【片手剣Lv1】【刺突剣Lv1】を自動取得しました>

<闘神の試練中級をクリアしましたので、称号[武の心]を取得しました>


「[武の心]は、物理攻撃上昇中が付いとる。本来ならもう少し険しい道を経て辿り着くべき場所なのじゃがな……まぁいいじゃろ。それにしてもお主は何故武技スキルを一つも持ってないのじゃ」

「剣はMP節約と、あと慣れているので持っているぐらいなのですが……最近はMP消費を恐れてそっちをメインに……」

「成る程の……ふむ、だが此処まで出来るお主を遊ばせておくのはもったいないのぉ……これかの?」


<称号[闘神の無茶ぶり見習い]を取得、それにより【はじめ】を取得しました>


 なんだこれ……。

 無茶ぶり見習いって何がどういう事なの? 無茶ぶりされてそれに応えていくの? それとも無茶ぶりを見習うの? 流石にそれは無いか……。


「その称号を持っとる物にたまにメールでお題を出すからの、それをクリアするとスキルがもらえるのじゃ。【一】はMPの代わりにHPを消費して強めの一撃を放つ技じゃな」

「おぉ、ポーションがあれば出し放題ですね」

「再発動時間はしっかりと体に覚え込ますと良いぞ」


 これはいい物を貰った。でも本来の私は魔法も使いたいわけで、こうなって来ると前衛に偏るなぁ、もっと魔法を使って行かないとね!


「大盤振る舞いだな、そうなると俺も何かやりたくなってくる」


 うむうむと考えながら髭を触る技神。貰える物は貰いたい派なので、此処は大人しく黙っていることに。

 それにしても、中上昇の称号が2つにスキルが3つももらえるって凄いなぁ。本来は、入門の、各武器のスキルしかもらえないんだろうし。というかあれ? 私刺突剣で戦ってないけどいいのかな? 

 あまり大声にならないように、闘神に少し近づいてこっそりと問うてみる。


「あの、私刺突剣で戦ってないのにいいのですか?」

「そんな事か、勿論良いぞ。本来はその武器だけじゃがな、あんな戦いを見せられて渡さぬわけにもいくまい? ワシですら勝てぬと思った相手に調子を崩さずに勝つというのは、それほどの事なのじゃ。お主はイレギュラーじゃな。レベル詐欺ともいう。経験がレベルにあっておらぬ、早々にレベルを上げてもっと修行するのじゃ」

「……わかりました、精進します」


 まぁご本人がいいというのだからいいよね。さて、技神はどんな物をくれるんだろうか。





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