第三十二話 ……わーお
「よし、これだな」
どこからともなく小さな巾着のような物を取り出した技神。
「俺も試練の場って奴があってな、生産に関わる称号や加護はそこでしかやれねぇ約束になってんだ。だから代わりに何がいいか考えていたがよ、これにするわ」
「これは?」
「その巾着はお前さん達が持ってるアイテムボックスと同じようなもんだ。アイテム袋の中に入ってる物が本命だぜ」
袋を受け取ってから、アイテムボックスの中へ。そして中の物を取り出す。
名称:おすそ分け地龍全身皮鎧(-/-)
☆69 品質:- 防御力:699
効果・説明
自動修復特大・HP自然回復大・物理攻撃力上昇中・STR上昇中・VIT上昇大・AGI上昇中
技神が手掛けた事により、本来6段階目の職から着けられる装備を、保有者を固定することによりその者のみ装備可能にした一品。譲渡及び破棄不可能。ロスト、スティール等保有者の手から離れる事は無い。
製作者:技神キラクマン
保有者:レオラ
名称:最老連の手編みフード付きローブ黒(-/-)
☆69 品質:- 防御力:699
効果・説明
自動修復特大・MP自然回復大・魔系統攻撃力上昇中・INT上昇中・MDF上昇大・DEX上昇中
技神が手掛けた事により、本来6段階目の職から着けられる装備を、保有者を固定することによりその者のみ装備可能にした一品。譲渡及び破棄不可能。ロスト、スティール等保有者の手から離れる事は無い。
製作者:技神キラクマン
保有者:レオラ
……は?
いやいやいや、は?
「もうちょっとランクの高い物をやりたかったんだがよ、レアリティ70以上は十二神にまだ与えないように言われてるからな、仕方なくぎりぎりだぜ」
「いやいやいや、上等過ぎませんか?」
「お前、どうせ装備とか頓着しないタイプだろうがよ、それ着とけばある程度まで行けるっての。そこまで行きゃ俺の塔にも辿り着くだろうし、そしたらまたいい物くれてやるよ」
「闘神様なら今の戦いでってわかりますけど、何故?」
「……」
「こいつは割かし面倒見がいいからの、ルドナリスの事でお主に恩義でも覚えたのではないのかの」
「このご時世ルドナリスの加護持ってる奴なんてお前以外いねぇからな。俺等はルドナリスに負い目がある。だが神がルドナリスを助ける事は出来ない。俺達がもっとしっかりしていればと思う事もあるがよ、折角ルドナリスを開放させようって奴がいるんだ、手を貸さない道理はねーよ」
「ルドナの事好きなんですか?」
「残念ながら神にそういった情念やら欲やらはねーよ、ただ同じ神として新米を生贄のようにしちまって気分が悪いってだけだ」
照れることなく真剣に此方を見つめてくる技神は、やはりどこか寂しそうにも見えた。
でもうちのルドナはあげませんよ! ルドナは私のお家でお茶会をするという私の勝手な予定があるのだから!
はぁー久しぶりにルドナなでなでしたいなぁ、何処かに無いかなぁルドナの祠。ファスタの森の中に有っても探すの大変すぎるしなぁ。それに、そんな近場に置くかどうかも分からないし。仕方ないから自分で探しつつ情報待ちなんだよね。
「……それじゃあ有難く貰いますね」
「そうしてくれ」
「うむ、ではワシ等はそろそろ行こうかの、お主の様な物が現れないかどうかもう一度今度はしっかりとチェックしないといけないからの」
「流石に俺の塔にはまだこねーだろうが、まぁ俺も一度チェックしとくかね」
「帰りは洞窟を出て左、エヌア方面に向かうと良いじゃろ、あそこには試練を終えた者の帰路があるからの」
「分かりました、ありがとうございます」
御礼を言って一礼すると、その隙に二神ともいなくなっていた。辺りは私のモフモフと、先ほどよりも神聖に見える謁見の間が広がるだけだった。
貰った装備を着て外に出ると、入った時と同じ色の空。特にメールも来ていないのでそのまま歩き続けようと思ってふと時計に目が留まる。入った時と時間は余り変わっていなかった。
つまり、試練は特別イベント扱いで、時間の流れが違うという事。そもそも長時間の戦闘を予定されて造られた可能性もあるって事ね。それじゃあ次も結構な長期戦になるかもしれないし、気合を入れていかないとだめだね!
再度気合を入れてからしばらく歩くと、崖が切れているとこに出た。上を見上げれば丁度エヌアの街が見える。
目の前の洞窟を警戒しながら覗き込むと、上に上るための階段がひっそりと並んでいた。
「モフモフしながら登りますか」
とぼとぼと昇り始めて、途中階段に座りながらご飯休憩を挟んだ。洞窟はやはり煙の出ていない松明に照らされているので、薄暗いが見えないことも無い。
1時間程歩くと、漸く頂上に着くことが出来た。外から漏れる光が眩しくて、手で光を少し遮りながら上がり切る。
見渡したそこは、綺麗な庭園だった。振り向いて見えた白い神殿はとても美しくて、思わずスクショを撮ってしまうほどだ。
「おや、お客様とは珍しいですね」
声が聞こえた方に顔を向けると、少し目の細い優しそうな紺の長髪の男性が、にこりと笑っていた。
「あの、此処は」
「此処はエヌアの街ですよ。最も裏のですけどね」
またニコリとした白い神父さんのような恰好をした男性に愛想笑いを浮かべる。優しそうな顔であることは確かなんだけど、なんだか少し胡散臭い気がする。
「裏というのは」
「貴女は、エヌアの街で進めない箇所があるのをご存知ですか?」
「はい、壁にぶつかるような感じでした」
「その通りです。あの先に見えていた街の景色、あれはフェイクなんですよ」
「フェイクですか?」
「えぇ、幻影といった方がしっくりきますか? あの先に有るのはこの庭園と大神殿なのです」
へぇ、まだ実装されていないと思っていたけれど、実際はルート的に入れなかっただけなんだ。
「庭園は基本ご自由にお使いいただいて構いません。しかし神殿の地下へ入られるのならば、もう一度私に声をかけてください。私は基本神殿の入り口に居ますので。では」
男性はふわりと笑ってから神殿の方へと歩いて行った。
「くぅーん」
天気もいいし、ふかふかの芝は天然のソファーみたいなものだし、しゃがんでモフモフ。
神殿の逆側には、綺麗な赤が見えるのでバラ園になっているのだろうか。
「行ってみようか」
モフモフ達とゆっくりと近づいて行く。
やはりバラ園があり、迷路ほどではないが道が多岐に分かれており、ゆっくりとモフモフしながら見て回った。
「綺麗ですね、契約者様! それにいい匂いです」
「綺麗だよね……あの人に聞いて、ローズティーがあったら買えないか聞いてみたいね、そしたらいつもいい匂いのお茶が飲めるよ」
「僕、飲みたいです」
バラに近づいてクンクンと匂いを嗅ぐフェリを撫でてから、勿論皆を撫でくりしていく。
じゃあそろそろ神殿に行ってみようかな。
白いベンチでゆっくりとした時間を過ごしていたけれども、そろそろ神殿が気になって仕方ないので突撃することに。
「……というかあれ? 此処が街って言うならなんで皆は帰還しないで入れてるんだろ?」
モフモフと居る事が当たり前になっていたから気が付かなかったけれども、おかしい。
んー、街って言う事で安心しすぎるのは良くない場所って事なのかな。
「来ましたね、ようこそエヌア大神殿へ」
神殿に入ると、先ほどの男性が迎えてくれた。
取り合えず、いつもの通りポータルがあったのでそれに登録。
「宜しければ此方にどうぞ」
神殿の中は左に神像、真ん中は大きな階段、そして右にはカウンターがあり、私はカウンターの椅子へと案内された。
「改めまして、私はローランと言います。此処の大神殿の管理をしている神殿の職員でもあり、またギルドの職員でもあります」
「ギルドですか?」
「そうです。此処は街といっても正しく街ではありません。表と裏が分かたれているのは、この大神殿を隔離するために他なりません」
「隔離ですか?」
「そうです、この大神殿は元々神を称えるために造られた物、そしてその周りに建設者やその家族が集まり街となったのが起源です。しかし魔王侵攻のおり、魔王軍の重鎮が此処に呪いをかけていったのです。それ以来此処はこうして隔離されているのです」
「それを管理しているのが、ローランさんということなんですね」
「そうです、そしてもう一つのギルド職員というのは、呪いのせいで大神殿の地下に広がるダンジョンの状況を見定めるために派遣された職員でもあるという事です」
「ダンジョン、ですか?」
「はい、このダンジョンは大々的に発表しておりません。試練を乗り越えし猛者のみが魔を払うことを許された場所なのです」
「それだけ危険という事なのですか?」
「その通りです。危険である事、そして街の近くである事、さらに神殿の地下に出来たという事を考え、ギルド内の秘密とし一般市民には教えていないのです。知っているのは試練を乗り越えて此処に辿り着いた者のみです、そしてこのダンジョンに入るためには制約が必要となります。それは誓ってこのダンジョンの事を言わない、言えなくするための誓約です、その誓約さえしていただければこのダンジョンに入ることが出来ます」
ほぉほぉ、つまり話さないようにさっきの酒盛りみたいな感じで何かしらプログラムされて、それをするだけでダンジョンに入れるという事なんだね、これはやるしかない。
「折角なので、誓約をしてダンジョンに入りたいと思います。でも、本当にそれだけでいいのですか? ティーリの街の先にあるダンジョン街のダンジョンに入るためには色々と頑張らないといけないという事でしたけど……それに、説明だけ聞いて誓約しなければ言いふらせるのでは?」
「あそこは何も実績が無い状態で行くとそうなりますね。此処の場合は試練を超えた若しくは挑める程の者であるという実績がありますから。此処でダンジョンギルドに入りダンジョンカードを発行すれば、彼方のダンジョンにも直ぐに入ることが出来ますよ……最後のご質問ですが、そのような方には一応マークが付きます、もしお話になられたら……」
「そうなんですね、でしたら是非」
なら尚更登録しないと。
……もう一個の方は、なんか触れない方がいいよね。
「では此方の板にお手を……はい結構です、同時に誓約も完了いたしました」
誓約簡単……。
その後はいつも通りの登録を終えて説明に入ったけれども、殆ど冒険者ギルドと同じような内容だった。ダンジョンの中に居るモンスターの部位を提出とか、討伐とか、そんな依頼が主なのだとか。ランクは、ダンジョンに入る事を許された人はランク2からだそうで、ティーリの街の先のダンジョンはランクを1から2に上げるのが結構大変なんだそうだ。私は、試練を突破したという事で、ランク2からのスタート。
「ただこのダンジョンは特別で、そう言った依頼が無い代わりに、到達階層によって報酬が出ます」
10階層まで行けたらボーナスとかそんな感じかな? 強くなれそうならそれでいいんだけどね。
「説明は以上になります、何か質問はありますか」
「今のところは大丈夫です、あとローズティーは売ってますか?」
「ローズティーですか? ありますよ、折角ですから少し分けましょう。その代わり今ダンジョンに一度入って頂けますか?」
「どうしてですか?」
「一応実力を見させて頂ければと思いまして」
「分かりました」
どうせすぐに行くつもりだったし、それは全然かまわない。席を立って階段の前へ。
神殿は尊大な感じだが、地下に行くにつれてその階段が少し融けたような跡が見える。
階段を降り切ったと頃には、白い階段から紫の階段に変わってしまっていた。
目の前にある扉は、両開きの大きくて本来なら神殿に合った物なのだろうけど、今はおどろおどろしい絵画が刻まれている。
「皆、いくよ!」
気合を入れて扉を開く。
≪お知らせいたします、ただいまプレイヤーが初めてダンジョンに踏み入れました!≫
≪シークレットダンジョン、エヌア大神殿地下ダンジョンが解放されました≫
<初めてダンジョンに踏み入れました! 称号[探検家]を得ました>
<シークレットダンジョン解放の報酬として、称号[探求者]を得ました>
……わーお。
質問?(ほんのちょっぴり改変)
Q:絶対ログアウトしたら下が悲惨なことになってるよね
つーか安全装置とかないの?
A:一行目に関しては、三十二話で解決されたと思います。二日といってもゲーム内の加速中であった為、悲惨な事になってません。
安全装置に関しては無いです。無いと言うと語弊がありますが、此処まで出来る化学進化を遂げた世界ですので、お手洗いでプレイの邪魔をされないような何か発明があると考えていますので、安全装置の必要が無い世界だとお思い下さい。謎技術万歳。




