第三十話 突撃! 隣の酒盛り場
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早々にモフモフ達を呼び出して堪能する。その後ご飯を出して一緒に食事。
戦闘中にMPが減っていくのはシャレにならないからね。今度簡単に食べられるクッキー的な物の作り方も覚えられたらいいなぁ、勿論MP料理で。
昨夜は幻想的に見えたこの場所も、今日は太陽がさんさんと降り注ぐ温い場所に変わっていた。モフモフ達が元気に走っていたり、ロリショタが水を冷たいとか言っている元気なパワーがありそうな場所だ。
だけれども此処は魔境的な場所である。気を引き締めなければそのままやられてしまうことがある。実際昨日は結構危うい場面もいくつかあった。その中でも改善しないといけないのは、やはりMPポーションの調達だと思う。これさえクリアできれば、探索の幅が一気に増える事になる。ギルドにいって確認してみよう。
さて、では皆の衆行くとしますか。
泉の水が小さな川のように流れていく先、そこも木々があまり生えていなさそうに見えるが、先が真っ黒で見えない。あれがフィールドの境目である。あれを超えるとボスの可能性が高い。
「此処までの敵はかなり強敵だったから、皆気を付けて進もうね」
気合を入れなおしてボス戦!
フィールドを出ると、三匹のモンスターが川の水を飲んでいる所だった。
「何見とんじゃ、あ?」
鑑定……此方に話しかけてきたのはハイオークと判明した。ジェネラルよりも更に脂肪がデカイ筋肉に変わっているような風体のモンスターだ。共に連れているのは、ハイゴブリンとハイコボルト。ゴブリンとコボルトは身長が少し高くなり、顔も端正になっているような気がする。
「兄貴が質問してんだ、答えろ女!」
「コタエロー」
どうやらゴブリンはそこまで話せないようだ。
「いや、敵かと思ったんで」
「返答によっちゃ敵になるっちゅうもんだ、おめーは何しにここへ来た」
「何と言われても、奥へ進むために?」
「ほほぉ、ってぇことは試練に挑む者っちゅうわけか……なら俺達を超えていかにゃならんわなぁ」
途端に雰囲気の変わる三匹。引き返せば戦闘にはならないという事なのだろうか。それとも問答は意味がない? それに試練ってなんだろ。
とりあえずはこの戦いを済ますのが先だね。
「ハイオークは私が、他はいつも通り!」
全員が駆ける。
「ほぉ、わしにさしで挑むんか」
「皆が来るまでだけどね」
集中……。
筋肉が大きい分、挙動が分かりやすい。今までのようにオークだから愚鈍という事も無さそうだけど。
相手は武器を持っていない、きっとあの肉体そのものが武器になるんだろう、手足タックル頭、なんでもいいから私に当てたら大ダメージになる。相手の予測の上を行って避け続けないといけない。更に此方も攻撃を与えるようにしないと、今回は最初から刺突剣だ。壊れてしまっても、此処を乗り越える覚悟。
「……ええ気迫しとるな」
「ありがとう」
ゲームの中ではゲームの中での経験が生きる。師匠に無茶ぶりされた日々がこの戦いで生きてくる。
相手の目線が動く、先ずはフェイクをかけてくる敵なのかそうで無いかを見極める。
私の頭があった場所にケリが放たれる、目線とも一致。次は右にそのまま……左! フェイクも入れてくるって事ね、それならそれで対処する。
紙一重で避けてはHPが減りそうな予感がしたので、余裕をもって避ける。流れるように相手の死角に入る。また、相手が自分の死角を意識して次の攻撃に移ろうとした時に攻撃。やはりどこも固い。でも一点集中していればいつか辿り着く。
相手との攻防が続く。
殴りを避け、次のケリをよけてその蹴って浮いた股に、足を戻す前に滑り込み攻撃。
そんな事を繰り返していると、漸くモフモフ達が来てくれたので後退。
「はぁ、はぁ、はぁ」
ゲームの中だというのに、息が切れる。極度の集中と緊張状態で道場で遊んでいた時もなったことがある。今の私のレベルや数値ではぎりぎり対応できる相手だ。私一人で勝てと言われたら、負ける気はしないけれども、それでも何十時間とかかっていたかもしれない。モフモフ達に感謝しないと。
「よし!」
集中しなおして戦場に復帰。ナードが持ちこたえてくれたところに一撃、アルフがかく乱してくれたところを死角から一撃。ミュンに目線を持っていかれたところに一撃。ブレアの攻撃を受け止めたところに一撃。フェリの攻撃が顔にヒットした時に一撃。
そうやって隙を探しながら攻撃していく。MPは出来るだけ使いたくない。モフモフ達ももろに一撃喰らってしまえば大ダメージは免れない。戦闘に置いて色々とレクチャーしているけれども、それでも避けきれない事もある。その時にMPが無くなって回復出来ないではお話にならない。
「ウガァァァアアアアアアアア」
私の刺突剣が一点集中で狙っていた場所を抉る。
ハイオークは咆哮と共にぺたんと尻もちをつき両手を上げた。
「合格、合格や、ほれこれもってき」
はぁとため息をついたハイオークが投げて渡したのは、錆付いた鍵だった。
「それをもっとりゃ試練に挑める、試練は川を辿った先にある」
「ありがとうございます……それで試練って?」
「なんじゃお前さんそれ知って来たんじゃないのか! じゃあ後のお楽しみに取っとけや」
「……ハイオークになると皆話せるの?」
「ワシらが特別、振るいの役目……これ以上話す事はない、行け」
なんかちょっと雰囲気が変わったので、とぼとぼと歩いて川沿いを下っていく。
<ミュンのレベルが上がりました、進化可能です! コントラクトモンスター一覧から選択してください>
おぉ今! イベントが終わったからかな? 取り合えず進化進化!
ミュンちゃんは前回進化先が一つしかなかったけど、今回はどうかな?
……はい、今回も一つしかありませんでした。うーん、もうちょっと先にならないと選べるようにならないのかな? まぁいいけどさ。
進化先はスピアラビット。進化したミュンちゃんは角の所が更に硬く鋭利になっていた。それでぶすっとやるんだね!
新たに得たスキルは、【気配察知】と【刺突】。【刺突】は、突き攻撃にボーナスが入るスキルらしい。結構有能。よし! じゃあお散歩がてら歩きましょ! 勿論警戒しながらね。
お散歩していて気が付いたが、川の進む先が段々と低くなっていた。上ってきたわけでもないのになと少し首を傾げる。
敵は出てこなかった。川が流れている場所は両側が森になっているが、此処の道だけは開けていた。なのでモフモフと日光浴をしながらお散歩しているようで、結構幸せな気分だった。
それが現れたのは、モフモフ達と1時間程お散歩した後だった。
私が迷った時に見つけた崖。今私はその淵に立っていた。そして、そこには階段が設置されている。
気を付けながら一段一段崖の下へと降りていく。石でできた階段は、今にも崩れてしまいそうで、全く気が抜けない。
降り終わった時には、その場で少し休憩してしまった。崖はかなりの深さがあるので、気が気では無かった。モフモフ達は一旦帰還させていたので再度召喚。ご飯を食べて歩き始める。
光源は崖の上から注してくる来る太陽の光だけ。それでも先ほどの森よりはましなほどに明るい。ただ雰囲気が、なんだかスケルトンでも出てきそうな感じではあるけどね。
「此処かな?」
ぽっかりとそこだけ穴が開いていた。しかも中から光が漏れているので、此処が例の試練の場所で間違いないだろう。
穴というよりはしっかりとした洞窟で、松明の火が壁際に掛けられていた。だがよく見ると煙が出ていないので、何かしらこの世界の技術で作られている物なのだろう。
洞窟の階段を降りると行き止まりになった。だが此処まで来て行き止まりというのもあり得ないので、あちこち探すと丁度足元付近の壁に鍵穴を発見。先ほど貰った鍵を差し込むと、強い光が辺りを襲う。薄暗い中からこれなので思わず目を瞑る。しかし何とか周囲の状況を確認しようと直ぐに目を開く。
開いた先で、四つの瞳と目があった。
一人は人間の筋骨隆々なおじいさんで、紺色の和装をしている。
もう一人はドワーフのおじさん? ――ドワーフの年齢は分からない――が皮鎧を着て此方を見ていた。そして二人の手には酒。目の前のちゃぶ台にも酒。
周囲は何処の城の謁見の間だというほどに綺麗な場所で、奥にはステンドグラス。
全体的な長さが短いようだが、それでもレッドカーペットが敷かれており、奥には玉座があるしっかりとした場所だ。
そこで……ちゃぶ台地べたで酒盛りおじさん二人とは、これ如何に。
「……」
「……」
「……」
「……うぉっほん、あー、よく来たの」
「えーっと」
「此処は試練の間、闘神が収める神聖な場じゃよ」
「神聖?」
「う、うむ、神聖じゃ」
「ぷっ、ガハハハハハ、マジャルツア! この状況を見られて神聖もくそもあるわけないだろぉ!」
ドワーフさんが溜まらずと吹き出してちゃぶ台に手をバシバシ叩きながら笑っている。それを和装のお爺さんが苦々しく見つめていた。
「くぅ、十二神め、まだ此処には人が来ないと先日言っていたではないかぁ!」
「よぉ、異界人。俺は技神ルキラクマン、こっちでしぼんでる爺は闘神マジャルツア」
「本物の神様ですか?」
「おうよ。十二神が俺達の出番はまだ先だと言っていたから暇つぶしにコイツと飲んでたら、お前さんがひょっこりきちまったって訳だ」
「ハイオーク共に知恵を授けて振るいにかけていたというのに、突破しうる者があろうとはな……流石に予想外じゃった。ワシも異界人の動向をそれとなく見とったが、此処に来るような者はおらんかったのだがのぉ」
ため息をついてまたグビッとお酒を飲む闘神。私を吟味するように見る技神。
「俺から言わせれば、そんな装備で来られただけでもすげぇと思うがよ? まぁもうちょっとましな装備をした方がいいと思うけどな」
どうやら私ではなく装備を見ていたようだ。
此処までの連戦に耐えてくれた素晴らしい装備なので、卑下しないであげてほしい。でももしかしたら技神なりの誉め言葉なのかもしれない。うーん、難しい所。
「それで、お前さんは試練を受けに来たって事でいいのかの? 試練の話はまだ異界人に伝わっていないはずなんじゃがのぉ」
「えっと、改めて私はレオラといいます。試練の事は知りませんでした。ダンジョンの街に行くつもりが道を間違えて奥に入ってしまい、此処まで来たら最後まで行こうと思って行軍したところ、話すハイオーク達に出会い、そこで試練の事を知りました」
「偶然とそれを成せるだけの力量の産物か、異界人を少々侮っておったな……まぁいい、試練の内容は知らんという事で良いのじゃな?」
「知りません」
「……では説明しよう。先ほども言ったが此処は闘神が収める試練の間じゃ。此処では自らの武技のみを使って試練に挑んでもらう。そしてその試練に打ち勝つことが出来れば使用した武器の加護をワシから与える事になっておる。試練の間は世界中に散らばっておってな、場所によって難易度が違うのじゃ。難易度の高い試練を打ち勝つほど、加護は大きな物となるのじゃ」
「つまり試練を乗り越えたら加護がもらえるという事ですか、やりたいです」
うん、剣と刺突剣の加護は貰っておきたいよね。
誤字報告ありがとうございました。
九話 健→腱




