ニューゴッド計画
カオリの兄のケンジがまた事務所に尋ねて来た。
するとシュパパッ!というひかりと共に、白髪ロングの白いワンピースを着た幼女が現れる。それはのほほ!といつもアイスをねだる全世界の神ーーゴッドだ。
そのゴッドを生で見たケンジは白衣に突っ込んだ両手をポケットからだして微笑む。
「君が本当の神か……話に聞いた通りだ。シャオリンに似ているよ。クククッ……私の才能には自分でも驚くよ全く!」
「のほほ!お主の計画はだいたい読めたぞぇ。人間とはくだらぬことばかり考えて面白い生き物じゃて……」
いつになく、冷たい笑いをゴッドはした。
クククッ……とこの不利な状況ですら楽しむケンジは、
「神ならば私を倒せるだろう。どうする?ここで私とシャオリンを倒してこの世界の安定を図るか?不自然な安定をな!?」
「のほほ!だがワシは神だから干渉はせぬよ。世界の混乱を解決するのは勇者。その勇者はここにいるからのぅ」
「勇者アデュー……か。丁度いい。神も勇者も始末すれば私のサイエンスウィザードが全てを支配する。装女学園のサイエンスマジックとは比べ物にならない科学と魔法の融合を見せてやろう」
「おい待てよケンジ。お前がキャンディ王国を襲撃した装女学園をけしかけた黒幕か?だから国王が新しく変わってすぐに襲撃をかけられたのか……身内ならすぐにわかるし、今の状況をチャンスとして動き出したって事かよ」
「そうだよ。その通り。こんなキャンディ王国などは、私の理想ではないから消えていいのさ」
「理想を語るなら、せめて人間としての理想を語りやがれ」
この前の装女学園の襲撃から、この怪獣事件までの流れはこのカオリの兄貴のケンジが仕組んだ計画だったようだ。
「この暴走は止まらなくていいのさ。何故ならキャンディ王国は更地になっていい……ここは私が生み出した新たなる神の国になるのだからな!これこそがニューゴッド計画の全てさ!」
ニューゴッド計画。
人口的に神を生み出す計画。
ケンジの生み出す新たなる神。
だからゴッドに似てたのか……。
ケンジはキャンディ王国の地下で研究をしながら、地上で勇者や神が現れた情報をカオリや部下に探らせていた。だからこそ、新たなる神を生み出す計画を閃いたようだぜ……ったく面倒な野郎だぜ。
「ゴメン、アデュー君。今まで隠してて……」
「別にお前は兄貴に俺とかゴッドがどんな奴かの情報を与えてただけだろ?そんなの交換日記と変わらねーよ。たいした情報でもねー。第一に、勇者も神も弱くねーんだからな!それは相棒のお前が一番知ってるはずだぜカオリ」
「アデュー……君」
そして俺は言う。
「カオリ、悪いがケンジは悪だ。コイツはこの世界を暗闇に落とす事を自覚しながらも平然とやり遂げる男……このまま戦って殺さない自信は無い……覚悟はしてくれ。家族を失う事を」
そうだ。
このケンジだけはもう再起不能にでもして行動をさせないようにしないと、この世界の崩壊を招く。人口的に神を生み出す計画なんて企む奴は……カオリの兄貴と言えども黙って見過ごすわけにはいかねーよ。
世界全ての為にな。
「……その時はその時ね。あの人はもう人間である事をやめたような人間。死んでも仕方ないわ。あの人に見えてるのは、ダンポコワールドでもキャンディ王国でも家族でもない。科学だけだから。もう優しいケンジ兄さんはいないの……」
「出来るだけ生かすよう努力はするが、期待しないでくれ。艶色に決められるか……やってやるぜ!」
※
俺がカオリから兄貴のケンジとの過去の話を聞いた晩、キャンディ王国地下研究所の面々がシャオリンを引き取りに来ていた。
カオリの書いたレポートを見て、白米怪獣シャオリンが人間に害を成すことが無く、以前からのネックであった巨大化も収まったと分かったからだそうだ。
「バイバイ、シャオリン」
「ばいにゃっしゅ!」
カオリはシャオリンをキャンディ研究員に引き渡し、ソイツ等が立ち去ると事務所の門を閉めた。
目を伏せたまま、カオリ俺の横を通り過ぎようとする。
俺はキッ!と振り返り、カオリに自分の思いをぶつけた。
「……カオリ。……カオリは昔も今も弱い者を助けようとする人じゃないか。今回の件も、本当はシャオリンを渡したくはなかったんだろう!? 何で簡単に渡すんだ!お前は俺の相棒だ! もっと相棒を頼れよ!俺達は何の為の相棒なんだ!」
カオリは窓の外の真っ黒な夜空を見上げ、黙っている。
俺は続ける。
「これから俺はシャオリンを取り戻しに行く。カオリも見ただろう?シャオリンの悲しげな顔を! シャオリンは人間じゃないけど、人間の言う事も、人間の温もりもちゃんと分かっていたはずだ! それは、側にいたカオリが一番分かっていたはずだ……」
「……」
「人間化も出来る事をバレたらシャオリンは更に改造されるぜ。カオリ、ここはケンジの研究を邪魔してでも止めるしかねーよ」
そして、俺は事務所を出た。
追いすがるカオリは俺の背中を叩き、泣き叫ぶ。
だが、俺は夜空を見上げたまま答えない。
そしてキャンディ王国の方面へ歩き出す。
まだ、夜空を見つめ続けるカオリは、何かを決心したように両手を握りしめた。
二つの手から血がしたたり落ち、カオリの流した涙と混ざり、薄まった。
※
その夜ーー。
キャンディ王国城下町は白い怪獣に蹂躙されていた。
地上を切り裂き、口から吐く炎で焼き尽くす巨大な白い怪獣の姿が映った。
「――シャオリン!?」
俺は巨大化したシャオリンに驚愕した!




