現れる増援!イゴッホー!
全力で戦う俺だったが、ヒビキの一撃、一撃は今の俺にはとても重く、次第に劣勢に追い込まれていく……。
(……くっ! 装女学園のボス・ヒビキ。コイツの秘密さえ知らなければ俺は……!)
防戦一方になった俺は、アゴに絶望的な一撃を受けた。
「ぐはっ……!」
宙を舞い、バタン!と屋上の床に叩きつけられた。
ゆっくり、ヒビキは俺に近づいていく。
「私の秘密を知った者は許せない。死ね」
だが、俺はもう戦う気力も無い。
いや、戦う必要が無いとも言える。
殺那――。
キャンディ王国城屋上のもう一つの入り口から、ピンクの長い髪の妖精国王が現れた。
その女、ツバサはプラスチックの弾のような物をいじりながら言う。
「……プラスチック弾とはやってくれるね。まだ、背中が痛いよ」
「ツバサ……こうも早く、戻って来るとはね。腕の一本でも骨折してるかと思ったが……」
屋上の柵に寄りかかったヒビキはツバサに答える。
「気が付かなかったかい? 本当はロープなんて無くて、カオリは下の階に逃れただけ。私の方は、ギリギリの所で現れたバクロンが私を受け止めて救出したのさ」
「そうか……だが、怪我をしているツバサと、満身創痍のアデューが私に勝てると思っているのか?」
「チッ、チッ、チッ! 君たち……いや、ソルジャーレッドは本物の女性だが、君は違うよね? ヒビキ君?」
ヒビキはピクピクッと顔を引きつらせ、話し始める。
「……私が男という証拠はどこ? どう見ても、女子生徒でしょう?」
「濃いすね毛の剃り跡、ファンデーションで隠したヒゲの青み……他にも言って欲しいかい?」
ツバサはソルジャーレッドのかけていたマジサイゴーグルでヒビキを見ながら言った。
この魔法と科学を融合させたゴーグルならば男女の違いなどは一目瞭然でわかるシロモノだ。
顔を真っ赤にしたヒビキは、自分の身体を抱き締める。
更にツバサは、
「それと、ホームページかな。君の世界ではコンピューターが発達してるようだね。ミーナが調べてくれたよ。そのサイトのページは女子生徒が沢山映っているけど、募集要項を見たら、何と男しか募集していない。よく考えたら、学園の名も女装の逆の装女学園だし、君達の腕っぷしの強さにも納得がいったよ。まぁ、ソルジャーレッドの強さには納得がいかないけどね」
全てを看破したツバサに、ただヒビキは口を開けるばかりである。
「……だ、だが! このソルジャーレッドがいれば、お前達に勝ち目が無いはずだ!行け、ソルジャーレッド!」
「そうは問屋が卸さない」
パチンッ!とツバサが指を叩くと、俺は決めポーズを取った。
「はうあっ~……!」
ソルジャーレッドは自分の巨乳を抱き締め、勇者のイケメンキラキラ光線にやられた。
焦ったヒビキは俺に銃を向け、
「つ、ツバサっ! これで形成逆転だ! このアデューを助けて欲しければ、私の命に従え、ツバサっ!」
必死になるヒビキにツバサは両手を上げ、
「仕方ないなぁ……上を見てごらん?」
「上?」
ツバサの指差す上空を見ると、キャンディ王国の上空に巨大な城が浮かんでいた。
「なっ、何だあの城は!?」
びっくり仰天したヒビキは腰を抜かした。
そして、城の前方に大砲のような物が現れる。
「アデューーーっ! イゴッホーのセット、完了よ!」
ゴッド城を動かしているポッドの声が上空から聞こえた。ゴッドもこんな時は役に立つぜ。
「あのイゴッホーは次元を超える大砲だ。なんせ神が使ってる大砲だからな」
「よし、照準を装女学園生徒会室にセット」
『了解!』
イゴッホーは照準を装女学園生徒会室にセットする。
顔が青ざめるヒビキにツバサは、
「さて、どうする? ヒビキ君?」
その瞬間、キャンディ王国の上空に青白い光が走った――。
シュパァァァァッ!
とイゴッホーが発射され、別世界の装女学園の生徒会室が吹き飛んだ。
「あーあ。やりやがったなアイスバカ」
ゴッド城の中では、ゴッド達が混乱していたようだ。
「姉さん! 何で撃ったの!?」
「え!? いや、アデューがピンチだったし……のほほ!」
ポッドから攻められるゴッドは困惑する。
「不味いぞ……この事件は解決したようなもんだが、我々の事件は始まったばかりだ。どんな罰を受けるやら……」
頭を抱えるポッドにゴッドが、
「そういえばツバサが、布団叩きを素振りしていたから、もしかして尻叩きの刑……?」
「待って姉さん。私は最近痔なんだよ。尻は不味いわ……」
「え? ポッドも? ワシも最近痔なんだよ。アイスの食い過ぎじゃ!」
痔を告白する二人の姉妹はため息をつき、顔を見合せ、尻を抑えた。
『痔の姉妹か……のほほ』
ポカーンと口を開けたままのソルジャーレッドは、ただ茫然とこの負けた状況を飲み込めないでいる。ヒビキは自分の世界の自室を消されて、愕然としてるな。
二人の目の前を、手をワイパーのように振ったツバサは、
「おーい、起きてーっ!」
ハッ!と意識を取り戻した二人は、思い思いに話し始める。
「あーっ! 私のパソコンに保存されていたツバサの画像がーっ!」
「私のアデュー画像集がーっ!」
二人は頭を抱えて叫ぶ。
どうやら、ヒビキは新しい妖精国王に一目惚れしたからツバサごと支配したくて攻めて来たようだ。そしてソルジャーレッドこと赤魔王ユリリは俺への嫉妬でヒビキに協力したらしい。
笑いながらツバサは二人の肩を叩き、
「争いはもう十分だろう? キャンディ王国を支配しても、兵士達は“自由”を基本としているから、女装の規律を作っても守らないし、皆いなくなってしまうよ。第一に、私達は敵対する必要なんてないんだ。何故なら、このキャンディ王国はフリーラブ! だからさ!」
チュ!とツバサは二人の頬っぺたにキスをした。
ヒビキとソルジャーレッド観念し、降参した。そして俺も微笑む。
「これで、事件解決だな……おっと」
よろけた俺は、カオリに手を貸してもらい助けられる。
そして何故かカオリの膝枕で横になった。
(何か今日は色々と疲れたぜ。男とキスしちまうし……)
俺とカオリは、沈む夕日を指差すツバサ達の後姿を見た。
ヒビキとユリリは祈るように夕日を見つめている。
「さて、そろそろ起きるか……うっ!」
「まだ、膝枕にいていいよ。キスしてラッキーと思ったアデュー君」
ギロッ!とカオリに微笑まれ、俺は膝枕に戻された。そして微笑みも怖い事はあるな?と思いつつ、沈みゆく夕日を見て微笑んだ。




