魔王神サターンとの最終決戦2
「ぐはっ!」
胸に零距離射程でビックバンフレアの火炎爆破を浴びた俺はその勢いで傀儡カラクリに叩きつけられ、ガクリとうなだれる。そしてデスレーザーで心臓に穴を開けられた!
次第に無数に穴の空いた赤いジャケットの中の白いシャツに血が滲み始める。
その倒れる俺を見たサターンは、
「アデューは死んだ。相棒が真下にいて嬉しいでしょう? カオリ」
「黙れ、狭き世界の女」
「まだ、そんな口がきけるとはね。呪われた人間は拷問にも耐性があるの? まぁ、もう時間の問題よ」
サターンはカオリを見上げるのを止め、四角い窓から見える遠くの月を見つめた。
ちなみに、俺は生きている!
(心臓の鼓動をかなり低く抑えてるだけで死んでねーっーの!まぁ、今は死んだフリがいいか。心臓の穴を再構築するのに殆どの魔力を消費しちまうな……この戦いが終わったらしばらく働かないでニート生活しねーと回復しなさそうだぜ
柱に寄りかかるサターンは無言のままカオリを見ていた。
そして、時刻は零時十分前となった。
暗雲がサターンの瞳に宿る。
「……後十分ほどで時間ね。そろそろ、カウントダウンが始まる。全ては終わるのよ。この夜にね」
薄ら笑いを浮かべるサターンの瞳に、青色の閃光が走る。
傀儡カラクリ全体の鼓動がドクン! ドクン! と耳障りなほどに大きくなり、青色の輝きがその空間を満たす。
生け贄であるカオリは、両目から血が流れ、全身の神経が傀儡カラクリとリンクし始め、顔面に神経が浮かび上がった。
「この瞬間だけは、何度見ても興奮を抑えられない……子宮の奥底からゾクゾクするわ。フフフッ……!」
興奮のあまり、少し目が充血するサターンはまばたきすらせず完全なる生け贄と化すカオリを見上げる。やがて更に輝きは増して行き、呪いは完成間近となる。
「今回は生贄が上玉だからどうなるかと思ったが、何とか上手くいったわね。永遠の呪いの礼だ、明日にでもアデューの墓でも郊外に作ってやるか……?」
呪いの完成を見守りながらそんな事を考えていたサターンの視界に、あり得ない人物が動いていた。思わずその人物の名前を口にする。
「――アデュー!?貴方は死んだでしょう? ――!?」
驚くサターン同時に、カオリも驚きの声を上げる。
傀儡カラクリの下で生き絶えていたはずの俺はもちろん生きていた。
不敵に笑うこの俺に怒り心頭のサターンは、
「アデュー……何故生きてるの? 心臓を貫かれて死なない人間はいないわよ?」
「何故って、今のデスレーザーが心臓そのものを潰したわけじゃねーからな」
「そんな筈は無いわ! 私のデスレーザーは確実にアナタの心臓をとらえていた。あの一撃を回避するなど不可能よ!」
「チッチッチッ! 確かに心臓に穴は開いたが、完全に消滅したわけじゃねーからな。それに俺が生きてる本当の理由は傀儡カラクリから流れるの呪いの波動を利用しただけさ」
右手の人差し指を左右に動かし、俺は言う。
「呪いの波動を……? まさかアナタ!」
「そう、そのまさかさ。俺は呪いの波動を多少ならば操れるのさ。何せカオリと俺の心臓はリンクしてるからな。だから、胸元に流れる波動を利用し、自分の心臓の再構築をしようと考えた。心臓の表面はだいぶ傷ついたけど、穴が開いた程度の傷だから致命傷には至らない。残念だったな。色々と」
怒りを露にしたサターンは怒声を上げ、
「ならば全身を消滅させて息の根を完全に止めるわよ!もう勇者の魔力などはいらないわ!」
「勝てないとわかったらいらないか。とんだメンヘラだぜ魔王神サターン」
素早くサターンは遠隔操作魔法砲台・マジックボール再度動かそうとを意識を集中する。しかし、新たな魔法が放たれる事はなかった。
「くっ、魔力を注入してなかった!」
「迂闊だなサターンちゃんよ」
「ぐおっ!」
チートソードとニートソードの流れる星のような高速剣技・流星剣でサターンのマジックボールははじけ飛んだ。
これで遠隔操作魔法砲台は潰したぜ。
けど、魔王神サターンは傀儡カラクリから流れ込む波動の全てをコントロールして自分に吸収しやがった!まだ完全にカオリの魔力を吸えてはいないが、今まで一般の女の魔力を吸った分も合わせると相当量の魔力がサターンに吸収されちまったな……。
「この凄まじい魔力ならそのチンケな二刀流にも素手で対抗できそうだわ。さーて、今度はこっちの番よアデュー」
本当にサターンは素手で俺のチートソードとニートソードとぶつかり合って来やがる!何て野郎だ!それにーー。
(この床の揺れを意図的に操っているとなると、空でも飛べないと不利だぜ。傀儡カラクリから魔力吸収したサターンは肉弾戦が強くなってて厄介だしよ……!)
不規則に俺の足元だけが揺れ動く中、懸命にサターンとの攻防を繰り広げつつ、牽制のチートスラッシュを放ち、流星剣を叩き込む。後方に飛んだサターンは傀儡カラクリの影に隠れつつ、
「ブヒブヒ。さっきまでの勢いが無いわよアデュー。どうやら、ユイに相当痛めつけられたらしいわね」
「……実際、この街の急速な発展はユイのおかげだろう? お前の身体能力や傀儡カラクリを操る力も基礎の設計はお前でもそれを発展させとのはユイだろ。ユイは案外使える腹心だったようだからな」
「そうよ、子豚であったユイを人間する代わりに、街全体の発展を求めた。その象徴がこの呪われた時計塔とも呼ばれるサターンタワー。ユイには感謝してるわ。生まれ変わる街も私自身も活性化したからね。しかし、好都合だわ。この街の闇を知る勇者はここで死ぬ。私が貴方を殺せば目撃者は全て消える。あのカオリ達は生贄として死ぬしね」
「バーロー。好都合なのはこっちの方だ。魔王神を倒せれば他のどんな魔王も怖くないぜ。つまりお前は俺の勇者伝説への踏み台になってもらう」
「叶いもしないお喋りが長いわよーー」
コツン! と俺の足元付近に黒い筒状の物が落ちた。
バッ! と俺がその場から待避すると、サターンが投げたブラックボムは激しい音を立て爆発した。
(気の早い女だ……)
ソードのように伸びる魔力を両手に展開し、構え突進してきたサターンは倒れる俺に向けてその両手を振り下ろそうとする。
「終わりよー―!」
「ーー!」
殺意に溢れ大きく目を見開いたサターンは急にバランスを崩し倒れた。
そこには、マキビシが仕掛けられていた。
右手が頬をかすめツツーと血が流れた俺は、笑う。
足にに刺さるマキビシを抜くサターンは怒りながら、
「小癪な真似を!」
「俺のいる床だけさざ波のように揺れるのはフェアじゃないからな。目には目を、足元には足元をだ」
「戯れ言を!」
素早く動いた俺はサターンの蹴り飛ばし、コンボで更に顔面を蹴り上げた。
「ぐおっ!」
鼻から血を流すサターンは床を転がった瞬間、
バン! バン! バン! と互いに火炎魔法を撃ち続けた俺はその火炎の散る様を見つめながら対峙した。魔法対決では決着がつかないのを互いに悟ったからだ。
次の動作は肉弾戦か別の一手か?
そう、俺が思った瞬間――。
サターンは笑った。
「アデュー。一日にどれだけ毒を体内に取り入れれば人間は死ぬのでしょうね。素敵なこの街の番人を紹介してあげるわ」
「こんな所で合コンか?俺は好みに関しては五月蝿いぜ?」
「もう傀儡カラクリの呪いが全身に回ってるでしょ? そろそろ、受け入れてあげてもいいんじゃない?」
「何をだ?」
「死ぬ事をよ」
確かに全身が毒をくらったようにシビれてダルい。このままだとマジで死にそうな痛みを体内から感じるぜ……って毒?
「お前、まさか傀儡カラクリの呪いの効果は……」
「毒でもあるわよ。だからこそ、傀儡カラクリに捕まる生贄は逃れられないの」
「チッ、意識が揺らめいて来たぜ……」
確かに俺はカオリと心臓がリンクしてるから、カオリが今受けてる傀儡カラクリの呪いの一つの毒の影響が俺にも回って来てる。
ヤッベーな……。
一ミクロンほどのピンチかも!




