魔王神サターンとの最終決戦
突如、天井にある円形の天窓をブチ破って現れた俺は地面に着地し、チートソードを構えた。
この最上階の周囲には円形に八本の柱が立っていやがる。おそらくこれは八卦の魔方陣の一つだな。
そして、傀儡カラクリに拘束されるカオリの目の前でしゃがんだ。その光景を唖然として見ていた魔王神サターンだったが、割れて粉々になったガラスの破片を踏み、パキパキッと音を立てると、
「……あらやだ、アデューじゃない。色々と方々を探し回ったけど現れなかったから、相棒を捨ててこの街から逃げ出したかと思ったわ。でも良いところに来た。今から年に一度の……いや、今回で最後になる魔力吸収儀式の始まりよ……」
女の魔力の全てを吸収する傀儡カラクリからの拘束を解き、俺はサターンに言う。
「それは光栄だ。そんな時に立ち会えて嬉しいぜ。まさかお前の腹心のユイのゲートがこの最上階の天井に通じてるとは思ってなかったからチョイ焦ったが無事にラストステージにたどり着いたぜ」
「ユイのヤツ、おっちょこちょいな事」
「そんなこんなで全ての流れはこの俺様、勇者アデューに向いてきているようだ。勝たしてもらうぜ魔王神サターン!」
「それはどうかしら?」
「――!」
サターンが言うなり、俺の背後の傀儡カラクリが青色に発光した。
そのカラクリに拘束されていたカオリは、カタカタカタ! と不気味な機械音を立て始めた傀儡カラクリに首から下を呑み込まれた!
「サターン! 何だこのカラクリは……まるで生物じゃないか……!」
意思を持つ生き物のように胎動する傀儡カラクリは、自身の内部に生贄のカオリを取り込み、そのカオリはカラクリの上部に十字架に吊るされる生贄のごとき姿でさらされた。
すかさず、俺は腰から次元の狭間から黄色い閃光に満ちるニートソードを召喚し、青色に発光する傀儡カラクリに二刀流の狙いを定める。しかし、目に見えぬ波動が俺を襲った。
「――何だ? 呪いの波動か!? 間近で浴び続けるのは不味いな――チィ!」
ズバババッ!と渇いた砂の弾丸が呪いの波動を警戒する俺の頬をかすめる。サターンは砂魔法で砂嵐を生んで視界を殺しつつ一本の柱の影に隠れた。
「ブヒブヒ! アデュー! 今頃出てきても、もう遅いのよ! 傀儡カラクリの呪いに呪われて死になさい!」
「やなこった! 死ぬのはお前だろサターン!うん、それがいいぜ!」
伏せていた俺は、かがんだ姿勢のままサターンが居る柱に向けて走る――が、
「役者はまだいるわよアデュー。生かしてくれて感謝はしてるけど、お姉様には手を出させないわ」
その時、サターンの腹心のユイの右手から火炎魔法ライジングパニックが火を吹いた。
散弾のような炎の群れが俺の左腕の肩をかすめる。
「――! 散弾ではな!」
「ハッタリはよしなさい。この傀儡カラクリエリアには呪いがあり、普通の魔法でも殺傷能力が違う。生きたければ投降しなさいアデュー。お姉様に言って命までは取らないわ」
「お前の姉様はそんな優しい顔はしてねーけどな」
傷口を抑えながら、俺は柱の背後に背を取った。現在の位置関係は、俺の柱の正面にカオリが捕らわれる傀儡カラクリ。そして、左手の柱にサターン。右手の柱の後ろにユイがいた。
「たとえ敵が二人になろうとも、俺にも仲間がいるんだから問題無い!」
「呼ばれて飛び出すバナナ魔王!ミーナ様の参上よ!」
と、最上階の屋根の上に隠れててもらったバナナ魔王ミーナはご自慢のバナナデスサイズで魔王神の腹心ユイに襲いかかるーーが、着地に失敗して自分の股間にバナナデスサイズの持ち手をぶつけてしまうミーナは悶絶して倒れた!けど、何とか不意打ちでユイも倒していたようだぜ。混乱する現場にイラつくサターンは、
「ユイはこの場には不要よ。下の階層に戻りなさい……テレポート」
「サターンお姉様……お役に立てずすみません……」
「いいのよ。私が全て片付けるから最上階以外を任せたわよユイ」
シュワア……と魔王神の腹心ユイは下の階層へ魔法でワープした。とりあえずミーナもそのワープに混ぜた。もしもミーナまで傀儡カラクリに捕らわれたらピンチもピンチ。ピンチンチンだからな!そしてそのまぶしいワープを見送る。
「やけにまぶしいな……けど、ユイはミーナに任せよう。さて、後はカオリを……」
チラッと巨大な彫刻のような傀儡カラクリの最上部で磔にされるカオリを見てから、
「ちょっとしたトラブルはあったが、第二ラウンド開始だぜサターン!」
「第二ラウンドじゃなくて最終ラウンドよ勇者アデュー!」
「言うじゃねーか魔王神!」
柱の影から飛び出した俺は走りながら、二刀流のチートとニートパワーのエネルギースラッシュを繰り返し攻防一体のバリアを生み出しつつ突撃する。
「――魔力も使わずに凄まじいパワーね。チートとニート……その力も吸収してあげるわ!」
素早いエネルギースラッシュの連射に焦りつつ、サターンは傀儡カラクリの裏に逃げ込む。これはチャンスだ!と高速で斬りかかろうとするーーと同時に、サターンは次元の彼方へ飛ばす次元魔法・ジュピタージャズを放って来た!
「うひょお!?しかも次元魔法を連射かよ!」
その無数の黒玉には当たったらアウトだ!
素早く方向を切り替え、右手にあった柱の裏に身を潜めた俺は、全身の魔力を高めて次元魔法の影響を受けないようにする。
バンバンッ! と盾にする柱に次元魔法ジュピタージャズが直撃し、消えた。次元魔法は何かに触れてそれを次元の彼方へ飛ばせば基本的に消滅するんだ。この一連の動きを見たサターンは、
「かなり機敏な動きなのね、アデュー。あそこの場面は突っ込んで来るのが当たり前のはずなのにね。ここで殺すのは勿体無い」
「それはどうも。所でこの傀儡カラクリの制御機構はどこにあるのだ?」
「今から死ぬのに知る必要は無いでしょう?」
言葉と共に、俺はは電撃魔法ライトニングプラズマを数発サターンに向けて放つ。それを素早く回避したサターンは両手を広げ凄まじい魔力球を生み出した。
「左右から間段なく射撃して柱から動けなくして仕止めてあげるわ。行け!マジックボール!」
「マジックボールを操って攻撃するのか!?ファンネルじゃねーんだぞ!」
自分が生み出したマジックボールを遠隔操作で左右から攻撃するサターンに焦る。敵ながらやっぱり魔王神はスゲーぜ。
二つのマジックボールは俺のいる柱の左右に展開し、間段なく様々な魔法を放ってくるから回避する為に走った。
(……こりゃ、ちょっと不味いな。カオリの方もそろそろ不味い……)
そう、傀儡カラクリに捕らわれているカオリを見た俺が柱の後ろで考えている間に、空中を浮遊しながら射撃する二つのマジックボールは柱の真後ろにまで迫っていた。
「終わりよ! アデュ――」
「……」
ザッ! と二つのマジックボールは柱の後ろにいる俺に最後の魔法を放とうと方向を向ける。
『――!?』
そこには俺の姿は見当たらず、対象をマグマの熱さを与えながら次元の彼方に飛ばす次元魔法・デスマーズを放とうとしていた二つのマジックボールに意識を集中するサターンの思考が一瞬停止した。
「……――! どこなのアデュー!?」
「マジックボールに集中し過ぎたのがアダになったな。頭上の勇者だよ!」
「何だと!?」
サターンが頭上を見上げると、柱の上の方にスーパー勇者のこの俺、アデューがいたぜ!
その俺は柱を蹴り傀儡カラクリの上部に磔にされるカオリの方向に向けて飛んだ。
「とどけっ!」
地上にいるサターンの火炎魔法は俺の背中をかすめるが当たらない。ガシッ! と傀儡カラクリに取りつき、よじ登ってカオリ目の前に到着した。
「久しぶりだなカオリ。魔力吸収の進行状況はどうだよ?」
「……アデュー君。ちと、このカラクリの方がの吸収が強いかな。少しの間呪いを弱めてくれれば……」
「わかったぜ相棒」
俺がカオリに笑顔を見せると、カオリの顔に血がついた。それと同時に俺は地面に向けて落下した。
「――アデュー君!」
ドサッ! と地面に落下し、そこに俺を狙撃した人物である魔王神サターンが現れた。
口元が歪む俺が今まで戦っていたサターン見ると、そのサターンは顔の変装魔法を解除して自分の顔を見せた。
「ユイ……だと?」
今まで戦ってたのは魔王神サターンの腹心ユイだった。つまり、二人はどこかで入れ替わったんだ。そのチャンスがあったのは……。
「ミーナが天井から奇襲を仕掛けた後、ユイを下の階層にワープさせる為にテレポート魔法を使った時にやけにまぶしいと思ったが、その時にチェンジしてたか。やってくれるぜ……」
今まで無理をし過ぎたユイは子豚に戻り、今度こそ本当に下の階層にワープさせられた。そして本物のサターンは言う。
「まだバナナ魔王には魔力を吸収しなきゃいけないから生かしてあるわ。そして、全てのクライマックスよ勇者アデュー」




