養豚場での魔王神サターンとの戦い
ブヒー!ブヒー!ブヒー!と養豚場の豚がうるさく鳴いてやがるな……と思いきや後ろのゴッドの鳴き声だった。
「コラ。豚より上手く鳴くんじゃねーぞ」
「のほほ!ブヒー!」
スタタタッ!とゴッドは養豚場の中を走り去る。
とりあえずゴッドはそのままにして、この養豚場の内部を見学する。豚は魔法で管理されてるだけで案外普通に生活してるな。
大きなストレスも無いようでどっかの誰かのようにのほほんとしてる豚が数多くいる。
ふと、奥の加工室に目の前の豚がワープした事に驚いた。
「はーん。なるほどな」
太ってもう食べ頃になった豚は自動的に加工室へワープし、そこで勝手に小さくなって魔法で劣化しないようにコーティングされて自動的に棚に保管させるようだ。おそらく、食べる時に元のサイズに戻されて食べるようにしてるんだろ。
「ずいぶん便利な養豚場だぜ全く」
……そろそろ見学はいいかな。
この養豚場から豚を逃がして、魔王神サターンを苦しめてやるか。勝手に逃がしても豚は外の草を食うから死にはしない。そして、サターンがこの異変に気付いた時は俺とゴッドは魔王神シティーでカオリ達を救出する……。上手く行けばいいがな。
「おいゴッド!そろそろ作戦を始めるぞ。豚と遊んでないでこっちに来いよ」
「のほほーい!」
とりあえず豚と遊んでるゴッドを招集した。
これからこの養豚場の豚を草原に解き放つ。
それから魔王神にわかるように魔力を解放して相手に俺達の存在を知らせ、魔王神サターンがここに向かってる間に魔王神シティへなるたけ早く向かう。待ってろよカオリにミーナ……早く俺が全てを解決してやるぜ!
「さて、豚共の柵を解放してどんどん草原に解き放つぞ」
「……アデュー。それは後のようじゃな」
「後?やるなら今でしょ?って誰かのことわざであるぜ……!?」
……この感覚!
珍しく硬い顔のゴッドの言葉の意味がわかったぜ。
「ゴッド、俺のうしろに隠れろ!」
「合点承知!」
「チートパワー全開!」
スボッ!とチートパワーを全開にして腰をかがめ右手を上、左手を下にして虎のように構える八卦無双の構えに出た。この構えにビビッてくれりゃ楽なんだがな。
そうこうしてる間にヤッコさんが現れたようだ……。
シュワアァァ……という煙と共に水色髪の水色セーラー服少女・魔王神サターンが現れた。
「ブヒー!何かこの養豚場あたりに巨大な魔力が現れて消えたと思ったら、君達だったのね。よく洗練された街並みがある魔王神シティーじゃなくてこの田舎養豚場に来たわね」
「敵の本質を知るには、敵の好みを知れ。というのが一つある。お前は口ぐせのブヒー!と同じで豚が好き。ならばこの養豚場を探るのがお前の世界を知る上で重要だと思ったのさ」
「ブヒヒーン!それはいい考えだね。君達やるねー」
と、ヒジでグリグリされた。
このまま攻撃してもいいのか?
でもとりあえずやめとく。
隙がありすぎて逆にこっちがカウンターをくらいそうだからな。
「ちょっと焦ったがここに来てくれたのは丁度いい。ここで倒れてもらうぜ魔王神サターン!」
「倒れるのは勇者アデューよ!ブヒー!」
こうして、養豚場での俺と魔王神サターンの戦いが始まった。
※
「肉弾戦で行くぜ!」
「お前は肉弾戦が得意なのかアデュー!」
「いや、案外苦手だ」
「わけわからんブヒー!」
養豚場内部は決して広く無い。
あくまで豚小屋の工場でしかねーからな。
だからこそ、初っ端の今なら俺にも利がある!
「ここじゃご自慢の空歩も活かせねーだろ」
「確かにブヒー」
「なら、ここで終わらせる!」
ズガガガッ!と俺の拳の連打がサターンに炸裂する。だが、サターンは自分の前にバリアーを展開してその拳の全てを受け止めた。
そのバリアーを壊す魔力を込めた右足でそれを砕き、上空に舞い上がるサターンに肉薄するーー。
「初っ端からクライマックスだぜ!」
「ーーくっ!」
左の拳を横に振り抜き顔面を叩き地面に落としつつ、瞬時に右手の拳でサターンを空中で回転させ、遠心力のまま回転する俺は右足で地面に叩き落とし、左のカカトを地面に叩きつけられるサターンの腹部に炸裂させた!
「ーーアデュー烈破!」
ズゴンッ!という爆風が上がり、豚の後ろに隠れていたゴッドが吹き飛ばされる。おいおい、豚が吹っ飛ばされないんだから耐えろよ。
やっぱり今の音で周りの豚が驚いてやがるな……いや、それ以上にゴッドが豚の後ろに隠れて驚いてやがる。ちっとは応援しろよ……。つか、また豚を盾にするな!
「お?手加減しないで攻撃したから結構なダメージのはずだがまだまだ元気だな。流石は魔王神」
フラフラ……と魔王神サターンは立ち上がる。まるで幽霊のようなツラになってやがるが、その水色の前髪の奥から覗く悪魔の瞳は地獄の青い炎が燃えるように異様な殺気に満ちてやがる。さっきより殺気がヤベーな……。
「ブヒブヒーン……。骨が砕け内蔵が数個潰れたよ……いい技だった。私の回復魔法でも一瞬で治療出来ないのは流石だよ勇者アデュー」
「そりゃ、どーも」
すると、一気にサターンはダメージが回復した。野郎……俺の苦手とする肉弾戦の必殺技から簡単に復活しやがって……。すると、自分の鼻を押し上げブヒ?という顔をするサターンは、
「アデューが肉弾戦を仕掛けてきた理由がわかったよん!」
「ほぅ?そりゃ何だい大食い痩せのサターンさんよ?」
「ブヒブヒ!そんな褒めても豚の一頭しかあげないよ!」
「褒めてねーよ!つか答えろ!」
「のほほ!そうじゃ!そうじゃ!やめてケロー!」
と、豚の後ろに隠れるゴッドは応援してくれるが、豚にワンピースの裾を引っ張られたりして半べそをかいてる。頼むから世界の神らしくしっかりしてくれ……。そして魔王の中の神は言う。
「剣を使えば風圧で豚にダメージがあるかもしれない。魔法を使えば外れた魔法は確実に豚を殺し、他の豚に恐怖が伝染する……といった所だーねアデュー?」
「気付いてたか。流石は魔王神だ。後ろの神もお前ぐらいしっかりしてくれると助かるんだがな」
「ここの豚を気にしてくれて助かるよ。案外甘い勇者なんだね。今回の勇者は。初代勇者と似てるかも知れない……」
そのサターンは養豚場の窓の外を見つつ遠い目をした。そして俺は、
「ま、初代勇者の事は知らんが豚もいつかは人間に食べられる家畜だが、今は元気に育ってくれないと困るからな。この世界の人間が楽しみしてる食料なら、あんまストレスは与えられねーだろ」
「……いい事いうね勇者アデュー。なーら私もお豚ちゃんに危害を加えないように貴方を倒すわん!ブヒー!」
水色の禍々しい魔力がサターンに展開し、その水色のセーラー服が逆立つように持ち上がり、ピンク色のパンツが見えた!
「パンツだけはピンクなのね……ってアブねぇ!魔力の円月輪かよ!宇宙の帝王プリーザンの尻尾も切れそうだな!」
「サターン円月輪!」
手の平ほどの魔力で作られた円月輪が迫り俺は回避するーー刹那!ズガガガッ!とサターンは瞬間移動したようなスピードで殴りかかってくる。龍王の身体能力向上と魔眼の先読みの力も発動し、全ての攻撃に対応した!
コイツまじで早い!
「おいサターン!俺に龍王と魔眼の力を同時に使わせるとはスゲーよ!そのピンクのパンツにも興奮するぜ!」
「そう?パンツに興奮するなんてまだまだ子供ね勇者アデュー!」
ババババッ!と光が弾けるような攻防を繰り広げ、俺達は少し後方に下がる。すると、サターンは腰をかがめて魔力の溜めに入る。つまり、次の一撃は必殺技の可能性が高いーー。
「やらせねーよ!」
一気に仕掛けようとする俺の耳に、嫌な回転の音が聞こえた。この音はーー。
「一撃目の円月輪が戻ってきてるだと!?」
反転しつつ対応するが、腹部にかすり傷をくらった。
「ぐっ!二撃目と三撃目は一撃目のオトリって事かよ。やるな!」
「この必殺技・ギガベヒーモスで死んでもらうわブヒー!」
どうやらサターンはギガベヒーモスってパンチ系の必殺技を使うらしい。凄まじい魔力だ……アレの直撃はマジーな。
(このままじゃ肉弾戦は辛いな……ここはあの神幼女の力を借りるか……
何故か周りの豚にやられてるゴッドに俺は叫ぶ。
「この戦いに勝ったら豚汁アイスを食わせてやる!俺に力を貸せゴッド!」




