謎の養豚場へ侵入するアデュー達
翌日ーー。
残る豚の丸焼きを食べた俺とゴッドは洞窟を抜け出し草原を歩き出す。
遠くを見渡せそうな丘の上に立つ。
「ここなら遠くの景色も見えそうだな。人間の視界を遮る霧のミストジャマーが結構展開してやがるが、俺の魔眼ならそんなのは通じないぜ……」
「よしアデュー!その魔眼で魔王神サターンの着替えでも覗いてやれ!ヤツはワシより貧乳だから覗く価値は無いかもしれぬがな!」
「覗く価値はある。だが、流石に魔王神の部屋までは見えないだろ」
右目の魔眼を解放し、ミストジャマーの先にある景色を見た。そこには人の住む街が見えた。その街はかなり遠くにあるが、確かに存在する。
「相当先だが確かに何か街があるな……俺の元の世界に似た街並みだ……」
「のほほ!ミストジャマーがあっても主の魔眼さえあれば問題ナッシングじゃな。さーて、レッツゴーじゃ!」
「だーが、そこに行くのは後だ」
進もうとするゴッドを肩に手をおいて動きを止める。その魔王シティーらしき都市の前に一つの広大な施設が見えたんだ。
「この近くに養豚工場がある。まずはそこだ。そこで情報を集める」
「確かに情報は必要じゃ。それに養豚場ならばもっと美味い豚がいるやもしれんぞ!のほほ!」
「確かにそうだな……豚汁とか飲みてーな」
「豚汁!?それは凄まじいスープのようじゃな!早く行くべしアデュー!おんぶしちくり!」
「おうよ!まずは魔王神の食から攻略して行くぞ!艶色にアデュー!」
と、神幼女ゴッドをおんぶして、俺は養豚場へ向かい駆けた。何か、俺はこのゴッドの父親のような気分だぜ……。
改めて言うが、コイツは色んな世界の神だ。
俺とゴッドは草原の先にある魔王神サターンの管理する養豚場にたどり着いた。
そこは俺のいた世界に似てるコンクリートで出来た三階立ての建物で、外見だけならいたって普通の養豚場だ。けど、一つだけ大きな違いがある。
「この周囲は魔力がかなり展開してやがる……ここは魔法でコントロールしてる養豚場のようだな。ほとんど人がいやしねー」
「ぬ?人がいないじゃと?ならば情報があまり手に入らないぞえ?豚の調査でもするか?」
「まぁ、全く人がいねーわけじゃねぇようだからいいか」
養豚場の中を覗くと、人の動いてる姿があった。若い女が豚のしたフンを掃除してる。どうやら豚のフンとかエサは人間が管理してるようだな。なら、情報はたくさんあるはずだ。
「とりあえず養豚場の横のプレハブ小屋に行くぞ。あそこが人間が休憩とかしてる場所だろ」
「のほほ!ならば行こうではないか!ふごっ!?」
「大きい声をだすな……頭グリグリするぞ?」
「わ、わかった。落ち着けアデュー」
俺とゴッドはプレハブ小屋の事務所に潜入した。どうやらゴッドはこめかみをグリグリされるのが嫌なようだ。
(これはいい技だ。覚えておこう……)
そして俺は事務所の中のホワイトボードや張り紙とかを見てこの養豚場などの情報を集める。
ちょこちょこと付箋で張り紙をしてんのが女らしい。すると、モゾモゾと動く白いワンピースの白髪の幼女は冷蔵庫に取り付いた。そのまま冷蔵庫の中を開けたゴッドは叫んだ。
「のほほ!見よ見よアデュー!アイスがあるぞぇ!アイスがあるぞえーっ!」
「ウルサイ。そして食うなよ。バレるぞ」
「一本ぐらいいいじゃろ」
「その箱に名前書いてあるからやめとけ。ここは我慢だ。神だろ?」
「の、のほほ!ワシは神じゃからこの程度の我慢など楽勝じゃて!……じゃて!」
「なら、よし」
そして怪しげな動きをするゴッドを横目で見つつ、色んな事が書いてあるホワイトボードを見る。
ここのスケジュールは一日一回の豚の食事とフンの清掃とかをやらなきゃならんようだ。だから午前中で作業員の仕事は終わって、この養豚場はまた魔力で管理された無人になるようだな。
「そうなら、もう昼ぐらいだからもうすぐ作業員の仕事も……?」
すると、プレハブ小屋の外から人の話し声が聞こえた。
こりゃマズイなーー。
「ヤバイ!人が来たぞ!」
「のほほ!どこに隠れる?」
「そこの掃除用具ロッカーしかねーな!とにかく入れゴッド!」
「のほほ!このロッカーはせまいぞえー?」
「仕方ねー。ほら入れ、入れ」
てなわけで、俺とゴッドは誰かが来たから掃除用具ロッカーに隠れた。……にしても狭い。
俺とゴッドは狭い掃除用具ロッカーの中でキャピキャピ騒ぐ女達の話を聞いた。
「今日は合コンじゃん。何着てく?この前はちょっとミユキとカブった格好だったから今回は教えてもらうわ」
「つか、この前の合コンの前にちゃんとメイク出来なかったし。この前はそこが敗因よ!」
「いや、素材の問題じゃね?」
「コラー!」
「ででで!今日はどんな服を着てく?私はブルーのワンピース!」
聞き耳を立てる俺は思う。
(服の話、化粧や男の話……俺の元の世界の同級生の話だ。ダンポコワールドにいた人間の話じゃねーな……まるで別人になってるなどいつもこいつも……)
こりゃ、結構この戦いは厳しくなるかもな。
全員連れて帰れるかはわからん……。
そしてしばらくするとその女達はべちゃくちゃ喋りながら外へ消えた。今日は合コンか……スゲーリアルな話だぜ。でも合コンなんてダンポコワールドには無いし、こんな事を経験してたら……。
「よーし女達は帰ったぞゴッド。早く出るぞ」
「狭い……暗い……のほほ!」
「ほげぇ!?チンコをつかむな!」
「つかむほどの大きさはあるまいチェリーボーイ」
「うるせー!」
と、ちょっとゴッドともめてムダな体力を使っちゃったぜ。そして俺はこれからの作戦を伝える。
「魔王神サターンの主食である豚を解放させてしまおうという作戦。豚解放作戦だ!」
「そのままじゃな!まーいいがのぅ」
そんなこんなでゴッドはすぐに納得した。
そして、ここで働いていた女達の話になる。
「思ったんだがあの女達の顔を見たら、どうやら奴隷的に働かせている奴はいないようだ」
「確かにそうじゃのぅ。ならとっとと奴等を元の世界に戻れると伝えてしまうのじゃ!」
「いや、奴隷だったら簡単な話だったがこれは結構厄介な問題だぞ……」
そうだ。
奴隷なら助けに来たと言えばすぐに俺の方に来るだろうが、今回はそうじゃねぇ。自分の意思でここにいたいと思われてたら、連れ戻すのは無理だ。キッカケは強制だとしても、この世界を受け入れて魔王神を信仰してるような状態なら魔力を奪われて死ぬような事があってもこっちの意見は聞いてくれねーだろうな。
とりあえず俺達は養豚場の中を見に行く。




