赤魔王ダンジョンを楽しむアデュー
赤魔王の使い魔のカラスに赤魔王ユリリの城のキーを渡され潜入をする事にした俺とカオリは、英気を養う為にゆっくり休んでから赤魔王城に向かう事にした。
使い魔はすぐに来いと言ってたけど、シティーエリアでの生活も結構楽しいしな。それに赤魔王ユリリは魔王城にずっといるわけだから焦らなくていい。
「早く来いーーー!」
ふと、俺の耳に赤魔王ユリリのような声がどこからか聞こえた。
「? カオリ、今何か聞こえたか?」
「んーん。何にも聞こえないよ? それより買い物しましょ。今日はアデュー君の世界のおでん! というのを作りましょう!」
「おう! 艶色におでんを作ってやるぜ!」
そして俺達はおでんの材料とかを、くたびれ商店街で買い物をしていた。この商店街は機械があるから俺の元の世界と似通った部分もあるから好きだぜ。
「このブースター付きの三輪車は中々使えそうだな……買い物用に買うかな?」
商店街のスーパーの乗り物コーナーで俺は考えていた。
「このロボ三輪車は子供用だが、座高を高くすれば俺でも乗れるぜ」
この店、リ・ホームの主人であるザックスが話しかけてきた。このオヤジは根性あるぜ。こんな赤魔王のエリアでまともに商売してやがるんだからな。ポンッと俺はロボ三輪車を叩くと、
「保障と配達もいらないから、二十万の所を十万にしてくんない?」
「こらまた、大きく出たね。じゃあ、もう一品何か買うなら考えてもいいぜ」
ザックスにそう言われた俺は、中古のドリルを手にした。
「このドリルをプラスで十万五千でどう? もちろん現金一括払いよ?」
「よし!交渉成立だ。じゃあ代金を頼む」
代金を求めるザックスの前に、丁度現れたカオリを差し出した。
「カオリ。支払いの方よろしくな!」
「ん?何の事?」
「おいおいアデュー! このカオリちゃんに払わせるならもっと安くしなきゃな。ったく考えたな勇者よ」
へっ……と笑う俺はザックスから貰った鍵でエンジンをかけ、座高などの調整をすると、オレンジ(三輪車の色から命名)でカオリを乗せて走り去った。ザックスから請求書を貰うカオリは、
「……何で乗り物を買っているの? 今月は出費が増えてるから、節約しろと言ったのに……」
「まー、このシティーの楽しみは楽しまないとな。赤魔王を倒したらもう来ないだろうし、赤魔王を倒せば金は自然に入って来るだろ」
「そこまで考えてたの……確かに赤魔王を倒せばもうここには来ないし、お金も入って来るね。じゃ、もっと散財してもいいかも」
「だろ? 飛ばすぜカオリ!」
ブーン! と俺はフルスロットルでロボ三輪車を飛ばした。
くたびれ通りの乾いた風が、二人の髪を撫でるように通り抜けるぜ――。
※
ブーン! と、ロボ三輪車オレンジに乗った俺はギャンブル場からの帰路を走っていた。
ここはギャンブル場もあって楽しいぜ。年も関係無く入れるから未成年の俺でも賭け事が出来る。
けど、流石にカオリを連れて行くと野郎だらけの場所だから色めき立って面倒になるからな。
ちなみにまだ、赤魔王城へは行ってない。
家のポストにはメッチャたくさんのダイレクトメールが来てるけど、俺は無視してる。
カオリは気にしてるが、何せ魔王は自分で出向く生き物じゃないからな。勇者が攻めるのを待ち構え、迎撃する。だから俺はあえて無視してる。今はギャンブルにはまってるから!
「……にしてもビギナーズラックだか知らんがメッチャ勝てたな。これにカオリの女神度が加われば正に鬼に金棒……」
なーんて事を思いつつ借りハウス前の路地を曲がろうとすると、
「あっ危ないっ!」
ドガッ! ゴロゴロゴロッ、バタッ……。
突如、物陰から飛び出してきた赤い髪の少女をひいてしまった。
「ったく、何で飛び出してくるかな!」
言いつつ、俺は赤い髪の少女の息を確認した。
そういや、この世界って免許っているのか?
一応無免許だな……。
ま、いっか。
「大丈夫か? 大丈夫だよな? なら早く起きてくれよ……って、お前マジシャンのユリリじゃん! まだこのシティーにいたの?」
「……私は事故に会ったのか? 初めての事だな。いわゆる交通事故か……」
ムクッと上半身を起こし、赤い髪を整えマジシャンのユリリは言った。コイツは二重人格だから今はどういう人間かはわからないな。このユリリが戦闘するには催眠魔法とかで操ってるのかも知れんな。でも、ケガはたいした事なくて良かったぜ。ふぅ……と俺は少し安堵し、
「大きなケガは無いみたいだけど、腕の擦り傷くらいは手当てしてあげるぜ。一応俺が犯人だし」
そんなこんなで二重人格の赤魔王ユリリをハウスに入れた。
※
カオリは料理教室に出かけてるようだから、俺がユリリの傷の手当てをする。
傷の手当てに乗じてスベスベの肌をサワサワしてるぜ……ニシシ! なんて顔は微塵も見せない俺は、
「まだこのシティーに営業の仕事があったのかユリリ?」
「う、うん。赤魔王の所で営業してたのよ。だからアデューも早く赤魔王の所へ行った方がいいんじゃない?」
「別にいいよ後で。俺はこの町を楽しんでる途中だしな!」
「でも、結構郵便でダイレクトメール送られてるでしょ? 赤魔王は言ってたよ?」
「あぁ、あんなん無視、無視。ったくストーカーかよ赤魔王の野郎」
「ストーカーじゃないでしょ!」
何かいきなり叫ぶユリリに焦る。どうやらこのユリリは赤魔王モードじゃないユリリのようだぜ。
「どうしたんだユリリ?」
「あ、いや赤魔王とさっきまで一緒だったから赤魔王側の気持ちになっちゃっててね……ゴメンねアデュー」
「ん、いいよ。赤魔王にどう思われてもいいしな」
そして、すぐにユリリの傷も癒えた。
けど、ユリリは何故かすぐに帰らずに部屋の掃除をすると言い出した。ありがたいが……何でだ?
「だって、この前お風呂入らしてもらったしコッチもサービスするわよ。勇者にコビを売るのも商売の一つって事」
(魔眼でオッパイを見せてもらったから俺の方が得をしてるんだけどな……)
「どうしたのアデュー! 鼻血出てるわよ!」
「ほげぇ!? ちょっとソファーで休むわ……」
「それがいいわ。今はカオリがいないんだからゆっくりする事ね。寝てる内に掃除を終わらせてあげるわ」
「おう、けど今は眠くないからマンガ読んでる」
「……そう。じゃあ掃除をするわね」
溜息をつくように呼吸をするユリリを気にせず、俺はマンガを読む。
ハウス内の掃除をしてもらうのはありがてー。
「もう、そのくらいで良いぜ。だいぶ綺麗になったし」
「そう? ならここでやめとくわ」
ユリリの掃除した部屋はゴチャゴチャだったコンセントが纏められ、今日出したゴミなども片付けられていて作業しやすい部屋になっていた。スゲー……ユリリは家政婦の才能もあるな。
ユリリは流しで手を洗い、コップに水を注いだ。そのコップの上に手を当てると、ジュワッと中の水が活性化した。
ゴクゴクゴクッと一気に飲み干すユリリは、
「……ん、どうした?」
コイツ……まさか炭酸を生み出したのか?
「ユリリは面白い事が出来るようだな。俺にも飲ませてよ」
「フフッ、いいよ」
新しいコップを出し、ユリリは俺用に水を入れ、活性化させた。
その水を一気に飲み干し、俺は満足した。炭酸だけじゃなくて甘みもある……いわゆるサイダーになってやがるな。
そして両手を伸ばしキレイなワキの下を見せつけるようなユリリは、
「そろそろ行こうかな。また来るよ」
「そうか。センキューな。じゃあ、また」
俺はユリリを見送った。赤魔王じゃないユリリはだいぶマシな奴だな。この人格でいてくれると助かるんだが……ん?
すると入れ違いに、キャンディキャンディ! とルンルンルンバのカオリが帰ってきた。
また新しい料理を覚えたようだな。料理教室の効果はてきめんだぜ!
「あれアデュー君。誰か来ていたの?」
「ちょっとした人身事故でね」
「人身事故?」
カオリは俺の話を聞きながら、家の中に入った。
※
その日の夕刻。
くたびれ商店街のリ・ポームでは、ザックス店長を中心に宴会が開かれていた。
その宴会の中心には、モチロン俺がいた。
「今日は勇者アデューの為に宴会を開いてくれてありがとーっ! じゃんじゃん食べて、どんどん飲んでね! 俺のお金じゃないけど!」
アーッハハハッ! と俺は会場にいる南地区の住人達を笑わせた。
キャンディ王国で暗躍していたバナナ魔王ミーナを倒し、かつてない安定を取り戻した功績で俺の存在はダンポコワールド中の住人達に知れ渡り、今や英雄のような扱いになっている。いやー、勇者も楽じゃないぜ!
ドスッ! とリ・ホームの店長ザックスは、酒で赤くなった顔をかきながら俺の横に座った。
「まさか、こんなヒョロい小僧が、あのバナナ魔王ミーナを倒しちまうとはなぁ。これなら最強の赤魔王も倒せるな。それに勇者のおかげで商売が上手くいって助かるぜ」
「とりあえず、チートポイントを集める過程で倒しただけだからねぇ……。結果的にキャンディ王国を救う気はあったけど、俺の目的は違うと所にあるから感謝されるのも違う気がするけど、まぁいいか!」
「いいって事よ!」
カキッン! とグラスで乾杯をし、俺はオレンジジュース、ザックスはビールを一気に飲み干した。
カオリはくたびれ商店街の住人から次々に酒を飲まされ、へべれけになっていた。
「……もう飲めない。やっぱ、まだ飲む!」
支離滅裂な発言をしつつ、カオリは住人達に注がれる酒をグビグヒ飲んでいった。その後、夜遅くまで宴会は盛り上がった。さて、デスファイアーダンジョンも楽しんだし、赤魔王ユリリも別人格で急かして来るからもらったキーを持って赤魔王城へ攻め込むとするかな!




