くたびれ商店街で生活するアデュー
デスファイアーダンジョン赤魔王城下・くたびれ通り商店街。
とりあえず赤魔王との戦いの為に俺とカオリは生活拠点を整える事にした。
何せ一日で倒せないとなると泊まらないとならないしな。
ここは赤魔王の管理するエリアだけど、商業地域でもあるから他国の人間も生活は出来る。
ので、ここで生活しよう。
「よっしゃ! ここで赤魔王倒すまで生活すっぞカオリ!」
「はいな!」
そんなこんなで俺はネジやジャンクパーツの基盤などをリ・ホームで買い、ザックス店長と軽く話しをし、食料品を買う為にスーパーに寄った。
食べ物はカンパンや固形食品しか置いてないが、味の種類が豊富にある為になんとか飽きずに過ごせる。もともと、人間の数が全ての地区を合わせても百人くらいしかおらず、人間が必要とする物はあまり充実はしていない。
今日分かった事は、この赤魔王エリアにいる人間に共通する点は、皆機械に強いという事だった。その人間達がこの閉鎖された街を大きくしていったらしい。
そんな俺もこの辺のゴロツキを倒していくうちに、人々のヒーロー的な存在になっていった。ま、艶色な勇者だからな!
「飲み水はまだあるから、コーンマヨ味とシーチキンとおかかのケロリーメイトを、十個買えばいいか。ん……何だろ?」
買い物カゴに買うものを入れつつ、何やら騒がしいロボだかりの場所を見た。
すると、一人のマジシャン風の赤髪の長い女がマジックをしていた。
「私の右手の中に折りたたまれたトランプはハートのエース。左手には何も無いわね?」
マジシャンの女は左手を客の方にパーの形にして広げ、右手はグーにして硬く閉じている。
客は皆うなずき、女は左手をグッと閉じた。
そして右手を開くと手の中にあったはずのトランプは無く、閉じた左手を開くとたたまれたトランプが出てきた。折りたたまれたトランプを開き、客に見せた。
それは右手の中にあったハートのエース。
オオーーッ!
と観客からの大きな声が上がり、マジックは幕を閉じた。
「へえっ、マジックショーがこの街にあるなんてスゲーな。赤魔王のデスファイアーダンジョンは結構自由なんだな」
俺は客がはけてから、道具の片付けをするマジシャンに話しかけた。
「このデスファイアーダンジョンのシティーエリアは自由ではあるけど閉鎖された錆びれた街だからね、娯楽も必要よ。でも、人間の少年なんてめずらしいわね。全ての地区を巡業しているけど、魔王エリアに少年なんて初めて見たわ」
「昨日からデスファイアーダンジョンに来た勇者アデューだ。目的は赤魔王を倒しチートポイントを手に入れる事だ」
「……私はユリリ・トランプ。見ての通りマジシャンよ」
俺とマジシャンのユリリはその後色々と語り意気投合し、ユリリは俺とカオリの借りてるハウスに泊まる事になった。
カオリには内緒だけど、大丈夫だよな?
勇者はモテるから辛いぜ!
※
ポチャン……。
天井に集まる湯気によってできた雫が湯船に落ちる。
「入浴剤があるなんて、気が利くねアデュー君!」
「一日の終わりは湯船に浸かるんだから当たり前だろ? なーユリリ?」
「そうね……これは気持ちいいわ。裸も隠せるからタオルを巻く必要も無いし」
この会話でわかる通り、俺はそこそこ広い湯船に三人で浸かっている。
美少女二人と全裸入浴なんてサイコーだぜ!
……けど、ユリリの言う通り湯船には赤い入浴剤が入ってるから二人の裸は見えない……残念!
明鏡止水の境地斬り? ……なんて意味のねー事は言ってられねー。
全てを見透かす魔眼の力をバレないように発動させながら俺は二人のオッパイをチラ見しつつ、覗きがバレないように湯船に浮かぶヒヨコ人形を指ではじきながら言う。
「ユリリは多くの魔王ダンジョンエリアを巡業しているならチートポイントランニング一位の最強魔王・赤の魔王城に入った事があるのか?」
「ええ、あるわ。支配者もマジックショーを見たい人もいるからね。数回会った事もあるわね。赤魔王はとてつもない美少女よ。髪は赤くサラサラでいつもジャンプーの香りがして肌はツヤツヤ。それに手足は長くて胸も大きい。それはまるで天使のような存在……誰もが認める完璧美少女ね。えっへん!」
と、胸を張って赤魔王を熱く語るユリリに対しビュー! と水鉄砲をかましたカオリは、
「て、何でユリリがえっへん! なの?」
「それは最強の赤魔王と会った事がある自慢のえっへん! よ。特に気にしないでチョンマゲ!」
『チョンマゲ?』
と、俺とカオリは首をかしげる。
「チョンマゲなのよ! 私のアソコはね! それより、赤魔王城は特殊なキーが無いと侵入出来ないわよ。アソコは知っての通り結界が張られてるからね……確か赤魔王はエリアの方は空間を操るって噂があるわね」
「なるほど。エリアは空間を操るのか……。超能力の類いかな?」
ユリリが答えたことに、俺は納得した。
そして、ボチャン!とカオリは赤い湯船に頭ごと沈んだ。俺は魔眼で堂々と血の池のような湯船の中を覗く。そこには凄まじい光景が映し出されていた!
「ちょっと、カオリ! どこ触ってんの!」
モミモミモミッとユリリの巨乳をカオリは揉んだ。
そしてグリグリグリッと乳首をいじる。
そう、カオリは人をいじるのは好きな方だ。
人畜無害な美少女のフリをしつつも、ツッコム時はツッコムし、相手の弱点攻撃をさせたら天下一品だぜ!
「あははっ!もうやめて!」
ザバッ! と後ろ髪を前に垂らしたカオリが湯船から現れた。
「きゃあ!全く、驚かせないでよ。驚かすのは私の仕事なんだから」
「怒らない、怒らない。それにしても、ユリリの乳首は少し長いのね。私なんて陥没気味よ」
ユリリはカオリ乳首を触った。
俺の存在を忘れてるのか……?
「陥没乳首はマジックじゃ直せないけど、そのかわり新ネタのマジックを見せてあげるわ」
そう言ったユリリは、湯船の中でカオリの全身を指先でツツーとなぞった。
「あっ……あっ……」
ユリリの指先にカオリは感じてしまい、甘い声が漏れる。
「もっと、もっと感じるのよ」
更にユリリはカオリの股間を指先で攻める。
「ああーーっ!」
とカオリが絶頂に達した瞬間――。
ブァサァッ!。
湯船の中に、トランプが広がった。
それに驚く俺は、
「うわっ、すごいな!トランプの湯船じゃないか!」
赤のの長い髪を後ろに流したユリリは、
「このトランプの中に一枚、勇者アデューの顔が映ってるのがあるわ。探してみなさい」
「えっ、ほんとに!?」
ガサガサッとトランプだらけの湯船から、自分の顔が映ったトランプを探す。
浮かんでいる全てのトランプをめくってみたが、どれも普通のトランプだ……。
そう思ったとき、俺の下半身に何かが引っかかっている気がした。
スッと手に取り湯船の中から出すと、
「あっ、発見!」
俺のイケメン顔が映ったトランプを発見した。
「お見事! それはおみくじにもなっているから、中も見てみて」
ユリリにそう言われ、少しめくれた場所からはがしてみると――。
「これは……!」
その内容を読んで、俺は表情を曇らせた。
異変に気付いたカオリはそのトランプを見た。
〈赤魔王城に訪れた時、貴方の命とチートポイントを頂きます。by赤魔王>
「何がby赤魔王だ! 上等だぜ赤魔王!」
パチンッ! と湯船を叩き、俺は立ち上がった。
そしてカオリも立ち上がり、
「負けないでねアデュー君。ユリリはアデュー君のアソコを見てノックアウトされてるけど……」
ん? 何で俺のアソコが……。
「!? やべっ、立ち上がってからあそこも立ち上がってチンコ丸出しだった……ってユリリ助けねーと!」
俺のチンコを目撃してしまい、プカプカと浮かぶユリリを抱えた。照れるぜ!
そして三人は湯船を出た。
湯船の中には、トランプに浮かぶ場所を無くされたヒヨコ人形が残された。
※
翌朝。
カオリにイタズラされたマジシャンのユリリはマジシャンの営業の為にどこかへ旅立った。
美少女だし、いいオッパイの女だったな!
ジョボジョボジョボ……ってこれはションベンの音じゃねーよ?
ヤカンの鼻から熱いお湯が、コップ二杯分注がれる。
カオリはコーヒーの粉を入れ、かきまぜて各々の前に置く。
「アデュー君元気無いわね。どうしたの?」
「どうしたも、こうしたもない。昨日の風呂で赤魔王にトランプで戦線布告された事が気になってな」
「それもあるけど、掃除が大変だったからイラついてるの?」
「そーだよ!濡れたトランプがメッチャ浴槽に張り付いてて、掃除スゲー大変だったぜ!完全にヒーハーな大変さだったぜよ!」
「でもオッパイ見れたんだから、むしろそれくらいはしなきゃね!」
「確かに……そうだな。オッパイは何ものにも変えられぬ神秘のお椀」
俺は昨日の夜、カオリとユリリ達と入った後の風呂掃除をさせられていた。
無論、湯船の中の大量のトランプもだ!
普段はミルクを入れないと飲めないコーヒーを、ブラックのまま俺は飲み続ける。
その姿にフフッとカオリは笑った。
「アデュー君は今日、赤魔王城に行くの?」
「あんな挑戦状貰ったら、赤魔王城に先に行かなきゃならないだろ。けども、今はやめとく。このシティーの連中とも仲良くなったし、どうせ世界最強の赤魔王を倒せばチートポイントランニング一位になるしな」
ツナマヨ味のケロリーメイトを食べつつ、俺はカオリに答える。
「……確かにそうだね。焦っても仕方がないか。それに、アデュー君も私の処女を奪うのもまだまだ先だろうし」
「そ、そんなん軽くいけるぜ!俺はビッグマグナムだからヒーハー言わせてやるぜ!」
「フフフ。アソコがデカイだけじゃ、女の子は喜ばないよ。大事なのは心。分かってるくせに強がるアデュー君は好きだよ」
「……へっ、あんがとよカオリ」
と、二人が際どい会話をしていると、俺の意識が揺らぐ。
プシュー……。
身体から煙を上げ、俺の動作が停止した。
「飲めないブラックなんか飲むからよ。全くしょうがないんだからアデュー君は」
「悪い……何か赤魔王というより、お前の処女の事で俺もビビってたみてーだ。魔王よりも処女を奪う方が怖いわ。下手すりゃ、お前の一生の傷になるからな」
「ま、そんな大したもんじゃないわよ。ガッツリ来てね!」
バシッ!と俺の背中をカオリは叩く。
そして、このシティーの名物でもあるたい焼きを食べる。
この世界にもたい焼きがあるとはな……考える事は人間皆同じってヤツか。
パクリパクリと飲むようにたい焼きを食べるカオリは、
「たい焼き美味しいね。これは本当の魚じゃないけど、本当の魚も食べたくなるね」
「そうだな。確かに魚も食いたいな。どうしても魚関係はダンポコワールド全体で食べられてるものじゃねーからな。日持ちの問題があるから……」
……魚か。
確かにいいかもな。
これから最強魔王を相手にするにゃ、最高の案かも知れん。
「んじゃ、今日は釣りにでも行くか。カオリに魚釣りを教えてやる。キャンディ王国じゃやった事無いだろ?」
「うん、無いね。あんまし魚とかも食べないし。じゃ、教えてもらおうかな。キャンディ! キャンディ!」
そんなこんなで俺とカオリは森の奥の川にたどり着く。
「あーいい天気だぜ。何か眠くなって来た」
「寝てていいよ? 私が竿を見ておくから」
「おう、任せた……って俺の竿を見なくていい!」
「ハハハッ! 何かモッコリしてたからね」
「シワだ! シワ! ちゃんと釣竿を見とけよ? 竿が動いたらビュ! と引くんだ。いいな?」
「よし! ビュ! と夜のアデュー君のように出すのね! キャンディ! キャンディ!」
「アホか! 寝るぞ俺は!」
全く面白い女だぜカオリは。
小一時間ほど寝てると、カオリは10匹ほとの魚を釣っていた。
やるじゃねーか……今夜は魚パーティーだぜ。
「……?」
その川辺に、一人の美少女が歩いてきた。
「ほーら釣れた。釣りはノンビリやるもんだ」
釣りをやめて、俺は立ち上がる。
赤魔王城に向かわない俺達にしびれを切らした赤魔王が来たようだぜ。