07
リーダーが椎名さんの腕をとって部下に言う。
「リンクス、オレが連れてくから先に報告に行け」
つかの間、人払いができたせつな彼が小声で聞いてきた。
「何してたの? 今日休みって聞いたような?」
「カイモノの途中でつかまったんだ」
相手は、何かの任務だと思ったらしく、深刻な顔をしながら
「偶然だけど……よかったなあ、でも、誰からの命令で動いてたんだ?」
と聞くので
「うちのカアチャン」
と、答えた。グラスホッパーはきょとんとしている。
「それよか、」
椎名さん、彼に引率される間もうつむきながらささやく。
「ケインとラスコーがいるだろ、あいつらにも口止めしてくれ」
「わかった」二人を大声で呼ぶ。
その間に椎名さんは自分の尻ポケットをさぐってみた。
やはり財布を落としてきたようだ。金も全部あの中だし、いつもはできるだけ私物を持ち歩かないのに、今日に限ってレンタルビデオ屋の会員証も入れていた。
姉御の部屋に落ちたままだとマズイ。
脇のリーダーにもう一つ頼みごとをする。
「ついでに、タクシー代貸してくんないか」
「ちょっと待てよ」
そばに走ってきた二人に、何か小声で説明している。ちょうど暗がりに立っていたので、彼らはリーダーから話を聞いて急に
「うえっ?」「マジ?」
とこちらをのぞこうとした。
「バカ、見るな」
彼らのリーダーは怒って二人を押し返す。
「それよか、ケイン、金持ってるか」ふり向いて聞く。「いくら?」
「ここがどこだか判らんが…横浜のあざみ野まで行きたい」
「ケイン、一万円……いやもう千円出せ」
えええ? と哀しげな声をあげて、それでもケイン、装備の間から札入れを出す。
「一万一千円ね、はい、オジサン」
わざと、『オジサン』を強調して、ケインは彼の手に札を握らせた。小声で
「あとでちゃんと返してくださいね」
と言うので、卑屈な声で
「ありがとうごぜえます」
と頭を下げる。
ちょうど報告を終えたリンクスが戻ってきた。親しげに彼に声をかける。
「おじさん、すぐ帰っていいってさ。よかったね」
それから心配そうな顔でこう訊ねた。
「ところでおじさんは、どこで寝泊まりしてたの?」
「ハイ……おもに新横浜ですが」
たまたま聴こえてしまったラスコーがぷっと吹き出し、リーダーに思い切りどつかれた。




