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08

 姉御の部屋に戻った。どうにか。

 タクシーは1万770円もかかった。お釣りは230円しか残っていない。

 そっと鍵を開けると(いつもルディーとかボビーとか部下にやらせているので、手間取った)、部屋はもぬけの殻だった。

 あちこち散らかしっ放し、さっきいただきそこねたお茶のカップもそのままになっている。

 一通り部屋を捜してみるが、やはり誰もいないし、隠れている様子もない。

 駐車場に車が残っているのが見えた。

 ということは……椎名さんは少し目をさまよわせる。

 ヤツらの車かタクシーでどこかに連れて行かれたに違いない。

 ちょっとだけホッとしたのが、自分の財布がキッチンの床に落ちていたこと。

 しかし、中をみてがっくり肩を落とす。

 ビデオのカードは残されていたが、五千円札はきっちり抜かれていた。

 このまま帰ろうか、とも思う。

 自転車の置いてあるスーパーまでは、さっきは車で来たから10分ほどで済んだが、歩いたら一時間近くかかる。それでもとりあえずどこかでコショーは買えるだろう、230円以内ならば。

 今日はオフだし、あちらにはあちらの事情があるだろうし、これ以上彼女を追う義理はない。

 しかし……椎名さんはここで迷う。

 無理やり、どこかに連れて行かれたのだとしたら、どうする?

 オレに対してもあの仕打ち、彼女だって、無事だとは言い切れない。

 あてもなく、部屋を見て回る。

 キッチンからつづくリビング、ドアに仕切られた和室、寝室、クローゼットルーム、バスルーム……

 バスルーム手前の脱衣所、洗面台の鏡に、何かついている。

 近づいてみると、赤いキスマークだった。鏡に押しつけたのだろう、玲子さんの唇の高さだ。

 すぐ下の引き出しが少し、開いていた。

 引き出すと、白いタオルが一枚、たたんで入れてある。それをそっとどけてみると、下に折れたルージュ。そして、殴り書きの文字。


 ニイガタ


 タの字の最後は、紅が固まってついていた。隠れて書いたのだろうが、急かされて折れてしまったのか。

 多分、見つけられないようにタオルをかぶせて引き出しを閉め、そのまま出ていったのだ。

 新潟……パスポートがどうとか言ってたな、あのサメ野郎。すると、空港だろうか?

 急いで電話をさがす。が、固定電話はひいてないようだった。どこにもない。

 こんな時に携帯も持ってなかったオレ! バカバカ、と叫びながら表に飛び出す。

 駐車場には赤いS3000がぽつりとひとつ取り残されている。

 キーは? ついてるわけない、って、ついてるし!

 エンジン全開、ぶっとばせ!!


 今日初めて、ツキを感じた椎名さんでした。

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