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17.焼身

▽▽▽▽▽▽▽▽▽▽▽▽▽▽▽▽

ハコスの奴、インターホン押して固まってたけど何してやがんだ?

おら、とっととなんかヤレ!!

ジェスチャーで『イケ!』と伝える。


何とも言えない目でこちらを見つめている。

やっぱり囮役はオイラがやるべきだったか……?そう思っていた時、屋敷の玄関が開く。

おい、ハコスの陰でよく見えなかったが女じゃなかったか!?


もうちょい視線をずらせば見えるか……?

あ~ドアが閉まっちまった。美人の雰囲気がしたから、見たかったんだが……

後でジョークに問いただしてやる。


「おい、スティンキー。そこで何をしている?」


聞きたくない声が聞こえた気がした。


「おい、そのモヒカン頭はスティンキーだろ。顔が見えないからバレないとでも思ってるのか。藪に沈むな!出てこい!」


「仕方ねぇな……よぉ、昨日ぶりだなブライアン」


相変わらず眉間にしわを寄せて、代わり映えのしない黒いスーツ姿。いや、昨日やりあったから、髪は短くなってるな。


「今すぐ、この場から消えろ。せっかく拾った命を無駄にするな」

「ワリィな、そいつはできねぇ。ここで人と待ち合わせしてるんでな」


ブライアンが少し目を伏せて、懐から何かをゆっくり取り出した。

なんだ……?注射器に見えるが、ガラス部分から見える内部に異様な結晶と紫の液体。体内に入れたらヤバいことは明らかだ。

飛ばしてくるのか。すぐに反応するために、腰を低くする。


「そう警戒するな。こいつを打ち込むのは俺自身だ」


「……コカインには見えねぇぞ、それ」


「スティンキー、俺はお前みたいに自由に生きられねぇ……」

「おい、ブライアン?急にどうし……」

「黙って聞けや!!」


ブライアンが叫ぶ。なんだ、様子が変だ。

いつものスカした余裕がない。表情も、まるでこれから死にに行くような……

鉄砲玉部隊のやつらが良くする顔……


「ったく、若頭からの命令でやるとはいえ、最後に話すのがお前か……だが、お前の前なら心置きなく叫べるか」


ブライアンが無邪気な笑みを浮かべる。その顔に、何も言えなかった。

初めて見る表情に戸惑ったオイラに向かって、さらに続ける。


「誰だって一度は考えるよな、こういうの。実際に言える場面は来ないけどよ……お前はいつだってノリノリで叫んでた。正直ちょっと羨ましかったんだぜスティンキー」


「……何するつもりだ、止せブライアン!!」


(おとこ)ブライアンの心火(しんか)を燃やした散り様、その身に焼き付けろや!!……【焼身劫火】(レイジマン)!!!」


ブライアンが注射器を首に刺して、薬が減っていく。技名を叫んで、髪が焼け縮んだ瞬間___

爆風がオイラの体を吹き飛ばした。屋敷の塀に叩きつけられ、痛みに呻きながらアイツに目を向ける。


全身がひび割れるようにして炎が噴き出して、豪焔が奴を中心に渦巻いている。

くそ、こんな火力……人の身で出していい威力じゃねえぞ!

ブライアンはほとんど意識もない状態で立ち、火を出し続けてる。野郎、間違いなく死ぬ気だ。


リベンジマッチがまだだろうが、勝ち逃げなんか……させるかよ。


「おい、スティンキー!何があった!?」


「いいタイミングだジョーク。って後ろの超絶美人は誰だコラァ!!」


青色の髪をポニテで結った女。オーバーサイズのワイシャツで体を隠してるけど……おい、その中履いてないんじゃないのか!?

ハコスこの野郎、屋敷の中で一発ヤってやがったのか!


「秘書さん!?ついて来ちゃったんですか!……ってまずはあの炎が先だろ!」


「ワタシもお力になれると思いますよ!」


秘書の青い髪がはらりと揺れながら短くなる。彼女が手を構えた途端に、ブライアンから吹く熱風が、オイラたちを避けるような流れに変わる。


「ワタシの前方に力を流しています!けど、長くは持ちません!」


「最高の女じゃねぇかよ!ジョーク、オイラにあいつを殴らせろ!」


最速でぶち抜いて殴る。

オイラにできる最高最善の方法。


「スティンキー、こっちに!押し出す!」


ハコスの髪が縮んで、塀の一部が四角く縁取られる。

それを背に、オイラも髪を縮める。

いつもの粘着液じゃ、この火に焼かれて意味がねぇ。出すのは粘着性を少なく、水気を含ませた___


【摩擦零】(ローション)!!」


全身からとろりと透明な液体が分泌される。

おっと、これ、直立するの難しいな。前傾姿勢で構える。


「行くぞスティンキー!」

「なら、技名叫べジョーク!!」

「……っ!あぁわかったよ!!行くぞこの!【バネ最大強化】(メガバウンド)!」


パカっと塀の一部が開くと、極太の紙バネが射出された。

バネのスピードがそのままオイラの背を押す。弾丸が放たれるように地面を滑る。

秘書の横を一瞬で通り過ぎ、さらに加速する。


炎をぶち抜いて、風を切るオイラの拳が、ブライアンの焦げた顔面に突き刺さる。


オイラはお前の悔しがる顔が好きだったんだ。

殴られて、そんな安らかな顔してんじゃねぇよ……


……くそったれ。

あばよ兄弟。

ローションで滑るのが俺の人生だった。

だから、俺とお前は兄弟だった。


本当に、惜しい奴を亡くしたぜ、あばよ兄弟。

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