16.潜入?
メラニンシティ、北エリア。住宅街外れの一角。
整えられた芝生に20人は入れそうなプール、先のとがった柵で囲われたオレンジ色の屋根の屋敷。ドッドファミリーの拠点の1つらしい。その屋敷前に、俺たちは居た。
「おいスティンキー、お前こんなところにいて大丈夫なのかよ?」
「バレたらマズいだろうな、でもお前がミスらなきゃ問題ねぇ。いいか、作戦をおさらいするぞ」
にやりとアコギな笑みを浮かべるスティンキーが続ける。
「今回オイラたちの目的は情報だ。ドッドファミリーがなんでブレイズフォードに近づいたのかを探る。あわよくば近づかないように釘を差せる弱みを握る」
「お前、そんな長いセリフ言えたのか……」
「茶化すな!んで侵入方法だが、お前が配達する体で屋敷を訪ねる。なるべく注意を引き付けるようにしてくれよ。監視の目がお前に向いてる間に、オイラが屋敷に入って情報を奪取。いいな?」
よくはない。こいつに潜入なんてできるか心配だし、何より俺が玄関口で時間稼ぎとかできる気がしない。俺がスタイロムだったら、もっとスマートに潜入できたんだが……
たらればの話をしても仕方ない。俺らの頭じゃこれよりいい案は出ず、決まってしまったんだ。
「じゃあな、頼んだぜジョーク」
背を向けてガザガサと藪の中に入るスティンキーをジト目で睨む。
ふぅ……やってやるよ、手汗をズボンで拭き取りインターホンを押した。
「はい、あら……どちら様?」
インターホンから聞こえてきたのは若い女の声。
ドスの利いた野郎の声が来ると思っていただけに、一拍反応が遅れた。
「あ、えとYamazonです、注文の品をお届けに参りました」
「そうなの。ご苦労様、マフィンを焼いていたの。よかったら上がっていって」
有無を言わさぬ強引な歓迎。というか……
え、マフィン?俺、マフィアの拠点に来たはずだよな?間違ったか?
改めて屋敷の外観を見る。情報通りの外観。
藪の中のスティンキーがGOサインを出している。なんなんだアイツ……
玄関の扉が開き、声の主が出てくる。
「ワタシしかいなくて、食べきれなかったの。さぁ、入って」
出てきたのは妖艶な美女。
はち切れそうなワイシャツにはじけ飛びそうなスラックス、布が悲鳴を上げている。
エプロンで隠し切れない程の、むっちむちワガママボディをした青色の髪をポニテに結った若い女。
たしか、ダミニクの秘書……!
こんないい女を秘書にして侍らせているとは、許せんっ!!(血涙)
そんなことを考えている間に、屋敷に通されリビングでコーヒーと焼きたてのマフィンをご馳走になる。
「うっっっっっま!しっとりふわふわ!」
「うふふ、アタシが焼いたの。お口に合ってよかったわ!」
この女性が!?
仕事もできて、料理できて、このボディの女性なんて、最高すぎる!!
くっそ~!!めちゃくちゃ抱かれてんだろうな!
ふと美女が思い出したように言った。
「いけない、ヨガの時間だわ。ワタシ集中するから、ゆっくりしていて」
「ほえ?いいんでつか?」
「もちろんよ、でもここから出て左のドアには入らないでね。オーナーの書斎なの」
おぉ、有益な情報を手に入れたんじゃないか?
秘書さんには悪いが、お邪魔させて……っ!!!?
彼女はヨガマットを敷くと、プチンプチンとシャツのボタンを外す。
現れたのは一切の穢れを感じない白い肌。
細い指がへその下のホックを外す、大きな尻をなでるようにして窮屈そうなスラックスから解放される。
紫の透けたパンティから熟れた果実を思わせるヒップが覗く。細い首、鎖骨の視線が流れる。豊満な、いやそれよりもっと暴力的。美の女神のような肉体が惜しげもなく光を浴びる。
のびのびとポーズを決める姿は、何にも例えがたい芸術作品だった。
っていかん!見とれていた!
こんなポーズ、絶対誘ってるだろ……
あぁ!!そんな大胆に!!?
って違う!思考がそっち方面に向いてしまう!
様子を見る限り、秘書さんは本当に集中しているようだ。
行くなら今しかない。
______________________________
誘惑を振り切り、書斎に入る。
思ったより広い。入ってすぐにローテーブルを囲むように革張りのソファが並び、棚によくわからん壺が並んでいた。壁一面に書類ファイルや本が並び、その前にモニターが映ったままのデスクが置かれている。
とりあえずエラに渡されたメモリをPCに差し込む。データはこれで盗れるって言ってたし、間違ってないはず。お、ダウンロードが始まったな。
手持ち無沙汰になり、棚からファイルを取り出してみる。
中は……ふむ、契約書に権利書、すごい量だな。一応スマホで写真を撮っておく。
ふとローテーブルの上を見ると、吸い殻の残った灰皿と腕輪、と……おいおい、これって帳簿か?
なんでこんなとこに……
腕輪と帳簿を訝しげな眼で見ていると、外で爆炎が上がる。
スティンキーの野郎、何やらかしやがった!!




