11.焼殺
お待たせしました
「焼き殺す」
「はっ!やってみろ!」
ブライアンは拳を構え、振りぬいた。
スティンキーはあえて避けず顔面に受ける。パンチの衝撃と同時に皮膚が焼ける。
殴られた顔の左側を庇うように手で覆う。反射的に半歩下がるが、すぐに戻した。
「ぐぁっつ!」
「……なんで避けなかった?」
「最初の一発だからなぁ……互いに食らいあう方が楽しいだろ?」
「気狂いめ……」
顔を庇っていた手をおろして、拳を構える。
ステップは踏まない、お互い立ち止まっての真っ向勝負。
スティンキーの左半面、側頭部の方まで焼けて、すでに刈り込み線はなくなっていた。
モヒカンが少し短くなる。ドロリと体表を覆うように能力を発動する。
「【粘着液纏い】!!」
「耐久力を挙げたつもりか?だが、そんなものは無意味だ」
ブライアンの鋭いブローがスティンキーの側腹部に刺さる。
纏った粘着液を瞬時に燃焼させ、タンクトップに大穴を開けた。
「ぐっがぁ……っ!」
「お前の能力に火を防ぐ術はない。それに、俺の火はお前の粘着液が乾くまで燃え続けるぞ」
ブライアンの両手には今だ火が燈り続けている。追加で髪が短くなる様子もないため、一度の発動の効果時間が長いと考えられる。スティンキーの能力は粘着液を分泌する際に分泌量に応じて髪を消費する。一度出した粘着液は当然劣化が進む。この勝負は時間をかけるほどスティンキーに不利になるものだった。
しかし、それを理解して尚、スティンキーは笑みを深める。
「ノってきたぜ、最高の気分だなぁ!」
「こいつ……っ!いいだろう、黒焦げにしてやるっ!」
ブライアンの右ストレートを腕でガードして滑らす。そのままカウンターの要領で顔面にフックが刺さる。血の味には慣れているようだ。ブライアンはすぐに左の拳を振りぬく。
肩で受けるように防御し、姿勢を崩しつつも再度パンチを繰り出す。
交互に受け、殴る。何度も繰り返し、辺りに血と粘着液と焦げ臭い匂いが充満する。
息も絶え絶えで、パンチのキレもない。二人は意地だけでその場に立っていた。
「……はぁ……はぁ……スティンキー!!前からお前のことは気に入らなかったんだ……!指示通りに動かない……!どんな危険な現場からも生きて帰ってくる……!放たれた銃弾が、手元に戻ってくんじゃ……ねぇよ!!」
「はぁ……ぁははあ!オイラはお前のこと、だぁ~い好きだぜブライアン~!!お前のくそつまんねぇプランをぶち壊しにするとよぉ!今みてぇにお前の面白い面をおがめるからなぁ!!」
「ぶち殺す……っ!!」
ブライアンのパーマヘアがさらに短くなり、両手の火が焚ける。
ボォウと赤い軌跡を描いて、スティンキーの半身を飲み込むほどに大きな炎が上がった。
声を上げる間もなく炎に焼かれ、スティンキーは背中を地面につける。
「……はぁ……はぁ……クソが、無駄な体力を……使わせやがって……おい、お前ら、このゴミをどこかに捨てておけ」
息を整えつつ、部下に指示を出した。さぁ、仕事に戻ろうと振り返る瞬間___
パァン!!
銃声のような音が響き、その場の全員が一瞬で身を屈める。
『MCPDだっ!全員おとなしくしろぉ!!』
「やべぇ!サツだ!全員ズラかるぞ!!」
ブライアンは即座に部下に指示を出し、その場を後にする。
_______________
背を地につけて明けていく空を眺めているスティンキーの前に、影が差した。
「派手に楽しんだようだな。『蜘蛛男』」
霞む目を声のほうに向けると、深緑にピンクのメッシュの入った髪が見えた。
酒場で見た時より、少し短くなった髪。
「……ジョーク……サツの真似事も……できるのか……」
「おう、芸達者だろ?おら、肩貸してやるよ」
「優しくして……くれ……」
「はは、見ろ。鳥肌が立ったぞ?地面で寝たくなきゃ口閉じてろ」
背負うように引き起こした体は重く、素人目で見ても重症に見えた。
このあたりなら、ドクター・リンプの診療所が近いな。体力の限界だったのか、静かになったスティンキーの呼吸を感じながら歩む。
ふと、自分のしていることにツッコミが入る。なんでこいつを助けたのか……せっかくのオフで、楽しく酒を飲んで……あぁ、そうか。こいつに一杯奢ってもらったんだったか。なら、仕方ない。
そう自分に言い訳した。
週1投稿かな?




