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10.酒場

「落ち着けよ、オイラは酒を飲んでるだけだ。子供と酒のうまい店には手は出さねぇよ」


「なんか雰囲気違うな、あの時のお前はもっと『ヒャッハー!』って感じだったのに」


スティンキーが鼻で笑う。


「バカおめぇ、酒の席でふざけるのはまだ酒に慣れてねぇガキだけだ。この店はそんな奴の来るとこじゃねぇ」


グラスを揺らして、ランプの灯でウイスキーが光る。

口を閉じて、ただうまい酒を楽しむ。そんな男しかいない空間に無粋な音が入り込む。

スティンキーはスマホを取り出して、チャイムに出た。


「なんだ?今は忙しい、またかけ直す……あ?オイラの仕事にケチ付けんのか?」


何やら言い争うような物言いだった。

さっきまでのいい雰囲気を台無しにされ、俺は少し不機嫌になる。


「あそこは酒の旨いバーの近くだったんだ、暴れはしねぇ!能力だけ寄越せ?何するつもりだコラ!店になんかあったら承知しねぇぞ!!」

「おい、スティンキー」


思わず声をかけてしまった。

奴が、じろりと睨むようにこちらを向く。

俺も酔っていた。睨みかえして、このバカに店のマナーを教えてやる。


「おい、酒が不味くなんだろ。ここでお前の血みどろの汚ぇ仕事の話なんかすんな……!」

「ンだとコラァ!」

「悔しかったらまともにお天道様の下を歩ける仕事しろや!日の下で呑む酒は格別だぞ~?」


スティンキーは顔を真っ赤にして、歯を食いしばる。

ふぅ。一息いれて、同時に席に座った。


「ジョークボーイ、お前の言うことは間違ってねぇ。オイラの仕事はクソだ」


ぽつりとこぼした。


「でも、今更どうしようもねぇんだ」

「バカ野郎。お前はどうにでもなるだろうが!フィジカルに能力、大抵のことはできるだろうが……!なんでマフィアの鉄砲玉なんかやってんだ」


スティンキーは目を見開く。

寂しそうに少し笑って言った。


「お前よぉ……殺されかけた相手によくそんなことが聞けるな」

「何笑ってんだ!俺はお前が羨ましいんだよ!チクショウ!!」


グラスの残りを一気に煽る。喉の焼けるような暑さが、理性をさらに溶かす。


「俺は何者でもいいからなりたかったんだよ……っ!俺の能力(ちから)はただのびっくり箱だ。弱すぎて仕事じゃ使えないし、金にもなりゃしねぇ……どこも雇ってくれずに、フラフラして、配達屋にしかなれなかったんだ。」


こんなこと、こいつに言うつもりじゃなかったのに、言ったところでどうしようもないのに。

それでも止まれなかった。


「襲われた時も、酒を飲んでるときもお前は楽しそうに見えた……どこでも楽しくやれる奴だと思えたんだよ」


「どこでも楽しくやれるねぇ……お前は人を見る目がないな。でも、ありがとよ」


スティンキーは寂しそうに笑って、席を立った。

カウンターには二人分の金額が置かれていた。


らしくもなくアツくなってしまった頭を冷やすように、氷を噛む。

また、あいつとどこかで出会うのだろう。この街の住民の敵である|ドッドファミリーの一員あいつと。どうせならまたこの店で会いたいと強く思った。


____________________________

東エリアと北エリアの境目。バラック小屋が立ち並び、髪が短く身なりの良くない者が営む商店街のような様相。その一角で、黒スーツを身にまとい坊主頭に三本の刈込線を入れた集団が1つの店を囲んでいた。


「ドッドファミリー嘗めてただで済むと思ってンのか!アァ!!?」

「今ならショバ代と慰謝料とオメェの娘だけで勘弁してやるよぉ!」

「とっとと出てこいやコラァ!!」


怒声に怯え、丸くなる娘と妻を庇うように抱きしめる男。昨晩、理不尽に金を要求してきたファミリーを追い返した飲食店経営者だった。こちらはただ店から出ていくように言っただけなのに、こんなことになるなんて。激しい後悔の念と、家族だけはどうにか守らねばならないという使命で体を震わせる。


ふと、怒声の種類が変わったことに気づいた。

恐る恐る窓から外をのぞくと、ドッドファミリー一党の前に、一人の男が立ちふさがっていた。

大きく強靭な身体、天を突くほど尖がったモヒカンヘア。

敵か味方かの判別がつかないその男は、にやりと不敵な笑みを浮かべていた。


「おうおうおう!随分と小せぇ事してるじゃねか。それが天下のドッドファミリーのすることかよ?」

鉄砲玉(バレット)が何しにきやがった!アァン!?」

「取り立てはお前の担当じゃねぇだろ、すっこんでろスティンキー!」


集団の中から一人、パーマヘアの左側だけを刈り上げて三本線を刻んでいる男が前に出る。


「電話だけじゃわかんなかったか、ブライアン……!」

「わざわざ邪魔しに来たってかスティンキー。ナンバー持ちの俺に楯突くなら……殺すぞ?」


威圧的に告げるパーマヘアの男に、スティンキーと呼ばれたモヒカン男は変わらず口角を上げたまま男にこぶしを振りぬいた。


「上等だぜ、遊んでやるよブライアン!」


こぶしを顔面で受け止め、微動だにしないブライアン。

射貫くような眼光で、目の前の男をどう殺すかを決める。

髪がチリチリと焦げるように短くなり、ブライアンの手に火が宿った。


「焼き殺す」

「はっ!やってみろ!」

次回から書き溜めの為、投稿頻度下がります

(ほかの投稿者さんたちはどれくらい投稿前に書き溜めているんだろうか……)

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