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ヤンデレ幼馴染に監禁されたけど、快適すぎた。  作者: ChaCha


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リナルシア商会。

ルシアン視点


「主様。商会より、今月の報告書が届きました」


執務室のデスクに座る俺に、セバスが一礼して書類を差し出した。


「……調味料の増産が必要だな」


「はい。既に生産部隊を増やすよう指示を出しております」


「そろそろ初夏だ。空調魔導具の卸値をさらに上げるよう伝えろ」


「承知いたしました」


「養成所のほうはどうだ?」


「申し訳ございません、集計が遅れておりまして。本日中に報告を上げるようきつく伝えておきます」


「……各国から集めた忌み子たちも、すでに百を優に超えたか」


「はい。主様の開発された魔導具により、誰一人暴走することなく、各部隊にて健やかに育ち、忠誠を誓っております」


「ふっ。リナの願いだからな」


コンコン。


「入れ」


「失礼します。ノアによる坊っちゃまの訓練ですが……」


ノエルが少し困ったような顔で入ってきた。


「どうした?」


「すでに、坊っちゃまがノアを押し負かしております」


「なんと! それはぜひとも、私めもお手合わせ願わねば」


セバスが嬉しそうに目を細める。

俺は手に持っていた羽ペンを置いた。


「今日の執務は終わりだ」


俺はセバスとノエルを連れて廊下を歩き、訓練所を目指した。


あれから十二年。


アレクが誕生してから、俺はこの魔の森での生活を誰にも脅かされない『揺るぎないもの』とするため、表向きの組織として商会を立ち上げ、各国に支店を展開することにした。


名付けて『リナルシア商会』だ。


商会から届く各国の金と物の流れは、国家の動きを正確に捉えるにはもってこいの情報源となる。


取り扱う商品は、魔の森で採取できる貴重な素材から、俺が開発した魔導具、そしてリナが提案した調味料など多岐にわたる。


また、その事業の一つには『奴隷商』も含まれていた。


以前から幅を利かせていた悪徳奴隷商の頭を物理的に排除し、その組織を乗っ取り、そこで取引される忌み子たちを保護(回収)し、優秀な者は優先的に我が家の養成所へ送る。


リナが言い出したこの忌み子の保護に関してだが……。


「……我ながら、正解だったな」


「はい。彼らは生まれつき魔力量が多く、迫害されていた経緯から、少し手を差し伸べるだけで、揺るぎない忠誠を捧げさせることができますから」


ついでに言えば、王国側に「兵器」として囚われる前にこちらで刈り取っているため、あちらの国では慢性的な魔力不足に陥っている。


王族たちは今、平民や犯罪奴隷から無理やり魔力を搾取して凌いでいる有様だ。


そう、一度リナの知識によって生み出された調味料の味や、潤沢な魔力で動く魔導具の快適さに溺れた者共は、二度と以前の不便な生活には戻れない。


リナルシア商会はそこを容赦なく突いて、魔石や魔導具の販売を独占し、瞬く間に世界屈指の大商会へと成り上がったのだ。


「主様の手腕により、世界の半分はすでに掌中も同然ですね」


セバスが恭しく言うが、俺は鼻で笑った。


「ふん。リナたちを守る為には、まだ足りない」


そう、まだ足りない。表の経済だけでなく、裏という裏まで

――闇ギルドも既に我が手中におさめたが、それでも完全に安心することはできない。


「子々孫々まで、リナの美しい血筋を守らねばならないからな」


「私めも、後継であられる坊っちゃまを鍛え抜き、万全の状態でお支えできるよう励みます」


訓練所へ着くと、ちょうどアレクとノアたちが激しい戦闘訓練を行っている最中だった。


「ほぅ。もう多対一の乱戦をしているのか」


「……どうやら、ノア一人では力不足になってきたようですね」


ノエルが苦笑する。


その瞬間、訓練所の空気が張り詰めた。


訓練所の中心。死屍累々と倒れ伏す影部隊の隊員たちを超え、最後のひとりとなっていたノアの喉元へ、アレクの剣先がピタリと止められた。


「……参りました」


「やった!! いやー、マジでキツい!」


アレクが額から顎へと流れる汗を拭いながら笑う。


「お見事です。これで打倒勇者も叶いそうですね!」


「いや待って! 勇者が来たら、返り討ちにして追い払う程度にしよう? ……俺、平和主義な『魔王』を目指してるからね?」


(……俺の息子は、魔王を目指しているのか?)


妙な志を口にする息子の背中に、俺は声をかけた。


「アレク! 父さまと剣を交えるか?」


「父上!? は、はい。よろしくお願いします!」


俺は上着を脱いで腕捲りをし、訓練用の剣を構えた。


「はじめ!」


セバスの合図が響く。


刃と刃が激突し、火花が散る。

同時に展開された魔術が空中で爆発を繰り返す。


俺はアレクの鋭い斬撃を姿勢を低くして躱し、そのまま流れるような一刀をお見舞いした。


スッと紙一重で躱されたものの、アレクは悔しげに顔を歪めた。


(ふっ……そんな可愛い顔をするから、さらに虐めたくなるだろう?)


俺は容赦なく踏み込み、剣の腹で牽制しつつ、体勢を崩した隙に回し蹴りをアレクの腹部へ叩き込む。


「ぐはっ!」


吹き飛んだアレクが、砂埃を上げて地面を転がった。


「きゃー!! アレク!! ……ちょっと、ルシアン!!」


訓練所へ入ってきたリナの悲鳴を聞き、俺は瞬時に殺気を消した。


リナが慌ててアレクへ駆け寄り、治癒魔術を展開する。


煌めく光に照らされた愛しい妻の姿に、俺はふうっと息を吐いた。


目が離せなかった。


「……っ」


「アレク? 大丈夫?」


「……母上? ……っ、ありがとうございます。もう平気です」


立ち上がった息子に、俺は鷹揚に頷いてみせた。


「なかなか良かったぞ! だが、まだ驕らずに基礎から再度やり直せ」


「はいっ! ありがとうございました!」


「……男どもってやつは、本当に加減を知らないんだから」


ブツクサブツクサと文句を言うリナの肩を引き寄せ、俺はとっておきの報告を落とした。


「リナ。君が欲しがっていた品種改良を施した米、『もち米』がようやく収穫できたぞ?」


「えっ!! 本当!?」


リナの顔がパァッと明るくなる。


「ああ。すでに精米済みだ」


「あーん! 私の愛しい旦那様! 大好きッ、愛してる!! 今日はお赤飯よ!!」


リナが俺の首に抱きついてきて、頬へ何度も口付けをしてくれた。


だが……赤飯? 赤飯とはなんだ?


「……すまない、リナ。お赤飯とは?」


「小豆と一緒に炊いたもち米です、父上!」


リナの代わりに、アレクが目を輝かせて答えた。


「アレク! これでおはぎも大福も、和菓子がさらに充実するわよ!!」


「はっ! それは絶対に食べたいです!!……あ、いや、是非とも食したいですね!!」


……ムッ。


リナとアレクが俺を置いて二人だけで謎の料理の話題で盛り上がっている。

前世の知識を共有しているこの二人の空間に、時々酷く嫉妬を覚える。


俺は無言でリナの腰をグイッと引き寄せ、そのお喋りな唇に深く口付けを落とした。


「んんっ!?」


リナが抗議するように俺の胸を叩くが、気にせずに甘く溶かしていく。


「……っんー、ふぁ……っ!」


「はぁ。……じゃあ、俺はノアたちと狩りにでも行ってきます」


アレクが呆れたようにため息をついた。


俺はリナの唇を塞いだまま、

手だけで「はやく行け」と息子を追い払う。


「ぷはっ! もう!! ルシアンったら!!」


息を切らしたリナを抱き上げながら、俺は低く囁いた。


「……俺だけを見ろ」


「大人気ない!!」


「……今すぐ抱きたい」


ポッと頬を真っ赤に染めた愛しい妻を腕に抱き上げ、俺は迷うことなく寝室へと歩き出した。


「お母さま? お兄さまの訓練はもう終わったの?」


――ピタリと、俺の足が止まった。


回廊の角から、リナによく似た愛らしい少女がひょっこりと顔を出した。


十二歳のアレクの下に生まれた、我が家の第二子・エミリアだ。


「……エミリア。アレクなら、狩りに出たぞ」


俺は娘を見下ろし、じっと『無言の圧力』を放った。


「え、エミ。今からママと一緒に、お菓子作りでもする?」


リナが腕の中から優しく声をかけるが、俺の娘は危機察知能力が極めて高かった。


「ううん!」


エミリアはにっこりと完璧な笑顔を作り、パタパタと手を振った。


「エミ、ノエルと一緒に魔導具作りの続きをするからいいの!」


ホッとする。我が娘ながら、素晴らしい状況判断だ。


「そ、そう? じゃあ、後でおやつを持って行くわね」


「はーい! お父さま、あまりお母さまを困らせちゃダメよ?」


「……愛でているだけだ」


「ルシアン!!」


呆れ顔でため息をつくリナを、俺は決して離すことなく、腕の中で力強く抱き締め直した。



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