表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ヤンデレ幼馴染に監禁されたけど、快適すぎた。  作者: ChaCha


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

70/82

俺がやるしかない。

ルシアン視点。


俺の子を宿したリナは、ただでさえ愛しいのに、今はもう直視できないほど眩しかった。


たとえ、その唇から――リナの言うところの『虹』を吐き出していたとしても、俺にとっては世界で一番愛おしい存在であることに変わりはない。


「……また、虹だしてくる」


「……オェッ」


苦しげにトイレへ駆け込むリナ。

その背中を見守ることしかできない自分の無力さに、胸が締め付けられる。


「……リナ、俺が変わってやりたい。俺が虹を肩代わりできればいいのに」


「……ふふ、ルシアン。気持ちは嬉しいけど……安定期まで、あと少しだから」


リナの悪阻は、好物が真逆に反転してしまったようだった。


あれほど肉を好んでいた彼女の口癖は、今や「悪阻が終わったら倍食べる」だ。


弱りながらも「倍食べる」と言い切る俺のリナは、なんて可愛いんだ。


「……無性に今、木苺が食べたいな」


リビングのソファで横になっていたリナが、窓の外をぼんやりと眺めながら呟いた。


今は季節外れ。

当然、庭にも森にも木苺など実ってはいない。


「ごめんね。無理なことを言っちゃった……干した木苺、あったかな」


「……! リナ、待っていろ。俺が、俺が今すぐ木苺を作ってやる!」


リナは高度な治癒魔術を使える。

あの生命力に満ちた魔力なら、植物だって一気に育つはずだ。


「無理しなくていいよ?」


「リナ。しばらく俺は温室にこもるが、何かあれば遠慮なく呼べ!」


愛しい妻の額に口付けを落とし、俺は立ち上がった。


俺は今から、リナのためにこの敷地内に『四季』を創り出さなければならない。


「え? 温室ってなにー!?」


背後から聞こえるリナの不思議そうな声を後に、俺は地下へ向かった。


地下に鎮座する巨大な魔力石に触れる。


まずは結界範囲のさらなる拡張。

魔力石は今、リナのチャージのおかげで満タンだ。

この状態なら、俺が少しずつ省エネ化の研究を重ねていることもあり、約一年は維持できる。


「……面積を倍に広げれば、土地は足りるか」


よし、着工だ。


まずは魔術で周囲の不要な木々をなぎ倒し、資材になる木は残しながら、更地へ変えていく。


設計図は頭の中にある。


我が家の勝手口から廊下をそのまま伸ばし、全天候型の屋根と窓、要所に強固なセキュリティのドアを設置する。


温室は春夏秋冬の四区画に分ける。

中央にはリナがくつろげる東屋と、我が子が産まれた後に遊べる庭も必要だ。


ゆくゆくは、ここでリナと子供と一緒に……。


「……しまった」


思考に耽っている場合ではない。俺のリナが木苺を待っているのだ。


温室のガラスをはめるのは後回しだ。

まずは『春』の区画を最優先で形にする。


***


「……シアン……ルシアン!」


「リナ?」


ハッと顔を上げると、そこには心配そうに俺を覗き込むリナがいた。


「もう! 何回呼んだと思ってるの、晩ご飯できたよ」


「もうそんな時間か……」


「というか……ルシアン、これ、今日だけでここまで作ったの!?」


温室の巨大な基盤と、組み上がった複雑な枠組みを見て、リナが目を丸くしている。


「すまない。魔力の調整に手間取って、今日中に木苺を実らせるのは無理そうだ」


するとリナがコロコロと鈴を転がすように笑い、俺の首に腕を回して抱きついてきた。


「ルシアンが私の夫でよかった! 大好きッ、愛してる!」


「……っ、俺もだ。俺も愛してる、リナ」


ぎゅっと、壊さないように、けれど力強く抱き締め返す。


ああ、抱きたい。

今すぐリナをベッドへ連れ去り、その甘い香りに溺れたい。


だが、我慢だ。


今はリナの身体と、俺たちの宝物をいちばんに考えなければならない。


「……リナ、俺がやるしかないだろう?」


「それは何を? 温室のこと?」


「すべてだ! 買い出しも、家の防衛も、美味しい食事の用意も、全て俺に任せておけ」


「ふふ、頼もしいね。……もしかして、出産時も?」


「……俺だ!!」


俺が即答すると、リナは困ったように眉を下げた。


「そこは、産婆さんのところへ連れて行ってよ」


「それは無理だ。絶対に認めん」


「えー!? どうして?」


リナ、君は分かっていない。


この世界は、君が思うより遥かに汚れていて、危険だ。


そんな無防備な状態で結界の外に出してみろ。

一発で王国の残党や、君の魔力を狙う良からぬ輩に絡まれ、大惨事になる未来しか見えない。


俺は、温室の完成を目指しつつ、出産と助産の知識を極めることを心に誓った。


リナと子供は、この俺の手で守り、俺の手で取り上げる。


「さすが、ルシアンだね! 何でもできちゃうんだから」


「当たり前だろう。君のためなら、俺は神にだってなってみせる」


リナの賞賛の言葉を全身に浴びながら、

俺は次の工程――産院個室の設計へと意識を飛ばした。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ