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ヤンデレ幼馴染に監禁されたけど、快適すぎた。  作者: ChaCha


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35/96

逃げ込むさきは「絶対領域」

「ルシアン、いい加減にして。その、砂糖粒を数えるみたいな目で私を見るのをやめてちょうだい」


「失礼な。俺は君の糖分摂取に伴う魔力脈動の変位を

観測して――」


「はいはい、お疲れ様。おやすみなさい!」


私はティーカップを置くや否や、追いすがろうとする婚約者の指先を鮮やかにかわし、脱兎のごとく廊下を駆け抜けた。


向かう先は、この屋敷の最奥。


いかなる高位魔術師といえど、

家主の許可なくしては踏み込めない


「絶対聖域」

――両親の寝室だ。


バタン! と勢いよくドアを開け、

私は両親の元へ飛び込んだ。


「お父様、お母様! お願い、今夜はここで寝かせて!」


「おやおや、リナ。そんなに慌ててどうしたんだい?」


父が穏やかに振り向く。


その背後には、案の定、氷の微粒子をまとったルシアンが音もなく追いついてきていた。


「義父上。リナの安全のため、

今夜は俺が傍で――」


「ルシアン」


父の声が、廊下の温度を数度下げるほど低く響いた。


父は一歩前に出ると、ルシアンの肩にがっしりと手を置く。


「君の心配はもっともだ。だが、ここは私の屋敷であり、リナは私の愛しい娘だ。婚約中とはいえ、未婚の男女が同室など、我が家の規律が許さない」


「……ですが」


「ルシアン。今日は自分の家へ帰りなさい。

……いいな?」


その一言には、有無を言わせぬ威厳があった。


さすがのルシアンも、わずかに唇を歪めるだけで押し黙る。


やがて小さく舌打ちし、不承不承といった様子で肩をすくめた。


「……わかりました」


そう言いながらも、去り際に私へ視線を向ける。


「リナ。明日の朝食にはまた来るからね。君の脈拍を測るまで、俺の朝は始まらない」


不穏な捨て台詞を残し、ようやくルシアンの気配が廊下の奥へ遠ざかっていった。


やった。勝った。


私の「自由(睡眠)」が守られた!


「ありがとう、お父様!

 やっぱりお父様が一番頼りになるわ」


安堵のまま、私は父の腕に抱きついた。


……けれど、その瞬間だった。


「ああ、リナ。……本当に、可愛いリナ」


父の腕が、私の背中を抱き寄せる。


その力が、ほんの少し――いや、かなり強い。


「……そうね。誰にも渡さないわね。絶対に」


背後で、お母様が低く、震えるような吐息を漏らした。


見上げると、父の瞳が以前よりも明らかに濃い色を帯びていた。


「もうどこへも行かせないよ。あんな野蛮な騎士や、執着の激しい魔術師には、指一本触れさせたくない……」


「……え、お父様?」


父の視線が、私の髪、頬、そして指先へと、ゆっくりと這う。


その瞳の奥に宿っているのは、

保護者としての慈愛というより――

もっと粘ついた、

コレクターが至宝を眺める時のような「熱」


「ねえ、あなた。リナを真ん中に寝かせましょう?」


母が、夢遊病者のような微笑みで私の手を取った。


「私たちの手の届くところから、一寸たりとも離れないように」


扉の外では、ルシアンが「念のためだ」と言いながら、廊下全体に逃走防止の結界を張り始めている気配がした。


そして、この部屋の中には――

以前よりも、はるかに重くなった「愛」をたたえた両親。


(……あれ?)


胸の奥に、じわりと冷たいものが広がる。


(もしかして私……避難場所、間違えた……?)


聖域のはずの寝室に、逃げ場を塞ぐような甘ったるい芳香と、じっとり湿った熱気が静かに満ちていく。



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