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ヤンデレ幼馴染に監禁されたけど、快適すぎた。  作者: ChaCha


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33/96

俺の婚約者はよく誘拐される。

もぬけの殻になったベッドを視界に入れた瞬間、俺の理性は文字通り蒸発した。


制御を失った魔力が咆哮を上げる。

洋館そのものを、時空ごと消滅させる寸前――。


「……落ち着け、ルシアン!」


義父の鋭い手刀が首筋に打ち込まれ、俺の意識は暗転した。



揺れる思考をポーションの力で無理やり引き戻し、俺は即座に洋館を後にした。


くそっ。


位置情報が特定できる魔導具ブレスレットは、まだ作成の途中だった。


位置特定だけなら、瞬時に作ってリナの腕に嵌めていただろう。


だが、それでは足りない。


位置情報の他に、多層展開バリア、心拍測定、魂の安定化回路、緊急治癒術式、通信機能、ついでに健康管理のための歩数計……。


付けても付けても、彼女を守るには足りない気がした。


完璧を求めすぎて、完成が遅れたのが仇となった。


「くそっ……!」


二度目の毒を吐く。


一刻も早く、リナをこの手に取り戻さなければならない。


脳裏をよぎるのは、あの護衛騎士の顔だ。


リナに触れ、リナを見つめ、あろうことか親しげに語りかけていた不届き者。


『私の騎士』


リナの口からその言葉が零れた瞬間、俺はあいつを闇に屠ることを決めていた。


夜が明けた。


万が一……。


もし、あいつにリナが汚されていたら……。


どす黒い感情が渦を巻き、俺の精神を深い淵へと沈めていく。


四方に散った部隊から報告が入るが、追跡は難航していた。


さすがは義父が選び抜いた護衛騎士だ。

馬車を使いながらも、巧妙に偽の痕跡を残し、追跡を翻弄している。


潜伏術を極めた優秀な騎士ほど、敵に回すと厄介なものはない。


正午。


斜め前方の空に、不自然に旋回する鳥の大群が見えた。


リナだ。


あんな奇跡じみた現象を引き起こせるのは、この世界でリナしかいない。


俺は全魔力を展開し、弾丸のように現地へ向かった。


開けた場所に出た瞬間、そこには羽毛の雪の中に舞い降りた天使がいた。


「……ルシアン……!」


彼女を連れ去った男が、あろうことか彼女に手を伸ばそうとしている。


「動くな。一歩でも動けば、その心の臓を氷の棘で貫く」


……(中略)


無事に救出したリナは、俺に向かって満面の笑みを浮かべた。


「来てくれてありがとう!」


「大好きだよ!」


ああ!!

俺もだ、リナ!!


ようやく、ようやく俺の愛が届いたんだな!?


俺は歓喜に震え、彼女が飛び込んでくるのを待つために大きく両手を広げた。


だが、リナは最高に愛らしく、そして極上の笑顔をもう一度だけプレゼントして――颯爽と義父の馬に跨った。


……そこは、俺の腕に飛び込んでくる場面じゃないのか?



その夜、俺は執念で例の魔導具を造り続けていた。


文字通り徹夜だ。

だが、それでもまだ「完璧」には至らない。


俺がリナのために血を吐く思いで魔導具を錬成している間に、またしてもリナは管理人に寝室への侵入を許していた。


大事には至らなかったとはいえ、報告を聞いた時は心臓が凍りつくかと思った。


急ぎ王都へ帰還する準備を整えていた、その最中だ。


ふと目を離した隙に、またリナの姿が消えた。


待て……嘘だろう?


「……リナ様が、御者により連れ去られました」


影の報告が届いた瞬間、俺の足元の地面が音もなく凍りついた。


は?

御者?


馬車を操るだけの、あの羽虫が――リナを?


「急ぎ捕らえろ! 踏みつぶせ!」


俺はリナの乗る馬車を追った。


無理やり抉じ開けたドアの向こうから、リナがまっすぐ俺の腕の中へ飛び込んできた。


「ルシアン〜〜!!」


「ぐはっ……!」


飛び込んできて欲しいとは願っていたが、まさかここまでの勢いとは。


だが――腕の中にふわりと香るリナの匂い。

柔らかく、温かな身体。


……ああ。


これだ。

これが最高だ。


もう絶対に。

二度と。

死んでも離さない。


ふと、捕らえられた御者を見たリナが青い顔で言った。


「る、ルシアン……。御者さん死んじゃうから。そろそろ踏むの、止めてあげて……?」


「……リナを俺から奪おうとする羽虫は、早めに駆除しておいた方が安心だろう?」


リナは優しすぎる。


だから、こういう下劣な奴らが付け入るんだ。


「ルシアン……怖い……」


……俺が、怖い?


この俺が、怖いと言うのか?


世界で一番リナを想い、守ろうとしている、この俺を?


衝撃で肩がビクッと跳ねた。


「…………やめろ。生かしておけ」


「はっ! かろうじて、まだ息はしております!」


その後、俺はリナを自分の馬車へ乗せた。


「……もっと感謝しろよ」


「ありがとう!」


「……俺の腕の中がいちばん安全だろ?」


「今のところは……?」


なんだよ、その含みのある言い方は。


俺はさらに力を込めて、彼女を抱きしめた。


リナは呆れたような顔をしていたが、その身体はほんの少し震えていた。


ほら、見てろ。


俺のことを愛しすぎて、喜びで震えているじゃないか。


……やはり。


リナには、俺しかいないんだ。



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