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ヤンデレ幼馴染に監禁されたけど、快適すぎた。  作者: ChaCha


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騎士の反乱

薄暗い室内。


リナの眠るベッドの傍らで、騎士はそっとその手を取り、熱を孕んだ視線を落としていた。


「リナお嬢様……」


敬愛と情愛が入り混じった吐息とともに、白く細い手の甲へ、祈るように静かな口付けを落とす。


「――何をしている、貴様」


背後から、凍土の底から響くような冷え切った声が落ちた。


ルシアンだ。


騎士は振り返りもせず、手も離さず、静かに答える。


「お嬢様の騎士として、目覚めをお待ちしていただけです」


「はっ。俺が気付かないとでも思っていたか?

 貴様のその醜い情欲の波長が、部屋の空気を汚しているんだよ」


騎士の瞳が鋭く細まる。


ゆっくりと立ち上がり、初めてルシアンと正面から向き合った。


その目には、忠誠という名を借りた、隠しきれぬ狂信が宿っている。


「お嬢様が仰ったのです。『私の騎士』だと。……自分の命も、肉体も、心も、すべてはお嬢様のもの。婚約者である貴方であっても、私とお嬢様の絆を裂くことはできない」


空気が爆ぜる寸前まで張り詰める。


魔術師の冷徹な殺気と、騎士の剥き出しの闘志。


視線が交錯するたびに火花が散り、部屋の調度品が軋む。


その時だった。


「……う……るさい……」


蚊の鳴くような、か細い声。


「リナ!」


「リナお嬢様!!」


先程までの殺気が嘘のように消え、二人が同時に身を乗り出す。


薄く目を開けたリナは、頭痛に顔をしかめ、二人を心底煩わしそうに睨みつけた。


「今すぐ……出ていって……。頭、割れそうだから……静かにして……」


沈黙。


そして――


一国を動かしかねない魔術師と、精鋭の騎士は、揃って部屋から追い出された。



その日の深夜。


昼間の家族会議を盗み聞きしていた騎士は、絶望と憤怒に震えていた。


「魂の固定」――そんな呪いのような結びつきで、お嬢様を縛るなど間違っている。


それは愛ではない。


ただの呪縛だ。


(お嬢様は、自分がお守りする。ルシアン様からも、死の運命からも)


迷いはなかった。


騎士は静かに実行へ移す。


眠るリナを毛布ごと抱き上げ、闇に紛れて洋館を脱出する。


あらかじめ手配していた馬車へと運び込み、高原を駆け抜けた。


ガタゴト、と車輪が石を弾く音が夜気を震わせる。


「ん……頭、超痛い……」


朦朧とした意識の中、リナは喉の渇きと鈍い痛みに耐えていた。


だが、身体を包む揺り籠のような振動が心地よく、瞼は鉛のように重い。


(……でも、めっちゃ眠い……。もうちょっとだけ寝よ……)


自分が今、騎士に連れ去られているとも知らず。


夢の中では、花咲く森でくまさんと出会う軽快な音楽が、どこまでも呑気に流れ続けていた。


その頃、洋館では――


もぬけの殻となったベッドを前に。


ルシアンの咆哮にも似た詠唱が、高原の夜を真っ黒に染め上げようとしていた。



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