表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ヤンデレ幼馴染に監禁されたけど、快適すぎた。  作者: ChaCha


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

24/96

命を繋ぎ止める術。

「……ルシアン。君は、知っていたのだな」


重く沈んだ声で、義父が問いかける。

その視線は病床で眠る娘ではなく、冷徹なまでに静かな魔術師へと向けられていた。


ルシアンは表情を変えず、ゆっくりと頷く。


「はじめは半信半疑でした。ですが、あの日を境に、彼女が纏う魔力の色彩は劇的に変化した。これまでの観察結果、および行動パターンの解析から推察して――リナの身体に、別の魂が宿っていると判断しました」


一拍置き、声を落とす。


「このまま放置すれば、リナという存在うつわはこの世界の摂理に弾かれ、命の危機に晒され続けるでしょう」


「そんな……ダメよ。リナを、あの子を二度と失うわけにはいかないわ!」


義母が顔を歪め、縋るように叫ぶ。


ルシアンは机の上で、白くなるほど拳を握り締めた。


「我が家に伝わる秘薬を、リナの波長に合わせて再調合したものがあります。魂と肉体の魔力回路を強制的に安定させるための薬です。ですが、それは対症療法に過ぎない。いつまで有効かは分からない」


静かな息を吐く。


「避暑地に到着した朝、リナはそれを服用しました。ですが、その結果が――」


「ジャイアントベア、か……」


義父が低く呟く。


「あれは、リナが……今のあの子が引き寄せたというのか……」


「間違いありません」


ルシアンの声は冷え切っていた。


「彼女の魂が放つ特異な残滓ざんしが、あらゆる生物の本能を狂わせている。……俺は、今のリナを愛しています。彼女を失うことは、俺の人生の終焉と同義です」


重い沈黙が書斎を支配した。


やがて、義父が重い口を開く。


「……我が家にも、古くから禁忌として伝わる魔術書がある。そこには、魂の固定に関する秘術が記されている。生者同士――命と命を固く結び、共有することで、不安定な魂をこの世に繋ぎ止める術式だ」


ルシアンの瞳が、飢えた獣のように光る。


「願ってもない魔術ですね。即刻、執り行う準備を」


「……軽く言うな」


義父の声が地を這うように低くなる。


「これは対等な共生ではない。命の共有だ。片方が天に召されれば、もう片方も同時に命を落とす。文字通り一蓮托生だ。ルシアン、それでも構わないのか?」


一瞬の間さえ、彼は必要としなかった。


迷いなど、彼の計算式には最初から存在しない。


「リナのいない世界で、俺一人が生を繋ぐことに、何の意味があるというのですか」


狂気的なまでに純粋なその言葉に、義母は静かに目を伏せる。


やがて、義父はルシアンの覚悟を真正面から受け止めるように、深く頷いた。


「……わかった。君の覚悟、確かに受け取った。感謝する、ルシアン」


「ありがとう……あの子を……リナを、そこまで愛してくれて……」


母の声は、安堵と悲しみが入り混じった涙に滲んでいた。


魂を縫い止める魔術陣。


その儀式は、リナの意識が回復するのを待って執り行われることが、三人の密談によって決定された。


昏睡するリナの傍らで――

誰一人として、本人の意思を問う者はいなかった。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ