36,ロングブリッヂでの連戦を観戦する面々(44~45)
「なんか余裕そうだったな、前半なんて魔法無しで戦う練習してたぞ」
「大技に見せかけて魔法剣の分離技とは、興味深い思いつきでしたね」
もうちょっと蜘蛛ガメッシュには善戦して欲しかったッス。けどテラッチの方が一枚上手だったッスね、敵を退け第一の試練見事突破、おみごとッス。
「おぉードロップアイテムがあるヨー」
「なにかしらね、伝説の武器とかそういうものよね」
「期待している所悪いッスが、粗品程度のものッスよ」
「魔力の源と書かれていますわね、えーと……、え? あの濃度であの量――」
「だめッスよ! 最初に注意したはずッス、純粋に楽しまないと損ッスよ」
まったくイチコは、すぐいろいろ調べたがりッスね。ネタバレは楽しみを減らす最悪手ッス、みんなと一緒に楽しめなくなるッスよ。
ドロップアイテムは魔力を補充できるポーション的なドリンク剤ッス。けどテラッチの魔力容量だと、ほんの少ししか回復しない量ッス。焼け石に水ってやつッスね。
ベイスが魔力の源うめぇーとか言いながらビールを飲んだり、ペーターとケンサンが早食い対決したり、メニューとあーしとイチコも魔力の源を取り寄せて乾杯したりと、盛り上がっているうちにテラッチが第二関門に到達したッス。
「なんだよこの戦場は! つるんつるんのはげ頭みたいじゃねぇか」
「「「「「じー」」」」」
ベイスがハゲとか言ったら自虐と思うのは自然なことッスよね。全員がベイスの頭に注目ッス。
「オレはハゲじゃねぇよ! スキンヘッドだ。それはそうと、ここはめんどくせえ戦場だなぁ」
「あーしの教えた壁登りの技術で楽々突破できるはずッスよ、ああみえてテラッチはけっこうやるッスよ」
「シノービはテラオ君の教育にずいぶん熱心でしたからね。私も教えてみてその気持ちがわかりましたよ。教えた以上のことを吸収しようというやる気がある所、たまに発揮する変な思いつきも興味深い部分ですね」
「あいつの思いつきは笑えるよなぁ、まさかこんな高度なってことも実現させたりするから楽しいぜ」
「生産系講座も積極的に受けてくれることを希望するヨ~~~♪」
「わかりましたわ……、みなさん調子に乗って教えすぎたと言うことですわね……」
イチコがなにやら難しい顔をしてぶつぶつ呟いているッスが、講師陣のテラッチに対する評価はなかなかなものッスね。
教育論討論会がいつの間にか始まって、あーでもない、こーでもないと激論を繰り広げているうちに、テラッチの大技が発動準備段階に!
「あれはすごそうッスよ! 迫力の大画面に注目ッス!」
今更ながら、第二ステージの中ボスも蜘蛛ガメッシュッス。第一ステージで破れた蜘蛛ガメッシュ、悔しさをバネにパワーアップして挑む第二ステージという設定ッス。
はげ頭風なつるんと丸い戦場は、油をたっぷりと蒔いているので普通に歩くことは出来ないッス。あーしの教えた『空中足場を壁登りの足場に使う技術』を使いこなせないと攻略不可能ステージッス。
蜘蛛ガメッシュははげ頭の頂上に一本だけ生えている毛、ではなく柱に糸を固定して、バンジーの要領でテラッチを攻撃、弾き飛ばされたテラッチはステージの外に落とされて死ぬ。そんな戦場ッス。
で、途中経過は省略して、いつの間にかテラッチが頂上の柱によじ登って大規模魔法の準備をしていたッス。
「戦場全体攻撃魔法ですね、あれだけの規模とは興味深いですね」
「ありゃぁすげぇな。あんな魔法教えたことねぇぞ」
「発動するわよ! 初めての大規模魔法ね!」
テラッチの魔法はすごかったッス。丸い戦場全体を覆うほどの規模に展開したのこぎり魔法、リボン状ののこぎりがいくつもいくつも空を覆い尽くしたッス。
「蜘蛛ガメッシュの糸がすぱっと切れたな」
「切れましたね」「切れたネー」「切れたわね」「切れましたわ」
切れたッスね。自慢の糸が切れて蜘蛛ガメッシュもまずいと思ったッスね。相方のエンギャドウを呼んでさっさと退散してしまったッス。
「おう、さっきから蜘蛛ガメッシュのピンチに颯爽と登場するオオカミモンスターはなんだ?」
「エンギャドウッス、蜘蛛ガメッシュの相方ッス。テラッチの文化ファイルによると、なんかそういう設定らしいッス」
「そうか、設定なら仕方ねぇな」「そうね、設定なら」
設定ッスからね、これは変えられないッス。
あーしらにとって設定は大事ッス、設定で制限しないと何でもできてしまうッスからね。何でもできたらいろいろおもしろくないッスよ、だから制限のある状況で楽しむッス。
おっと、ちょっと酔いが回っていろいろしゃべりすぎたかもしれないッスね。
テラッチはというと、倍量に増えたドロップアイテム『魔力の源P』に歓喜してるッス。お腹たぷんたぷんになる量ッスけど、あーしがコネコネした粘土で作った高性能ボディー、これくらいよゆーで吸収してしまうッスよ。
テラッチに負けじとがぱがぱ飲み始めたおっさん三人と、魔力の源カクテルを飲み始めたあーし達。ふと画面を見たらいつの間にか次の戦場にテラッチが到着してたッス。
あーしもガイド役を果たさないといけないッスね。たまに忘れるッスけど。
「ここが第二関門最後の戦場ッス。ドーナツ型の戦場にバッテンの通路、狭い通路を落ちたらテラッチは死ぬッス」
「いやすでに死んでるからこれ以上死なねぇだろ、まあ戦線離脱って意味だろうけどな。ガハハ」
そんな感じで戦闘が始まったッスが、今回は蜘蛛ガメッシュに加えてエンギャドウも戦闘に参加するッス。二匹で遠距離からテラッチを攻撃していたッスが、蜘蛛ガメッシュは遠くからちまちま攻撃するのがつまらなくなったようッスね。
「蜘蛛ガメッシュが前に出たな、ああいうの負けフラグって言うんだよな」
「あたしも知ってるわ、遠距離で勝てるのにわざわざ近接を挑むとアレって法則よね」
「ああ、彼の文化ファイルにそんなフィクションがたくさんありましたね」
蜘蛛ガメッシュも挟み撃ちにするとか、他に勝てる手はあったはずッス。二回もやられて挑みたかった気持ちがあると思うッスが、冷静になっていれば……。
「エンギャドウ奈落に落とされたぞ」
「テラオくんの静かなる作戦だったネー、コッソリ魔法をつかって無力化するとは考えたネ~~~♪」
「蜘蛛ガメッシュとの戦闘に余裕が出てきましたね、もう時間の問題ですね」
みんなの予想通り、エンギャドウの援護がなくなった蜘蛛ガメッシュには、全く余裕がなくなってきたッス。光の魔法剣を振るうテラッチ、忙しく躱す蜘蛛ガメッシュ。
「おわったな」「そうね」「あっけなかったネー」
光量を増した魔法剣を振るうかに見えたテラッチが、唐突に蜘蛛ガメッシュの顔に光りを遮断する魔法を放ったッス。急に目の前が真っ暗になり、慌てた隙にテラッチが一気に攻勢に出て……。
「エンギャドウのあとを追って落ちていったな」
テラッチ余裕の勝利だったッスね。ドロップアイテムはもちろん『魔力の源』ッス、今回は大盤振る舞い前回の四倍ッスよ。




