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35,盛り上がる観戦会場(43)


 テラッチはごっそり降ってくる矢をかいくぐり、大きな魔法を準備しているッス。


『いっくよー、避けてねー』


 メイを気遣っているッス。あんな見た目ッスが、あーしらに及ばないまでも超越しているッスよ、テラッチ程度の攻撃ではぴくりともしないッス。

 いけないいけない、もう少し純粋に楽しまないといけなかったッスね。


「おぉう、でかい玉で弓兵潰しやがったぞ」

「ベイスが前に見せた、重そうに見える魔力の玉を、本当に重い魔力の玉に応用したのね」

「なるほど、一度みたらなんだかそれっぽいものを応用で作り出してしまう。興味深いですね」

「第一関門突破だネ~~~♪」


「そうはいかないッス」

『今なのです! テラオさんは魔法を放つと油断するのです。追撃開始ぃーなのです』


 城壁からの攻撃は上だけではなかったッスよ。壁に開けた穴から隠していた予備弓兵が、そして城門からはちび鉄ゴーレム部隊を大量投入してテラッチを追撃ッス。


「うわ、油断した所で大量投入かよ。これは……あっ」

「この量を倒しきるのは骨が折れ――、なるほど」

「さすがの私もこのパターンは……、えっ? まさか……」

「あははは、ちゃんと説明聞いていたのね。成長したわね」


 唖然とした結果になったッス。

 大量投入した敵を相手にしている間に、背後から大型の敵を仕掛ける予定だったッス。

 が! うっかりッス。第一関門突破条件は城門突破だったッス、ちび鉄ゴーレムを出動させるためにちょっと開けた城門から、テラッチはするするーっと抜けて条件達成してしまったッス。


『やったー。第一関門突破だね』


「ぐぬぬぅッス。だがこれは第一関門、この先に第二第三の関門が待ち構えているッス」

「ガハハ、ずいぶん悔しそうだな」

「倒さないで通過しちゃうとはネー、予想外だったヨ~~~♪」

「空中足場でしたわよね……、それもあんなぽんぽんと……」


「まあいいッス、次の関門はどこぞのおもしろストーリーをアレンジした難敵を用意しているッス。それにここからは今までのようには行かない仕掛けもあるッスよ、お楽しみにッス」


『シノービ姉さん、用意したモンスターが大量に余ってしまったのです』


『仕方ないッスね、あそこをあーいうふうに改装して、こーすれば流用できるッスよ』


『なるほどなのです、早速改装してくるのです』


 資源を無駄にはしないッスよ。しとやかレディーは環境にも優しいッス。


 テラッチが今いるのは、ちょっとした休憩スペースッス。ここで大量の敵達との戦闘疲れを癒やす目的だったッスが、こんなに短時間で突破されるとは……。休憩スペースいらなかったッスね。

 でもまぁ実は休憩だけが目的ではないんッスよ、ここで空間を分ける必要があったッス。

 迫力の大画面に映るテラッチの頭上に青いバーがインサートされたッス。本当は『テラッチ』って名前も入れてゲームっぽくしたかったッスけど、安っぽくなるのでやめたッス。


「あのバーはなに? なんだか意味ありげね」

「開始したらすぐにわかるッスよ、ここから先の大事な要素になっているッス」


 次の関門は堀を渡ってお城に到着するまで。簡単に思えるかもしれないッスが、現実は甘くないッス。休憩所の扉を開けたテラッチは驚きの表情を見せているッス。


『絶景だ! って、えーっこれ堀ってレベルじゃないでしょう』


「確かに堀ってレベルじゃあねぇよな。ガハハ」

「割れた海に橋が架かっている、という表現がぴったりでしょうか」

「あははは、これは落ちたら恐ろしいわね」

「地平線まで続く長ーい橋ダネー」

「ロングブリッヂですって、そのまんま過ぎる名前ですわ」


 大絶賛ッスね。この戦場はみんなの意見をいろいろ取り入れて、あーしがしっかりまとめて作ったッスよ。意見を調整していいものを作る、プロデューサーのお仕事は大変ッス。


「おい、あいつが走り出したら青いバーがじりじりと減り始めたぞ」


カイのゲームでよくあるスタミナかしら? あー違うわね、なるほど考えたわね」


「綿飴みたいなものを……、わかりましたそういうことですね」


「そうッス、この関門ステージからテラッチの魔力の回復がカイ並になったッス。気が付かないでいつもの調子で使うと、次の関門ステージは攻略できないッス」


「えげつねぇな、あいつ今まで魔力無限みたいなものだったろう。これは加減やら使い所やら難しいことになったな」


「な! 魔力無限とはどういうことですの? 一体あの子に何を――」

「私のあげた報酬『魔力タンク』がありますから、なんとかしてしまいそうですね。いっそのことダンジョンでは使えない設定にしておけば良かったですね」

「は? 魔力タンクですの? え?」


 イチコが何か慌ててたッスが、きっと大したことではないッスね。それよりケンサンの報酬をダンジョンで使えなくする、という設定変更はありと言えばありッスね。

 でも実戦を考えたら、『いざという時に使うものを使い慣れておく』というのは大事だと思うッス。


「飛んでくる蜘蛛の糸もやっかいでしたね、あれは防御魔法を散らす効果ですね」

「あの子も魔力が補充されないこと、やっと気が付いたみたいね」

「あの様子だと魔力を節約して戦いそうだな。そういうことをすると、かえって魔力を消耗することになるんだがな」

「戦闘が長引いて防御魔法で消耗だネー、一気にどかんとやっつける方が、結果消耗が少ないのはよくあることだネ~~~♪」

「空中足場と防御の魔法を使いつつ筋力強化と周辺サーチ……、いったいどれだけ鍛えたのですの」


 みんなでわいわいがやがや。テラッチの様子を肴に楽しく飲んで騒いで、大笑いして。そんなこんなしているうちにテラッチが最初の円形闘技場に到着したッス。


「最初の闘技場ッス。相手を退けないと通過できない仕組みッスよ」


「ここを通りたければオレを倒して行けって奴だな!」

「屍を超えて行けってことねっ」

「ここは任せて先に行けだネー」

「皆さん脱線していますよ」


 楽しそうで何よりッス。

 テラッチが闘技場に入った途端に、鳥かご型の檻をドシャーンと落として雰囲気を盛り上げて、中ボス登場ッスよ!


(よく来たね、まずは自己紹介をしようじゃないかー)

『ギャッギャッギャ、ギャギャギャガウガウガワワギャー』


(僕は蜘蛛ガメッシュ! けっこう強いよ)

『ギャウギャッギャ! ギャースギャギャギャ』


「おう、画面には字幕スーパーが入るからいいけどよ。あいつには通じてるのか? なんかぼけっと――」

「通じてないッスね、勝手に戦闘開始しちゃったッス」



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