37,いよいよラスボス登場(46~47)
「たいして回復してねぇな、バーの半分超えたくらいか」
「ですから、あれしか回復しないのは――」
「まあ、あの濃度をあれくらいの量では仕方ないですね。全回復には数十本必要でしょう」
下カイで見つけたよさげな容器に入れた『魔力の源』ッスが、たっぷりな量でもテラッチの魔力は全回復するほどじゃないッス。
ちょうどいい位に調整しているッスからね。満タンになったら回復のありがたみがわからないッス、実戦で役に立ついい具合の量をあーしがきっちり調整したッスよ。
できるうつくしレディーは微妙なさじ加減をきっちり把握しているッス。
そんなこんなで第二の関門を無事突破したテラッチ。ちょっと休憩してから最後の関門である城に向かったッス。
『ここからは全力で行くぞー』とかなんとか言いながら、颯爽と入城するテラッチ、だがしかーし! エントランスには、銃を装備した白きロボ兵士がずらりと待機しているッス。きっちりと連携した攻撃で、テラッチを翻弄するはずッスよ。
――メキメキッ、バキッ!
「なんかあっさり潰したぞ、人型の敵でも躊躇してないな」
「氷の板作り出してバッチンバッチンと潰してます……。容赦無しですね、虫か何かを相手にしているかのようです」
「成長したわね、敵と認めた相手には甘さを見せないということね」
さらっと倒してしまったッスね。全力のテラッチは容赦ないッスね、想定より短時間で通過してしまったッス。
ここからはゴールまで一直線ッスよ。
エレベーターによろよろと向かうテラッチ、ドロップアイテムの『エレベーターの鍵』がちょっとだけ重すぎたみたいッスね。文化ファイルで見つけた報酬の鍵と同じ位の大きさにしたッスが、ちょっと頑丈に作りすぎたッスかね?
ここでエレベーターは最上階ではなく地下へ向かうッス。地下二十五階から各階止まりで、一体ずつ倒さないと進めないという設定ッス。
第一関門で余ったモンスターの流用ッスけどね。テラッチがあっさり通過してしまったので、ここで再利用することにしたッス。魔力が回復できない状況での連戦は厳しいはずッス、これは試練ッスよ!
――チーン♪ 地上一階でございます。
「やっと戻ってきたな、二十五連戦とかめんどくせえことよくやるぜ、まったく」
「魔力は三分の一残ってるネー、節約して戦闘することになれてきたんだネ~~~♪」
「テラッチがなかなかいい動きをするッスから急遽追加したッス。最初の設定では、動くと見せかけて動かないエレベーターの予定だったッス」
「なんだよその無意味な装置は! あの重たい鍵使って動かないとか……なるほどあいつのおもしれぇ顔が見られそうだな、ガハハ」
エレベーターが上がらないで、その場でぐるんぐるん回る設定とかも考えたッスけど、テラッチを遠心分離しても楽しく無さそうなのでやめたッス。
そんな会話を楽しんでいる間に、テラッチはさっき瞬殺された白きロボ兵士の強化版、赤きロボ兵士軍団の相手をしているッス。ただの銃から熱線銃に、さらに動きも通常の三倍にアップさせた強化ロボ兵ッス。
「さすがに熱線銃は氷の壁じゃあ避けられないわね、さっきは有効だったものを封じて攻めているわね。なかなかいいダンジョンじゃない」
「土の壁にしたってあの作成速度は――」
「拘束の魔法で各個撃破しか手段がねぇみたいだな。だが数が減って楽になってきているぞ」
時間は掛かったッスが、ロボ兵は全滅させられたッス。最初の予定よりロボを強化したッスが、だいたい想定通りの魔力消費だったッス。
二階には、テラッチの得意な炎の魔法を当てられると、大爆発するモンスターを用意したッス。予想通りエレベーターは爆散。テラッチはワイヤーを伝って最上階を目指すことになったッス。
当然身体強化と空中足場で魔法を使うことになるッスから、魔力をガンガン消費することになるッス。狙い通りッス。
『いよいよだね。どんなラスボスが控えているんだろう、その前に魔力を補充したいね、残り四分の一って所だからね。えっと腕時計さん魔力の――』
――バッコーン!
最上階の扉が吹っ飛んだッス。ワイヤーをよじ登っていたテラッチは、落ちないように必死に掴まっているッス。
『早くしやがれ! じれったいぞっ!』
「どこかで聞いたような声ね」「すごく近くでごく最近聞いてますね」
「なんかいやな予感がするぞ」
『おらぁ坊主! 早くしろってんだよッ、ぐずぐずしてると燃やすぞ!』
「何でオレがラスボスなんだよ!」
『何でベイスさんがラスボスなんですかぁ!』
「ラスボスは大ベイスッス。体積比六倍ほどに大きくしたベイスをベースにしたッスよ。ベイスの一番の特徴である『無駄におおきい』を、さらに強く押し出したモンスターッス」
「だからなんでオレをベースにするんだよ」
「いいんじゃない、なんかおもしろそうだわ」
『ガハハ、今のは業炎のなんとかではない。ただの火の玉だ!』
「今の台詞なんだよ。すげぇ三下感丸出しじゃねぇか」
「とあるセカイで有名な台詞ッスよ、テンプレッスよ」
「確かに文化ファイルにありますね」
テンプレは大事ッスよ、テンプレ以外は受け入れられない場所もあるんッスよ。
「ったくよぉ」
なんだかんだ言いつつ自分っぽいラスボスと、テラッチの戦闘を楽しそうに観戦しているベイス、そのうち実際に組み手とかしそうッスね。
あぁそのためにテラッチが新しいボディーを手に入れたら、格闘を教えるぞーって意気込んでいたのかもッス。
『恨まないでね! 【触手拘束】!』
『【魔法無効空間】』
「ガハハ、あいつの放った魔法をあいつの魔法で消されたぞ。自分の魔法を使えるラスボスかよ。こりゃ面倒この上ねぇな」
いつも通りにグシャッとベイスを潰そうとしたテラッチもすごいッスね。躊躇するかと思ったッスが、これなら心配なさそうッス。
『(ベイスさんに魔法が効くとは思えないし、剣での攻撃も通らないよな……。むーん光の魔法で目をくらませようにも、黒光りする禿頭に反射して僕がまぶしくなりそうだし)』
「はげ頭じゃねぇよ! スキンヘッドだっ」
『(あれ? 黒光り禿のベイスさーん。もじゃもじゃー。ダンジョン攻略したらシノービさんに褒めてもらえるかなー)』
「ちげぇってんだよ。くそっ毛を生やすな! いらんことまで想像しやがって」
ベイスなんだか熱くなっているッスね。テラッチは想像の世界で、ベイスの全身もじゃもじゃ毛だらけにしたり、つるぴか頭を輝かせたりして遊んでいるッス。余裕があるッスね、どさくさ紛れにあーしを想像に混ぜるのはご遠慮願いたいッスけど。
「今ので偽物ベイスだと確信できたようですね。テラオ君のやる気がアップしたようですよ」
「もじゃもじゃーは笑ったネー」
「そうね、ぷぷぷ」
やるッスね。大ベイスはそういう反応まで設定してないッスからね、その点に気が付くとはなかなかッスよ。




