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僕らの死亡遊戯  作者: 神話project
第一章 上守隼人~最後の犠牲者~
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007

 それから僕は、その日のニュースで見た事件について、学校でも彼に色々と質問するのが日課になった。

「何度も突かれた刺殺死体が見つかった事件の犯人、どう思う?」

「どうって言われても困るけど、犯罪心理学では一般的に犯人の被害者に対する強い殺意か、逆に強い恐怖心を推認することが多いね」

「恐怖心?」

「ああ、犯人が女性のケースに多かったりするけど。日頃被害者に暴行を受けてた場合、いざ殺してみたものの、起きあがって来る気がするから、何度も何度も刺してしまうんだって」

「そんなこと本当にあるの?」

「そうか、君はあんまり死体に触れたことがないんだね。体温の残った死んだばかり死体っていうのは、本当に生きてるみたいだよ」

「そうなんだ」

 言われてみれば、温かい死体、というのを想像できなかった。治療さえ間に合えば、蘇生できる状態なんだろうか。それとも、何をしても起きない無防備な……温かく柔らかい肉体なのか……。

「他に何かあるかい?」

「え? じゃ、じゃあ、隣の県で乳児の遺体が見つかった事件知ってる?」

「ああ、ニュースで見たよ。これは当然だけど捨てるのはほとんど女性だね。死んで生まれたのを遺棄したなら少しは軽くなるけど、生きて生まれたのを遺棄したなら殺人罪だから罪としては重いよ」

「死んでるのに、生きて生まれたかどうかなんてわかるの?」

「わかるよ。遺体を解剖して肺を取り出すだろ。それを水につけて浮くか試す。浮いたなら呼吸をしたことがある証拠だから、生きて生まれたことになるのさ」

「へぇー、そうなんだ……」

「……何か聞きたげだね」

「……やっぱりそういう事件の犯罪者心理とか気になったりする?」

「そりゃなるよ。今の心中はいかにってね」

「え? 殺したときの気持ちじゃなくて?」

「そんなのありふれた理由さ。親が子を殺す理由と子が親を殺す理由、どっちも似たり寄ったりじゃないのかい?」

「……」

「むしろ、殺した後、どんな気分でいるかの方が気になるね。この事件で子供を捨てた親も、殺したことへの後悔を抱いているのか、死体が見つかったことへの後悔を抱いているのか。警察が迫る今、何を思うのかってね」

 それは彼自身、自分のしたことに対して今も何かを考えているからだと思ったが、さすがにそれは言えなかった。逆に僕が、殺す理由の方が気になるのは、殺したい相手がいるからだろうか……。


 帰り道でも彼は色々な話をしてくれた。

「日本の死者は年間約100万人、内90万人が異状死。司法解剖なんて年間たった5千件。テレビドラマなんかじゃあ監察医が事件を解決することがあるけど、犯罪の疑いのない事件を扱うのが本当の仕事。しかも、東京23区と横浜市、大阪市、神戸市、名古屋市にしか存在しない制度なんだ。つまり、大抵の死体は心不全とかいい加減な死因でほっとかれるのさ。日本で一体どれだけの殺人事件が明るみに出ているのか疑問だね」

 まるで、殺人が当たり前のことであるかのような錯覚に襲われる。逆に、人を殺したら捕まる、それが当たり前ではないことのように聞こえてしまった。

「どうすればいいってこと?」

「とにかく解剖できるようにすることだよ、長年解剖を担当しているてプロ中のプロでも、死体の外見からの検案と、実際の解剖結果が一致する確率は高くない。現場の人間の意見ではせいぜい40パーセント。それを警官が眺めるだけで判断するのが大半なんて、馬鹿らしいと思うだろ」

「神明君の事件では解剖されなかったの?」

「もちろんされたさ。でも、まぁ、むしろ僕に有利な証拠しか出なかったけどね……」

「それは完全犯罪ってこと?」

「はは!」

 彼は笑い、そして笑顔のまま暫く沈黙した。

「……さぁ、どうだろう。別に僕は何かトリックを使ったわけでも、アリバイ作りをしたわけでもないからね。そもそも疑われる可能性が無かったから」

「……どうやったの?」

「それは、まだ言えないかな。自分自身の手ではどうしようもないことをするには、どうすればいいかって話だけどね」

「……」

「自分から自白したのは、変に思うかもしれないけど、僕自身のせめてもの良心みたいなものさ」

「良心?」

「さすがに親を殺したんだ。社会に僕を裁く機会位与えてあげないとね」

 本当なら不気味さを感じるべきなのかもしれない。しかし、僕はなぜか彼といることで大きく変われるような、そんな変革を感じていた。


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