004
当然のごとくその後、僕の前には警察がやってきた。そこには両親を殺害したときにお世話になった懐かしき岩国警部もいる。
表向きには協力を要請しているが、僕がボロを出すのを待っているのだろう。
だがそんなことはどうでもいい。問題は次だ。何とかして隼人の協力を得なければならない。
「なんで、綾先さんにあんなことしたんだよ」
「タバコの葉をお茶に入れたのが僕だと思ってるんだね」
「違うの?」
「正解だよ」
「……綾先さんが事件に関係してるの?」
「中々するどいね」
「……」
彼は、聞きたくてたまならそうな表情をしていたから、教えてあげた。
「犯人は男のはずだし、事件との関連も不明だけど、知ってたかい? 白倉さんへの悪い噂を流していたのも、青葉さんへの噂を流していたのも全部綾先さんだ」
「……どうして?」
「女の嫉妬か何かだろう。校内で白倉さんの裸をばらまいてたんだ、事件誘発のきっかけを作ったのが彼女だと言ってもいいかもしれない。実際のところはわからないけど、その責任ぐらいとってもらいたいものじゃないか」
僕は綾先さんを目立つように追い回していたが、チャンスと見たある日、他の誰にも聞こえない声で囁いた。
「白倉さんの噂を流してる犯人について大事な話があるんだ。まだ警察にも教えてないことなんだけどね」
「……私には関係ない」
「本当にいいのかな? 皆にバラしても」
彼女を屋上に繋がる通路の下まで連れ行き、問いつめる。進路を阻んでやれば自ずと逃げ道は限られる。屋上へ出たことを確認した僕は急いで人のいる廊下に戻った。
誰でもいいから適当な人を見つけないといけない。
校内に鈍い衝撃音が響き、続いて誰かの悲鳴が上がった。
「一体何があったんだろうね」
僕は見ず知らずの男子に話しかける。表情から察するに向こうは僕のことを知っていたようで助かった。できる限り、僕のことを覚えていてもらわないといけない。
綾先さんが落下した時刻、僕が屋上にはいなかった重要なアリバイだ。
後は人混みに紛れて隼人が現場に来るのを待つだけ。
初めて人を殺した彼はきっと動揺しているに違いないが、目の前で死体を見ている連中も同じだ。
綾先さんを殺したのは勿論隼人だ。屋上から彼女を突き落とすとき、どんな顔をしているのか、見てみたかったのが残念と言えば残念なこと。
僕は彼に、彼女がひどい辱めを受けた可能性が高いことと、その原因を作ったのが綾先さんであることを伝えた。
彼はそれでも悩んでいたが、最後はその機会がくれば、という条件付きで承諾してくれた。
だからまずは簡単で、より劇的な方法を試すことにした。突き落としだ。駄目なら次の案に移ればいい。でも、現場まで彼女を連れていければ、地面を覗き込んでくれるはず。チャンスは必ずくる。
彼は僕に言われた通り屋上で待機してくれていた。殺人現場に被害者の彼氏がいても不思議じゃないし、何よりも死んだ白倉さんと同じ場所・同じ方法で殺すんだ。彼に相応しい殺し方だろう。
綾先さんが、親友の後を追って自殺した扱いになったのは、むしろ彼女の両親が追求を避けたに違いない。白倉さんの誹謗中傷を陰で行っていたことが、警察で明るみになったからだろう。これも彼にとっては追い風となった。




