004
昨日はあまり眠れなかった。いつも二人と一緒に登校しているので、今日も顔を合わせないといけない。
幸いクラスが別なので、学校までの辛抱だが足取りが重くいつもの距離が長く感じる。
「なんか元気ないね」
「え……そんなことなけど」
栞が不思議そうに、顔を覗き込んでくる。
「夜まで、一体何をしていたのやら。なんだと思う?」
玲二が、からかうように栞の肩をつつく。
「ちょっ、変な話はやめてよ」
栞が顔を真っ赤にして玲二をにらんだ。
「えっちな栞さんは一体何を想像しているんですか?」
「ば、ばか! 何も想像してませんよぉーだ! 玲二がし、下ネタばっかりいつも言うから」
「つまり俺によって、ちょっとしたワードで妄想が膨らんでしまう女の子に、調教されてしまったたわけだ」
「な、何、馬鹿言ってんのよ!」
栞が玲二の腹部にパンチを浴びせているが、痛くはないようだ。
「栞は、お前がハァハァしている姿を想像して興奮しているぞー。責任とってやれよ」
「お・ま・えがとれ!!」
栞の膝が玲二の大事な急所にクリーンヒットする。さすがに、玲二は地面に崩れ落ちた。
いつもの道のいつもの光景。こんなにも違って見えるものだろうか。そもそも、僕は一体何に対して動揺しているのだろう。
二人が隠し事をしていたことか、玲二が僕を見下していたことか、それとも、栞に恋人ができたことだろうか。
誓って言うが、僕は栞のことを好きだったわけじゃない。確かに栞と一緒にいるのは楽しかったし、友人としては最高のパートナーだった。もちろん玲二もだ……。
ただ……見てもいない栞の裸を想像してしまう自分がいる。今まで、こんなことは無かった。こんな気持ちになったことは無かった。
玲二と自分の役割を交換して、妄想してしまう。僕が栞の服を脱がし、そして肌に触れていく。栞の肌を、引き締まった肌を、弾力を確かめながら触れていく。聞こえるのは、あの時と同じ栞の声だけ。それは、僕に対して向けられた、僕のための声。
決して、栞と付き合いとか、玲二から奪ってやりたいとか、そんな感情はないはずなのに、栞と体を重ね合わせる姿を想像せずにはいられない。
それは、独占欲が生み出す僕の願望なのか……それとも、揺らいでいるだけ何だろうか。自分の価値観が、今まで絶対だと思っていた世界が崩壊し、単に戸惑っているだけ何だろうか。
わからない。わかることがあるとすれば、二人が僕に隠していたこと、それだけは許せない。それだけは確かなことのように思えた。
「隼人……本当に大丈夫?」
栞はいつも僕の心配をしてくれる。それが演技なのか、罪滅ぼしのつもりなのか。本当にわからないことだらけだ。
そして栞は、はにかむような笑顔を見せると、鎖で縛るように、僕の腕に手を回した。




