003
外に出た後、しばらく空を見ていた。いや、見ていたというより、顔を向けていたというべきだろう。
自分の中で、時間の間隔がよくわからなくなっていた。早く戻るわけにはいかない。少し、遅れるぐらいが丁度いいのだろうか。二人のためには。
その時考えた中で唯一覚えていること、
―女だった。
栞は女だった。そんな当たり前のことを、再認識させられたのを覚えている。
「ただいま!」
声を張り上げて戻る自分が惨めだった。喉の使い方を間違えないよう必死に口を動かしていた。
「お帰りー」
栞の声が部屋からする。
ゆっくりと廊下を歩きドアを開けた。
二人は、僕が部屋を出て行ったときと同じ場所に座って、テレビを見ていた。
「買ってきたぞ」
「ありがとう、いくらだっけ? あ、玲二の奢りだっけ?」
「いや、敗者の奢りでしょう」
玲二が笑いながらこちらを見たが、そのとき笑顔が消えた。僕は、一体どんな表情を二人に見せていたのだろう。筋肉がひきつって、全てが顔に出てしまいそうだ。それとも出てしまっているのだろうか。
「お前、手で持って帰ったのか? 袋は?」
「え? ……ああ、そんなわけないだろ。袋はさっき戻ってから捨てたよ」
「ふーん」
玲二は、さほど興味がなさそうにジュースを受け取り、飲み始めた。
二人はいつもと変わらない様子だったが、心なしか栞は僕の顔を見ないようにしている気がした。
その後も三人で、たわいもない話をしながら過ごした。
一体いつから二人は付き合っていたのだろうか。なぜ、僕に隠し続けるのだろうか……。横目に観察を続けていても答えはでない。
「明日なんだけどさ」
栞が僕に話を振った。
「あ、そうだ。ごめん、明日は用事があってさ。一緒に帰れないんだ」
とっさに言葉が出た。自分の焦りがばれないか不安だった。
「そっか、残念だね……」
そう呟いた彼女の表情が何か惨めな生き物を眺めるようで、ひどく自分が哀れだった。
そして、その日の夜。僕はシーツの染みに顔を埋めたんだ。




