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僕らの死亡遊戯  作者: 神話project
第二章 白倉静香~契りし者~
36/43

013

「青葉さんの方も、犯人は綾先さんで間違いないね」

 いつもの場所で神明君が言った。

「……どうやって調べたの?」

「直接聞いて回ったんだよ。その噂、誰から聞いたのかって。そうやって辿っていった先が綾先さん」

「彼女は何か言ってた?」

「噂を誰から聞いたか覚えてないってさ。発信源とみて間違いない」

「そう……」

「白倉さんの話と総合すれば、青葉さんの噂を流したのも、白倉さんの着替えを盗撮して流してたのも綾先さん。白倉さんのアドレスをネットに流していたのも綾先さんだ。警察の力を借りれないのは痛いところかな」

「そうね、殺人犯の性って奴かしら。綾先さんより私が先に捕まりそうだわ」

「まぁ、この辺はまとめて面倒みるから心配しなくていい」

「お礼を……言うべきなんでしょうね」

「その必要はないよ。僕が好きでやってることだし、むしろ僕の都合に合わせてもらってるんだから、持ちつ持たれつってところかな」

「……」

「残された時間は余りないけど大丈夫かい?」

「ええ……わかってる。今はね……こう思ってるの。死に急いでるのは彼らの方なんだって。違う?」

「その通り……どんな事態になろうと、僕が最後まで責任を持つんだ。失敗はあり得ない」

 私たちはしばらく黙ったまま見つめあった。

 私は彼を信じるしかない。



 そして、いよいよ今日が来た。

 失敗すれば全てが終わる。……もしかしたら、失敗すれば、また別の生き方ができるのかもしれない。

 失敗しても……いや駄目だ。もう、私はこれ以上耐えられない。

 隼人君に、今日は用事があって一緒には帰れないと伝えた。

 廊下で会った汐竹先生には、周りに聞こえないように囁いた。

「先生、今日は私のことを気にせずゆっくりして下さいね」

「ありがと」

 先生は綺麗だ。女の私から見ても素敵だ。父とのデートを邪魔したくはない……でも、二人がこれからどうなるかはわからない。それは、私にとって気がかりなことの一つだった。

 なるようにしかならないことはわかってる。それでも私のせいで、二人は別れることになるかもしれない……。

「お、来たな」

 玲二が私を教室に迎え入れ鍵をかける。中には、郷矢もいた。

「玲二、最初の見張りはお前に任せたぞ」

「仕方ねぇな、早くしろよ」

「俺はお前と違って早漏じゃないから無理だな、ハハ」

 下品な笑い声だ……。



「今日はやけにしがみついてきたな。爪の後がついちまった。そんなに気持ちよかったか?」

「……」

「巻勝、馬鹿言ってないで先公が来る前にさっさと帰るぞ」

「そうだな。じゃあ、また来週な」

 私は急いで教室に戻り、荷物を取る。神明君が用意してくれた包丁だ。

 廊下に出て歩いていると、向こう側から足音が聞こえてきた。

 慌てて近くの教室に入って息を潜める。見つかるわけにはいかない。足音はそのまま通りすぎていった……。

 誰にも見られないようにしないといけない。今日は最高の日。絶対に成功させてみせる……。



 そして、私はようやく屋上にたどり着いた。

 息を潜め待ち続ける……。

 しばらくすると再び足音が聞こえてきた。

「誰もいないな」

 教師の声がした後、鍵の閉まる音が聞こえる。

 私は携帯を取り出し、隼人君にメールを送った。

 しばらくすると彼からメールが返ってくる。

―どこか行きたいところはある?

 返信に時間がかかった割には短い文面。彼の性格上、悩みすぎてどう書けばいいのか、わからなくなったに違いない。

 頭を抱える彼の姿を想像するとおかしかった。

 でも、それは果たせないデートの約束。

「一度くらいデートすればよかったね」

 残念といえば残念な気もする。今更そんなことを考える自分もおかしい。

「暇だなぁ」

 彼からの短い文面を眺め続けた。以前もらったメールも確認してみる。しばらく時間を潰さないといけない。約束の時間まで。

 辺りが暗くなってきた。少し肌寒い。

 校内からはすっかり人の気配が無くなった。職員室に先生が一人残っているぐらいだろう。

 このチャンスを逃せばもう機会はない。散々考えて出した結論だ。

 私は右手でお腹をさすった。

「もうすぐ私も行くよ……」

 私は本当に馬鹿だ……。泣きたくなるぐらい馬鹿だ。

「君の名を呼ぼうにも、そういえば名前をつけて無かったね」

 お腹を痛めて産んだ子。私が殺して捨てた子。

「名前……名前かぁ」

 なぜつけてやらなかったのか。

 せめて、今つけれればと思うが、思いつかない。

「……隼人君。男の子の名前なんて、君の名前しか出てこないや」

 包丁を手に取り、腹部に……思いっきり突き刺した。

 痛すぎて感覚が麻痺しているのか、自分の腹から湧き出る血に実感が沸かない。

「本当に……駄目な…母親…ね」

 これが母の気持ちだろうか。祖父の子を産んだ母も、こんな気持ちだったのだろうか。

 体の方が痛みに悲鳴を上げているのか、自然に涙が出た。

 屋上の縁から、黒いコンクリートの地面が見える。後は全てを彼に託そう。

 

 私の人生はここで……終わりだ。

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